ハジマリ
彼女が目を覚ますと、主人の「一人」ロキのせいで書庫に閉じ込められていた。と、ロキは地下への階段を見つけるが―――――
空が枯れている。
すべての木々もあっという間に枯れ、
そしてすべての生物が死に絶えた。
洪水は止まることを知らず、生き物という生き物が悲鳴を上げ、息絶える。
私はただひとり、立ち尽くす。
涙が地面に落ちても、すぐに吸収されて乾いてしまう。
「・・・・・ラクナログ・・・・・・・」
私は、ぽつりとその単語を呟く――――――――
・・・ん
・・・・た・・
・い・・さん・・・・
さっきから誰?
私を呼びかけるのは・・・・。
とても遠くて・・・近い・・・声・・・・。
「眼帯さ――――っん」
「・・・・・・っ!!!!!!」
ロッ・・・・ロロロロロロ・・・ロキ様!
息がかかるぐらい近いっ!!マジでっ!!
どうやら、読書中に昼寝をしていたらしい。
正確に言えば、屋敷内の地下にある書庫の整理中に。
え?何で本を読んでいたかって・・・?
・・・
・・・
・・・本好きの本能が勝手に働いて・・・。
・・・
・・・だ、だって面白い本がいっぱいだもん・・・。
いや、そうじゃなくて・・・何でロキ様が?
「学園から脱そ・・・早退してきたんだよ」
「・・・・」
怪し。
畏怖の念を込めてじーっと見つけるとロキ様は返すようにニヤリと笑い、
「眼帯、仕事をサボってたコト、フレイヤや皆に言いふらすぞ」
「!」
性悪だ・・・。
む〜っと口を膨らますと、急いで本を整理して部屋を出て行こうとする。
「あ、そうだ」
ガチャガチャガチャ・・・
「そのドアな」
ガチャガチャガチャ・・・
「今、開かないんだよなー」
ガチャガチャガ・・・・・チャ・・・・・
え?
開かない?
音速のスピードで振り返ると、ロキ様が悪気がなさそうにニコニコ笑う。
「ちょっと、ドアをいじくってたらさ〜何か壊れて」
・・・
・・・
どっ・・・どーすんのよ・・・!!!!
無言(というか声が出せない)でパニくってると、ロキ様は周りをウロウロして、
「あ、地下発見」
え?
整理してた時、そんなのあったけ・・・・?
「どうする、眼帯?行ってみる?」
こんな書庫、とてもじゃないけど人が来ない。
あーでも、来週ぐらいまで待てば一人ぐらいは・・・・
・・・
・・・
・・・そこまで生きていられるか不安だけど。
私一人ならともかく、ロキ様がいるわ。
こういうときのロキ様は結構頼もしいかも。
こくっと、静かに頷くと、ロキ様は
「じゃ、行ってみるか」
地下っぽいところは階段が下へ下へと繋がっている。
上に行きたいんだけど・・・大丈夫かな・・・。
・・・
・・・
・・・
地下の地下って結構寒い。
そして、酸素が薄い気がする。
というか、空気が古い気がする。
ランプの火が唯一の灯りだ。
「うー・・・あ、やっと地面だ」
ロキ様がリードしてくれるからありがたい。
とんっ
不思議な事に、砂埃がたたない。
そういえば、蜘蛛の巣も全然無かったな・・・何故?
・・・・ガルル・・・・・・
さっき、何か聞こえなった?
け・・・獣の様な・・・
ロキ様・・・
酷く不安な顔をしているのか、ロキ様はぽんと頭をたたくと、
「大丈夫大丈夫っ」
・・・
・・・
今からでも上に戻っても問題ない気がするけどな・・・
もしかしたら、戻ってこない私とか心配して来てくれる人がいるかもしれないし・・・
でも、足が止まらない。
前へ前へと勝手に進む。
・・・
・・・何でだろう・・・
ランプの灯りでしか分からないけど、この部屋は相当広いだろう。
なかなか壁がないし。
・・・蜘蛛の巣や埃が全く無いというのはやっぱりおかしい。
毎日誰かがずっと掃除をしてる?
でも、雰囲気的に誰も使ってない・・・。
・・・
・・・
と、急に、可愛らしい女の子の声が聞こえた。
「お久しぶりです、お父様」
「―――――――え?」
ロキ様がこっちをぐるっと見る。
「眼帯、さっきお前喋ったか?」
ブンブンと首を振る。
事実だし。
「・・・・・誰か、いるのか?」
どうやら信じてくれたらしい。
「・・・・私のこと、忘れちゃったのですか・・・・?」
返事がすぐに返ってきた。
近いのか遠いのかよく分からない。
「姿を見せろ」
ロキ様がこんな真剣な顔をしているのを見たのは初めてだ。
やっぱり自分も女の子なので、ロキ様の服をちょっぴり握る。
「・・・・はい・・・・」
ボゥッ
本で読んだことがあるみたいに、いきなり周りの照明が灯される。
私が想像してたどうり、この部屋はとても広かった。
例えるなら・・・そう、ダンスホールだわ。
私達が少し離れた所に声の主がそこにいた。
ロングヘアーで少し髪の毛が巻いてて・・・片目が髪の毛によって隠れている。
「噂どうり、全部・・・忘れてるのですか・・・・」
「意味が分からない・・・お前は一体何なんだ?」
ロキ様の言うどうり。
後ろでこくこくと頷く。
「・・・・」
少女は少し何かを考えているようだった。
「私は・・・お父様の娘です」
?・・・やっぱり意味が分からない
「で、お父様ってのは誰だ?」
ロキ様が喋れて良かった・・・。
私は喋れないから、もしこの状況が私一人だけだったらもの凄く困る。
というよりは、さっさと上に上がってると思うけどね。
なーんて、あれこれ考えていると、少女はポツリと答えた。
「・・・ロキ様の娘です・・・・」
予想外。
感想を言うには、難しい。難しすぎる。
この娘、もしかして電波・・・?
「なっ・・・ななな・・・何で俺より年上っぽいお前が俺の娘なんだ?!」
ロキ様も動揺が隠せないみたいだ。
と、少女がクスリと笑う。
「アナタの本当の姿は邪神ロキ。本物の神サマです。
そして、私はヘルと申します。
お父様・・・ロキ様の娘で、冥界の番人をしています」