ブロローグ
北欧神話をモチーフにしています。
オカアサン。
私、大好きだったんだよ。
私、愛して欲しいって願ってた。
私、ずっと信じてた。
どんなに殴られても、嫌われても。
なのに、酷いよね。
私を売ったなんて。
・・・
・・・
・・・ねぇ、何で・・・・?
・・・
・・・
夢は見続けたいものなのよ・・・
ずっと、夢の中で幸せに―――――――
「起きろ〜っ!」
・・・・。
ドスンと、部屋に鈍い音が響く。
自分がベッドから落ちたからだ。
「ささ、朝は早いわよ〜」
フ・・・フレイヤさん・・・。
慌てて起きて、朝の準備をする。
あまり似合わないメイドさんの格好をする。
眼帯をキュッと結ぶと、軽い朝食を食べ、屋敷の掃除に大忙し。
「・・・・」
私は声が出ない。
理由は分からない・・・。
・・・分からないふりをしてるだけかも・・・。
でも、仲間はこんな私を受け入れてくれる。
だからとてもありがたいと感じてる。
「おっはよぉ―――――!!!」
っ・・・!!
後ろから飛びついて慌てて身構える。
・・・ロ、ロキ様・・・・
「眼帯、朝から掃除とは感心だね〜」
小柄で、くりっとした目の持ち主。
ロキ様は主人の「一人」に値する。
私より一つ二つ年下・・・だったハズ。
つか、眼帯ってあだ名やめてほしいや・・・。
確かに眼帯してるけど・・・本当、悪戯好きだねロキ様は・・・。
・・・
・・・あれ?
今日、学校じゃ・・・急がないとダメじゃないですか?
雰囲気で感じてくれたのか、ロキ様は怪しい笑いを見せる。
「眼帯ぃ〜・・・今日は色々やる事があるんだよなぁ〜・・・」
な・・・。
この笑い方は大抵、そう、悪事を考えてる・・・命をかけてもいいわっ!!
「ロキ、お前朝から姿が見えないと思ったら・・・!!」
と、ロキ様の動きが急に固まる。
どうやら、声の主は私の後ろにいるらしい。
「さぁ、早く準備しろっ!!!」
「ト・・・トール・・・・」
赤毛の私より頭一つ二つ大きい男性。
ちなみに私より一つ年上だ。
この方も、私の主人の「一人」。
「朝から彼女に迷惑を掛けるなっ」
体格的に不可抗力なロキ様はあっさりトール様に連れて行かれる。
「はぁ〜なぁ〜せぇ〜・・・・・・・・・!!」
ロキ様の声が段々と聞こえなくなると、私は再び仕事を続行する。
この掃除が終わったら、ちゃんとした朝食が食べれるからね。早めが一番。
☆
「・・・・は体力的にも精神的にも何ら問題はありません」
「そうか・・・良かった」
ほぅと、安心した溜息をつく。
「我の「片割れ」だからな、彼女は・・・・」
「そうですね」
「我の片割れ・・・とは言っても、性格も顔も何もかもが違う・・・」
「唯一一緒なのは、そのただの人間や「神」より遥かな「力」を持っていることですね」
「・・・・」
「まだ、時間はあります」
「そうだな」
「彼女は・・・まだ自覚をしていません」
「・・・」
「そして、その他の「神」もまた・・・」
「我たちは何も手出しできないのか」
「――――――はい」
「そうか・・・」
「まだ、時は満ちていません、まだ・・・・・」
☆