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人の気配がし、目が覚める。
自分が寝ているこのテントの外で誰かがいるのが喋っているのが聞こえる。
文句を言うために欠伸を噛み殺しながらテントから上半身をだす。
「うるせーぞ」
辺りはまだ薄暗く、日の出はまだ現れそうにもなく月明かりが辺りをほんのりと照らしている。
その月明かりの下で二人の少年が喋っていたらしい。
こちらが顔を確認するとまだ幼い顔をしている、成人を迎えたのもつい最近であろう。
そして何よりも目立つのが二人の頭に生えているネコ科を思わせる耳である。
(……獣人か)
傭兵をしていればよく見かける亜人である。
問題はその獣人二人が自分のテントの前で何をしているかである。
(物盗りか?)
一番初めに頭によぎるのはそれだ。
念のためにいつでも争える様に短剣腰の短剣に手をかける。
そんな考えを知ってか知らずか慌てて弁解をし始める。
「す、すいません‼︎今日の戦いが怖くて話しをしてたところなんです‼︎」
「うるさくして、すみません‼︎」
頭を思いっきり下げ、弁解を始める二人を見てため息をつく。
二人の様子で今日が初陣なのがありありと分かる。
「ったく、ちょっと待ってろ」
そう言って体を引っ込めて一本の瓶と木のコップを取り出し、テント中から出て押し付けるように二人に渡す。
「やる」
渡された二人はキョトンとした顔で受け取った。
「出陣する前に少しだけ飲め、酔わない程度にな。それでいくばくかだが恐怖心も薄れんだろ」
そう言ってテントの中に戻ろうとするが、一度振り向き告げる。
「分かったらとっとと寝ろ」