名前
凄まじい速さの剣撃、剣と同じように自分の体も少しずつ傷を負っているのを感じる。
だが、焦りと共に不思議な感情があった。
(面白い、な)
見えないほどの斬撃、ほぼ勘で避けてなんとか反撃している状況だ。
このまま続ければ、後はない。
ないはずだが焦りよりも楽しいという感情が湧いてくる。
「どうした、その程度か」
そう言って速度を増す斬撃、ギリギリで受けるがヴェロの剣は折れた。
そして、肩から腹部にかけて切り裂かれる。
「かはっ」
切られたと思った瞬間、すでに体は崩れ落ちていた。
仰向けに倒れる、ヴェロを見ながら剣を鞘にしまい込み、ヴェロに近づく。
「中々やるな」
「……それは互角だったやつが言う言葉だ、ろ」
「確かにそうかもな、だが中々に手強いのは確かだった」
嘘をつけ、と内心思いながらも口には出さず笑う。
ここで殺されるのは分かっているが、捕虜になる気はさらさらなかった。
「死ぬ間際の言葉は一切ないから、一思いに首を刎ねてくれるとありがたい」
「む、そうか」
そう言いいながら顎に手を当てて悩みだす。
「早くしてくれるとありがたい、正直痛いんだ」
「なあ」
ヴェロを見下ろし笑いながら言った。
「お前、私のものにならないか?」
「は?」
「いやな、ここで殺すのは少し惜しい。だからな、私の僕になれ」
そう言って頷きはじめる。
「ちょうどいいな、稽古相手が欲しかったところだからな」
勝手に話しを進めていくことに流石に声を上げる。
「何を言ってんだ、お前は」
「いいだろう、それとも何だ死にたいのか?死にたいのであれば仕方がない」
「死にたくはない、が何を言ってるのか分かってるのか?俺はお前を殺そうとしたんだぞ」
「何だ、そんなことか。なら安心しろ、そこで気絶している二人も元々は私の命を狙っていたものだ、そういうのは気にはしん」
そういう問題じゃないだろう、と言いかけるがやめる。
目の前の奴の僕になるのも面白いと思った。
もしかしたら、自分が欲しいものを見せてくれるのでないかとそんな気がしたのだ。
「僕にしてくれるなら、一つ聞きたいことことがあるから教えてくれ」
「何だ」
「お前……貴方様の名前を教えていただきたい」
それに対して目の前の笑いながら女性が口を開いた。
その言葉を決して忘れないだろうとヴェロは不思議だが確信を持った。




