風雲機 (真,シ)
「ハーメルン」にて投稿したものと同じになります。
ミリタリー知識が皆無の上、あまり評価がもらえそうになかったため短編で済ませた物になります。
雰囲気を味わうだけの内容です。
また、参考にしているのはR-TYPE、怒首領蜂(大往生以後)、戦闘妖精-雪風-(原作は全く知らない)です。
システムグリーン、空気圧グリーン、視界良好、風圧問題無し。目前のハッチが重々しく音を立てて開かれる。開かれた先には一面が三色の見晴らしの良い景色が目に飛び込んできた。
何度も見慣れた光景、だけれど未だに慣れない光景。俺の胸が静かに音を刻んでいる。連動するかのようにエンジンが唸りを立てる。吸い付くように"手"に馴染む操縦桿。不思議と恐怖感は無く、こいつがいれば今日もまた生きて帰れる、そんな気持ちを抱かずにはいられない。
「Gee、準備はいい? まさか今更ビビッてるなんて言わないわよね?」
「ハハ、言いやがるぜSamy。早くこの重い腰を動かしたくてウズウズしてるぜ」
「OK、それだけ軽口叩いてれば問題ないわね。さぁ、今日も盛大に暴れてきなさい!」
「Yes、Ma'am。コードGreen、この美しき緑を取り戻すため、出撃する!」
……
中央連盟特殊軍事戦闘部隊(Central Federation of special military combat troops)、通称CFSM部隊に所属する俺たちは各国の首相たちが応援を求める際に出撃する。俺たちは超音速特殊戦闘機と呼ばれる物に乗って日夜地球を脅かす存在と戦っている。
そう、地球上には今得体の知れないマザーファッカー共が蔓延っている。やつらは地球を無差別に攻撃し、人間が居ようが居まいが構わず破壊活動を行っている。当初はどの国の物とも思えない戦闘機を引っ張り下げ、軍の戦闘機をことごとく撃ち落としていった。憎たらしいことに、やつらの操縦技術は世界有数の軍事国家である俺たちを遥かに上回っていた。やつらの戦闘機を1機落とすのにおよそ5機は潰された。おまけにやつらの戦闘機は軍の機体より速度があり、敵がこちらの機体をすり抜け爆雷で落とされたなどと言うマヌケな話もあった。
だが結局笑い話で済むことではなく、無差別に行われる大量虐殺に世界が大混乱に陥った。国によっては物の三日で陥落し、降伏の意思を示しているにも関わらず核弾頭を放たれ塵に消えたという。素性の知れぬ軍隊、世界の軍国家を圧倒する戦闘力、従来の戦闘機を凌駕する技術力、人類は成す術がなかった。
そこへ突如中央連盟に所属する国々の学者が声を上げる。我々の試作機を持ってやつらを叩く。各国の首相たちはまるで期待などしていなかったが、何もせずに民を見殺しにも出来ず、半ば諦めたように彼らに助力を求めた。
中央連盟とは、各国が技術を持ち合い世界恒久の平和を目指すため作られた連合のことである。そこでは日夜地球に緑を取り戻すための研究、新しいエネルギーの開発など主に自然に関することを調査していた。そんな連盟が軍事に関して挙手をするなど、まるで自分の立場を分かっていないクソガキでしかなかった。そんなクソガキだろうと、自分たちの国を守るために猫の手でも借りたかったのだ。
連盟は助力を求めた各国に、それぞれ1機の戦闘機とパイロットを与えた。各国の首脳は呆れ果て、そして怒り狂った。このような非常事態によくもまぁこんなふざけた真似ができるなと。しかし連盟は、まるで単細胞の馬鹿を誹謗するかのようにこう言った。
「軍隊程度の戦闘力ではやつらに適わない。我々連盟の研究の粋を集めた彼らならばきっとやつらを滅ぼせる」
そして送られてきた高慢ルーキー。勿論前線の兵士たちが良い顔をするはずもなく、惜しげもなく熱烈な汚ぇ言葉を吐きやがったよ、Shit!
だが彼らの実力は本物だった。たった5分もせずに3機を撃ち落した時には、下にいるやつらのマヌケ面には思わず渡っちまったね。そのブサイクなマヌケ面にクソでも垂れてやりたかったが、残念ながら空飛ぶファッキン野郎共と遊ぶのが先でね、あの時はガマンしたよ。
…おっと、話を戻すぜ。やつらはやはり強かったが、ルーキーの戦闘機は軍のそれとは文字通り次元が違った。速度は常にマッハ3。それでもまだ遅いくらいで、これ以上速度を落とせば神様の顔を拝めるのは簡単だった。やつらの攻撃を常に"視て"かわし、こちらが撃墜する時には"感じて"撃つ。地上からじゃ何が起きているかは絶対に分からない。実際、乗っている俺にだってわかりはしないからだ。
とにかく、そんな調子で俺たちは敵をぶっ潰していった。たった1機で300機は落としただろう、もはや伝説になってもおかしくなかった。こうして一難は去ったものの、やつらがまたいつ何処からやってくるかは神様にしか分からない。俺たちは正式に各国の防衛に着き、こうして地球を守っているわけだ。
おっと、言い忘れていたな。俺の名は「グリーン・G」。本当の名前は俺も知らないが、正直興味もねぇしどうでもいい。とりあえず、緑色が好きな俺にはピッタリだ。そして俺が乗るのが「G・サタニクス」、通称「緑の悪魔」だ。本当はこんな名前でもないし、信仰心厚い俺にとって正直気に入らねぇ名前だが、それで仲間たちの士気が上がるなら素直に喜べた。
そして俺たちは今このときも戦い続けている。
……
敵の機体がミサイルをばら撒く。超音速戦闘下では誘導ミサイルなど無意味である。なまじコンピュータが敵機を捕らえようとするあまり、思考回路が追いつかなく味方にぶつかっていくのがオチだからだ。
俺はミサイルを難なくかわすが、その先で待っていたのは空中機雷の雨。瞬間的に機体を傾け何とかかわすが、あと0.5秒遅ければ間違いなく召されていた。
「ヒューッ、危ねぇ危ねぇ! あいつら、味方に当たることもお構いなしか?」
「ちょっと"G"、何やってるのよ!! 私が居なかったらあなた死んでたわよ!?」
「悪い悪い、そう膨れツラすんなよ"Gem"。かわいい顔が台無しだぜ?」
「な、何よ! そんなことより戦闘に集中しなさいよ!!」
「へいへい、お姫様っと!」
機体を急加速し前方の敵へと迫る。敵がいくら速かろうとこの機体の前では亀同然の速度だ。こちらに気付かない亀のケツに浴びるほど鉛球を食らわし、俺は爆風を避けるために機体を翻す。まるで闘牛士のように破片をかわし、次の獲物を求めて俺は舞う。
「Hey! 見たかよ姫様、あの亀野郎ケツから火ぃ吹いて落ちやがったぜ」
「バ、馬鹿馬鹿、"視る"のはアンタよ!! 前、前っっ!!!」
敵機が俺の機体へと一直線に突っ込んでくる。俺は慌てて上昇し、間一髪接触を避ける。特攻するつもりだったのだろうが、機首を翻しこちらの背後より攻撃をするつもりのようだ。
「「あ、あっぶねぇ~!!!」」
「あいつ俺とキスを迫るなんざ、何ともまぁ強引なやつだ。嫌いじゃないぜ!」
「馬鹿言ってる場合じゃないわ、アイツこっちにくるわよ!」
ジェムが俺を叱りながらも援護射撃をする。心配するなよお姫様、ちゃんと"視え"てるぜ。俺はミサイルをばら撒き牽制する。無論そんな簡単に当たるわけがないのだが、俺のミサイルは特別製だ。敵の機体が避けたと同時に、ミサイルは「俺に向かって」放たれる。俺の後ろにへばりつく様に迫る敵機は、自分の後ろより正確に迫るミサイルによって爆散した。
「ヒューッ! どうよ姫、最高にクールだと思わないか!?」
「はぁ…アンタと一緒に居ると寿命が縮むわ」
「俺は姫と一緒に居られるだけで寿命が延びるけどな!」
「な…。も、もう馬鹿!! 何でそんな恥ずかしいことを……」
「……いや、実際に"延びてる"ぜ?」
俺とジェムは終始軽口を叩きつつ敵を潰していく。もうこんな光景は何度目だろうか、数えることすらもやめてしまった。俺たちは一体いつまで戦い続けるんだろうか。人類が再び平和な時をすごせるようになるのはいつなのか。
俺がそんな疑問を抱き始める頃には、戦闘はすっかり終わり敵の姿は見えなくなっていた。