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白い部屋

 周りのガヤガヤとした声が寝ぼけている俺には辛い。意識も覚醒してきたからか、聞こえてくる声も次第大きくなって行く。



「出してくれ!!」「どうしたらいいの?」「家にかえしてよ!」「落ち着け!皆で力を合わせれば必ずなんとかなるさ!」



 煩いなあ?なんなんだよ……。俺の意識が完全に覚醒し瞼を開けると。強烈な光に網膜が焼かれるような痛みに襲われ目を細める。




 頭を振りつつ起き上がると同時に、此処が教室でないと言うことに気づく。



「何処だここ?」



 徐々に慣れてきた目を酷使して、辺りを見回し、現状の把握に精を出す。



 どうやら、この場所は四方を白い壁に囲まれた密閉空間のようだ。



 床には教室で見た魔法陣が描いてある。勝士達は唯一、外と繋がっていそうな扉をどうにかして開けようとガンガン蹴っているが、ビクともしない。



「オラッ開けよッ」



「くそッタレが!」



 無駄な事をしているのに気がついていないんだろうか? そんだけ蹴って無駄ならどうやっても開かないと思うけど。



 あれ?妙だな? いつもあいつらの蹴りを間近で見ている俺だから気づくのかもしれないが、あいつらの蹴りがいつもより早い気がする。



 どう言うことだろうか?



 試しに俺もやってみるか、と思ったと同時に全く開かなかった扉が突如バンッと言う音と共に開く。



「うお!?」



 それに伴い勝士達は尻餅をついて驚きの表情を見せる。いい気味だ。



 豪奢な扉の先には、ブロンドの髪の毛を持つ美少女がいた。横には執事らしきお爺さんが、深くお辞儀をしている。



 それを見た女の子も慌てて頭を下げた。



「勇者様、どうか我が国をお救い下さい!」



 嫌な予感はしてたんだけど、やっぱりこれは勇者召喚だったか…。小説なんかではよく題材に取り上げられたりしてるな。



 ネットで読んでいる時はワクワクしたもんだが、自分が当事者になって見ると結構クるものがあるな。多分だが、もう向こうの世界には帰れないんだろうし。



 あまり俺のことを心配してくれる人もいないけど《ミササギの郷》の皆は大丈夫だろうか? 勝士が一緒にいると言うことは、もう寄付を中止されることはないと思う。それについては安心だ。



 異世界飛ばされるなら、一言ぐらい院長には挨拶しておきたかったな……。あの人には返しても返しきれない恩があるしな。



 なんて、地球の人達に思いを馳せていると、天上院が王女 (仮)に話しかける。



「ちょ、ちょっと待ってください。まずあなたは誰ですか?」



 王女 (仮)は天上院の顔を見て思いっきり顔を赤くする。



 まぁ、性格はアレだが顔は超一級品の天上院だ。王女様も惚れたかもな。



 顔が真っ赤っかになっている王女を見て、心なしか天上院のハーレムも表情が険しい。



「ふぁっ、はっはい。私はドーヴァン王国第一王女、サミエル・クリシュナです。あの…よければサミエル、とお呼びください」



 やっぱし王女さまだったか……。ま、当たり前か。勇者を迎えに行くのにそこら辺の女を使わないだろうし。



 その王女様に持ち前のリーダーシップを発揮し、代表として質問をしようする天上院。



 尻餅をついていた勝士は、完全に取り残された形だ。少し不服そうな顔をして天上院を睨んではいるが、怒鳴り散らしたりはしない。勝士は天上院とは違い、空気を読むことは出来る。



「クリシュナさん、先程の勇者と言うのは?」



「え、えと、それはーー」



「オホンッ、クリシュナ王女、国王様がお待ちです。勇者様達とは又いずれお話できましょう」



 お付きの執事らしきお爺ちゃんが咳払いで王女の話を制する。こんな事が許されるってことはこのお爺さんが特別なのか、お国柄なのか、どちらかだな。俺的には後者であって欲しいものだ。



「そっそれもそうね。では勇者様、また今度」



 完全に天上院一人に向けられた言葉だったが、お決まりの鈍感が発動したのか自分の事では無く、クラスのみんなに向け行った言葉だと解釈したらしい。



 王女は先に走って行ったが、俺たちは皆で歩いて行くみたいだ。お爺さんを先頭とし、男女二列に分かれ後に続く。



「今から王様への謁見に行きます。皆さん。しっかりと私についてきてくださいね。王城は広いので簡単に迷いますよ」



 俺は列の最後尾へと回り、扉をくぐり抜け王様の元へと歩を進める。




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