第四節
かくして昼休み、俺は約束通り屋上へとやってきた。そして今、美雪さんと二人で一緒にお弁当を食べている。いい天気だなぁ。
「あの~、美雪さん?」
この状況が俺には理解できない。屋上で女子と二人でお弁当なんて、それどこの一週間フレンズ?。
「なにあんた勝手に下の名前で呼んでるのよ」
だって俺の中では能登さんって呼んだらどっちかわからないですしおすし。
「すいません」
怖くて謝っちゃった☆
この能登美雪という女、姉とは大違いでござる。姉の能登さんはふんわりとした雰囲気をまとっており、触ったら柔らかそうなイメージ。しかし妹の方は回し蹴りが飛んできそう。
「まぁいいわ。お詫びにそれちょうだい」
美幸さんは俺の弁当から玉子焼きを一つ奪った。
「なかなかね。あんたのお母さんは良い腕してるわ」
「そりゃどうも」
ふと美雪さんが首を一回横に振った時、一緒にポニーテールがふわっと揺れて、家に行った時と似た香りがした。
「あんた暇でしょ?」
なんですか突然。俺は毎日ものすごく忙しくて、今日も帰ったらFF14やってノルマこなさないといけないんですよあー忙しい。
「暇ですがなにか」
しかしコレが現実!
「もうすぐ文化祭じゃない。暇なら人手が足りないから手伝って」
手伝うって何を。
「ウチの漫研、力仕事出来る人がいないのよ」
「いや、俺も肉体派ではないが」
腹筋は毎日してるけどね!
「まぁそれだけじゃなくて、今ちょうど売りに出す本を作ってるんだけど、客観的な意見が欲しいのよね」
雑用兼アドバイザー的な感じか。
「あんたそういうのよく読んでるんでしょ。まぁ嫌って言っても無理やり……」
「いいよ」
「え?」
美雪さんは驚いたように目を見開き、口をぽかんと空けた。
「だから、やるよって。暇だし」
「そ、そう」
以前から漫研がどういうものを描いているのか興味あったし。
「あ、そうだ一つ質問」
「な、なによ」
俺は美雪さんの隣まで身体をずらして、耳元で囁いた。
「それって、エロいのじゃないよな?」
一瞬、美雪さんの身体と表情が固まったかと思うと、みるみるうちに顔を赤らめ、耳までゆでダコみたいになった。
「違うに決まってるでしょ! 全年齢向けよバカ!」
「おうふ!」
美幸さんは肘で的確に俺のみぞおちを突いた。
「セ、セクハラで訴えるわよ……」
俺が悶えている間、美幸さんは身を縮めてゴニョゴニョと独り言を呟いていた。
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