プロローグ
これは小さい頃からかあ様に言われてきたことだ。
「よく聞いてねアッくん。もし人里に降りたいと思っても絶対降りたりしたらダメだからね!あそこには『人間』っていう化け物がい〜っぱいいて、私のアッくんみたいなと〜っても可愛い子は食べられちゃうんだから!だから絶対に人里に降りたりしちゃダメだからね!絶対だよ!ママとの約束だからね!」
かあ様がしゃがんで僕に聞かせる。
それに僕は。
「わかりました、かあ様!」
かあ様に思いっきり抱きつく。僕は怖い話が苦手だからかあ様の匂いはとても落ち着いた。
「はぅぅ、アッくんが。アッくんが!私に抱きついてくれたぁ!う〜、よしよし可愛いなぁアッくんは〜!もっと抱きしめちゃうよ〜!」
「かあ様、くるしいですよぅ」
僕が抱きついたのが嬉しかったのか僕を包む腕に力が入りとても苦しい。
さらに僕の頬に頬ずりまでしてくる。
「くるしがってるアッくんも可愛い〜!」
そう言ってかあ様は僕を抱えたまま幸せそうな顔で頬ずりを続けていた。
この頃の僕はまだ幼かったからかあ様の言ったことはあまり信じてはいなかった。
だって僕はハイエルフであり、エルフの王子で普通のエルフよりも強かったから。
それにエルフは人間よりも身体能力や魔力量、魔力質が高く平均寿命が1500年くらいですごいんだよ、ってかあ様に教えてもらっていて、ハイエルフはエルフよりも身体能力も魔力量も魔力質もずっとすごいんだよ、って平均寿命も3000年くらいなんだよってかあ様から教えてもらっていたから。
だから僕は人間に会ってみたいとも思っていた。
本当にかあ様の言うとおり人間は僕を食べようとするのか知りたかったから。
もし人間に襲われても、かあ様の教え通りなら返り討ちに出来ると思っていたから。
だけど、やっぱりかあ様のいう事は聞かないとダメだね。
僕は人間たちに出会い、そして負けて、命からがら逃げてきたんだから。