ライバル部活軍視察
まず俺達が向かった先は…サッカー部だった。
「やはり人数が多いなサッカー部は」
「まぁな、なんと言ってもうちの部活の七大勢力の一つだ」
そう、このサッカー部以外にも人の集まっている部活が他6つある…4月に見た、超人二人もこの七大勢力に入っているということを聞く。
でもって、俺を返り討ちにした奴らも七大勢力にいるらしい。
ああ、今思い出しても腹が立つ…!
そんな気持ちで視察していた俺達の横を……何かが通り過ぎていった。
……通り過ぎる? おいおい、ちょっと待て、何かってなんだ? 真っ直ぐ見ていたはずなのに、何が真っ直ぐから来たかわからないのはおかしくねぇか?そう思って後ろを見ると……そこには2つのサッカーボールが転がっていた。
…って、なに? サッカーボール!?
サッカーボールが目視出来ない速度でこっちに飛んで来たってのか!?
俺がその事実に驚愕していると
「すみませーん!」
目の前から、爽やかな笑顔で走ってくるサッカー部のユニフォームを着けた男が……ってアイツは…!
「すみません、ボール飛ばしちゃいました……ってあれ、君は確か、4月に戦いを挑んで来た……」
「よぉ、2ヶ月ぶりだなぁ……足野郎」
俺は睨み付けながら言う。そうかこいつ、サッカー部だったのか……俺が負けたヤツの一人、足野郎!
すると、ああっ!と思い出したように言って、こちらに笑顔で話しかけてくる。
「そうそう、2ヶ月前に戦い挑んで来て、僕に負けた一年生くんだよね君? 久しぶりだね、にしても足野郎ってのはちょっとひどいなぁ……それに一応、僕は君の先輩なんだぞ?」
「先輩だろうが何だろうが関係ねぇ! ここで会ったが2ヶ月目! 勝負だ足野郎!」
「うーん、今は勘弁してくれ、部活中だからキャプテンにどやされる」
「るせぇ! 勝負だ勝負!」
「まぁ落ち着けレンガ、鼻息が荒いぞ?」
「うっせぇ!」
俺が熱くなりながら対応していると、足野郎は目線を黒日々の方に送る。
「おや、君は?」
「へっ?あ…はい、わたくしは一年の黒日々サクヤと申しまするのだ」
黒日々はぐちゃぐちゃな口調で挨拶した、こいつもしかして、知らないヤツには口調ぐしゃぐしゃになるのか?
「サクヤちゃんか、初めて見る顔だね」
「昨日からこの学校に転校して来たのですぅ」
語尾が妙にウザくなってんぞ黒日々。
「あはは!面白い子だなぁ君は、僕は二年サッカー部所属の足原シュウト、よろしく」
「はい、よろしくお兄ちゃん」
そう言って黒日々は足野郎と握手する……誰だよお兄ちゃんって。
などと思いながら、二人を見ていたが……二人は一向に手を放さない。
「おい黒日々、さっさと手ぇ放してやれよ」
「……あ、いや……私は放そうとしてるんだが…」
「はぁっ?」
そう思って、足野郎の方を見ると
鼻血を出して、あらぬ方向を見て固まっていた。
「…なぁ、黒日々…お前なんか能力とか使ったのか?」
「いやいや、私は能力者なんかじゃないぞ?」
俺は足野郎の目の前で手を振るが、何の反応もしない……んじゃあ仕方ない、いやぁ不本意ながら仕方ない。
俺は拳を握り
「起きろオラァァ!!」
「ぐぼはぁ!?」
足野郎の顔面を殴って、正気に戻した。いや、別に前負けたのが悔しくて殴った訳じゃない、殴って気が少し晴れたなんて全く思ってない。
「何を突然殴ってるんだレンガ!?」
「いやぁ、先輩に目を覚まして欲しくてよぉ、気分がちょっとよくなったなんて思ってもいねぇよぉ」
「顔緩みっぱなしでそんなこと言っても説得力皆無だぞ!? だ……大丈夫でしょうか先輩!」
黒日々は慌てて足野郎に駆け寄るが、足野郎は自力で立ち上がる。
「うう……」
「だ……大丈夫ですか……?」
「ああ、心配要らないよ……悪かったね、マイシスター」
…マイシスター?
「お……おっと間違えた、サクヤちゃんだったね」
「いやそんな間違い方出来るか」
俺がそんな指摘をすると、足野郎先輩は笑顔で言った。
「いや、恥ずかしながら今のお兄ちゃん発言によって僕は嬉しさのあまりに固まってしまってね、だって……こんな可愛い子にお兄ちゃんと言われたら僕はお兄ちゃんにならざる得ないじゃあないか!」
…こいつは何を言ってんだ?
輝かしい笑顔で足野郎は言ってるが、俺には何を言ってるが理解出来ず、また、黒日々も戸惑いながらそれを聞いていた。
「はぁはぁ、まずい……さっきの一言で僕の義妹萌え魂に火がつきそうだ……! ああ、もう! 怖がる妹と雷の日に一緒に寝てあげたり、寂しがり屋の妹とお風呂一緒に入ったり、お兄ちゃんのために作ったんじゃないんだからね! と言うツンな言葉をもらい受けながら、あはは、仕方ないなぁってご飯を食べっごはぁっ!」
何を喋ってるかわからない足野郎は、後頭部に弾丸みたいに飛んで来たサッカーボールを食らい気絶する……頭にボールの痕がついてるぞ。
「いや、悪いねウチのイカレポンチが」
気絶した足野郎を見てると、そこにジャージ姿の目がツリ目の女が現れる。マネージャーか?
まぁ、とりあえず……頭おかしくなったのは殴った俺のせいかも知れねぇし、一応、謝っとくか。
「ああ……いや、どちらかっつうと俺が殴っておかしくなったっつぅのも」
「安心しなさい、これがこいつの素だから」
などとジャージ女は言い切った。それはそれで安心出来ねぇ気がするが。
そしてジャージ女は小さく、『さてと……』というと、足野郎を右手の人差し指と親指で摘まむようにヒョイッと拾い上げる。おいおい、どんな筋力してんだこの女…!
そして女は、グラウンドの方に振り向き、背を向けたまま言う。
「もしウチに入るなら歓迎するよ、入部届さえ持ってくればね」
「ち…ちょっと待て! なにもんだお前!?」
俺は叫ぶように問う、すると女は振り向いて言う。
「三年、足原ルーコ。女子側のサッカー部キャプテンだよ、まぁ、部内では副キャプテンだけどね」
……この女が副キャプテン……!? サッカー部なのに女が副キャプテン…!?
「っていうのもおかしいけどね、第一私はサッカーなんかあまり上手くないし……言い換えるなら……サッカー部で二番目に戦闘力があるってとこかな」
……こいつがこのサッカー部のナンバー2!? 余計にあり得ねぇ…!
「……どうも信用してないような顔ね、一年生くん」
「当たり前だ……女がナンバー2? はっ、サッカー部もどうやら大したことなさそうだなオイ」
「時代錯誤な人間ね君は……じゃあ…試してみる…?」
「はっ、上等……泣いても知らねぇぞ…!」
俺が拳を握って、飛び出そうとした時、黒日々が、俺の肩に手を置いて制止してきた。
「邪魔すんな黒日々!」
「今やるには早すぎるぞレンガ、それに……あの先輩はお前が負けた気絶してるシュウト先輩より、更に強いということなんだぞ?」
「……ぐっ…」
確かに、女だからと見くびって負けたことは…何回かある………だが…!
「だから……その役は、私に任せろ」
はっ?と思った時には、既に黒日々は駆け出し……跳び膝蹴りを食らわしにかかっていた………あ、あの野郎! 奪いやがったな!
黒日々の攻撃が、ジャージ女に当たろうとしたが
しかし
「ふっ、まさか貴女までやる気満々とは思わなかったわね」
…ジャージ女は、黒日々の攻撃を手のひらを前に出すだけで、あっさりと止めた。
「…見事ですな、流石はナンバー2というとこなのかしら?」
黒日々は、こんな時にも口調をぶらしながら言う。
「これぐらいは簡単だよ、止めれないなら、ナンバー2は語れないね」
……あの女、完全に不意討ちの膝蹴りを手のひらを全くぶらさずに防ぐたぁ……ただもんじゃねぇ……いや、そんなことよりもだ…!
俺は黒日々につかつかと近寄り
「……レンガ、やはりこの先輩強………んにゃっ!?」
黒日々にゲンコツの一発を食らわせた。
「なぁにテメェ奪おうとしてんだオラァァァ…!」
「わ……私だって強い人がいるのなら戦いたいと思ったんだから仕方ないだろう!」
「るっせぇ! 何が戦うのが早すぎるだ! テメェこそ戦ってんだろうが!」
「いやいや、それは私なりの気遣いさ、またレンガが負けたら可哀想だなぁと思い……ってにゅわー!」
やかましいわこの野郎という思いを込めて、俺は黒日々の頬を引っ張る。
そうやっていると、いきなりジャージ女は笑い始めた…な…なんだぁ?
「あははははっ!若い、若いねぇあんたら! あははっ!」
きょとんとする俺らを見ながら、ジャージ女は笑って出た涙をぬぐいつつ言う
「気にいったよ、あんた達はサッカー部に入るべき、いや入りな! 後悔はさせないからさ!」
ジャージ女はぐふっ……と言う、足野郎先輩をバシバシと叩きながら、楽しそうな笑みを浮かべて言ってきた。
それに対し、黒日々は真剣な表情でこう返した。
「申し訳ありませんが、ルーコ先輩………その申し出はありがたいのですが………断らせてもらいます」
「…へぇ、なぜだい?」
「私は貴女のような強い人と戦う為……新しく部活を作ります。そう……高戦会で、あなた達に勝つために」
それを聞くと、ジャージ女は俺の方を振り向く。
「……あんたもかい?」
「ああ、当たり前だ……テメェらをぶっ倒す、全員な」
それを聞くと、ジャージ女はニヤリと笑う。
「それはそれで楽しみだよ、せいぜいウチと当たれるほど強くなるんだね……あんた達、名前は?」
「黒日々サクヤです」
「今日関レンガ、この学校にしれわたる名だ、覚えとけ」
「サクヤにレンガね、覚えとくよ…まぁ………弱かったら、忘れるかも知れないけどね」
そんなイヤミなことを言って、ジャージ女……足原ルーコはグラウンドに戻って行った……ちっ……見てやがれよ……!
「…さて、今日は帰るとしようか」
「ああっ?他の部活は見なくていいのかよ」
「十分だ…もう、部活名は決まった」
「………また変な名前じゃねぇだろうな」
「ふふっ、まぁ明日のお楽しみというヤツだ…それじゃあ帰ろう」
…妙に嬉しそうに、アイツはそう言ってカバンを取りに教室へ戻って行った………まぁ、わからねぇでもねぇけどな。
…俺も自分がにやけてるのを知りつつ、カバンを取りに教室へ戻って行った。