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部活抗争風雲録なり

授業が終わったあと、俺はケータイを開き、画面を見ていた。


その画面の中には、EーBと書かれていた。


そう、これは……


「何を見ているんだレンガ?」


「どぉぉぉっ!?」


後ろからいきなり転校生の声がした為、俺はとっさにケータイをポケットにしまう。


「な…なんだよ、なんか用か?」


「いや用というほどでもないが……でも今まさに用が出来た、何を隠したのか聞きたくて来たんだ」


「用を作るために来たのかお前は。ま…まぁ、何を隠したかっていうとだな……メール打ってたからな、見られるのはイヤだと思ってな」


と、俺はごまかすように言った。


「友達いないのにメールとはこれ如何に?」


「うっせぇ!」


「怪しいな……まぁだがしかし、無理に読む気はないよ、無理矢理っていうのは私は嫌いだからな」


「無理矢理友達にさせようとしてるテメェが何を言ってんだ」


俺が呆れながら言うと、転校生は睨むように見てくる。


「な…なんだよ」


「…朝から気になっていたんだが、テメェとかオメェとかじゃなく、ちゃんと黒日々サクヤの名を呼んでくれないか?さくやんとか、さくちゃんとかでもアリだ」


などと言ってきた、自分でさくやんとかさくちゃんとか言うか普通


まぁだが、言わなきゃまた面倒ではあるし、素直に呼んでやるか。


「んじゃバカで」


そう、バカと。


するとバカは溜め息を吐いて、やれやれと言ったあと続けて言ってきた。


「そうか、君は私の言葉もわからないほどバカなんだな?バカというのはつくづく可哀想だな…」


「テメェに!テメェにだけは言われたくねぇんだけど!?」


「じゃあちゃんと名前で呼ぶんだぞ?」


ぐっ……仕方ねぇ、こんなバカにバカって言われるよりマシか。


俺はしぶしぶと、口を開く。


「…黒日々、黒日々サクヤ、これでいいんだろ?」


するとこいつは笑顔で人の頭を撫でながら


「おおっ、よくできましたー!よしよし、偉いぞレンガ!」


などと言ってきた。ぶっ殺す…!


「テメェ一発殴らせろ」


「さて本題に入ろうか」


「いやその前にテメェは殴る」


そんな俺の言葉を聞かずに、黒日々は教壇に向かって歩き始める。


「まぁ先ほどの大した用じゃないってやつなんだが。実はだな、部活を作ろうと考えてる」


「……部活?」


俺の疑問の声は、既に俺ら以外いない教室に響く。


「そう、部活だ。聞いたところ、この学校では色んな部活を作っていいって言っていた。だから、なんか作ろうと思ってね」


「今ある部に入りゃいいだろ」


「それは考えてはみたんだが、作れるなら作りたいじゃないか、マンガとかみたいに」


「どうでも良すぎる理由だな……まぁ適当に頑張れよ」


「おや、乗り気じゃないな、この件には手伝ってくれると思ったんだがな」


「何の根拠があってだよ」


「高戦会」


…俺はその言葉を聞いて、反応してしまう。まさか……


「お前…部活作ってそれに出る気か!?」


「無論だよレンガ、私はまだ来たばかりでまともな戦闘力もわかってない、だったら戦闘力の成績を上げるには手っ取り早い………強者と多く戦える、高戦会ならね」


黒日々はそんなことを自信満々に答えた…高戦会に出ようなんてな。


高戦会。8月と12月に行われる、このバトルライフ学校のみに存在する行事。各部活に所属してるバトルバッチを持つ連中が戦い合う。いわば、部活という派閥同士がぶつかり合う戦いと聞く。


確かに黒日々の言う通り戦闘力の成績を手っ取り早く上げるにはうってつけの話だ、好成績の部活はちゃんと先生から高評価をもらえるらしいしな。


だが逆に、そこであっさり負ければ否応なしに低評価をつけられてしまうという、諸刃の剣みたいな戦いだ。


普通、戦闘力の成績ってのは学園の人間と戦いまくっても案外成績は下がらないものだが、この高戦会では成績の上がり幅も下がり幅も通常のバトルは比較にならないほどらしい。……まぁ、俺はちょっと油断して負けたのが多くて、入って2ヶ月だと言うのに成績が低いが。


黒日々は、尚も話し続ける。


「強者集まる戦いに、いきなり入って来た転校生と一年生が立ち上げた、訳のわからない部活が颯爽と現れ強敵達を叩きのめす……それは、実に楽しそうじゃないか?」


黒日々はクスクスと笑いつつそう語ったのち、俺を真っ直ぐ見据える。


「だからレンガ………」


そして…壇上に座って足を組み、不適に微笑んで、黒日々は言った。



「無駄な部活を作って、私と共に強くならないか?」




…夕焼けの太陽が射し込む教室で……そいつは、そんな下らないことを大真面目な顔で言い出した。


なんだよ、無駄な部活って…行動する為に目的作ってどうすんだこいつは


…大体、俺はこいつに負けたんだぞ?付き合ってやる義理なんかねぇ。


くだらねぇくだらねぇ、やってられっかよ。


俺はその面倒さを、口に出して言った。


「……やってやるよ」


……あれ、今俺はなんて言った?


やってやるよ? おいおいなんでだよ、こいつに同調とかあり得ねぇぞ俺。


負けまくってんのが悔しいのか? だから強くなろうって言葉に惹かれたってのか?


……その通りだ。


ああ、否定してぇがその通りなのだ。


このままじゃ、俺はただの学生と変わらない生き方しか出来なくなる。


なら、強くなるしかねぇ。今ならねぇと、俺はきっとこのまま立ち止まってしまう…!


例え、こいつがかなり腹立たしくウザったくてアホでバカだろうが。


あのビックリ人間どもに一泡吹かせられる機会があるってんなら、やってやるよ!


「ああ、やってやる、面白いじゃねぇか……お前と馴れ合う気はねぇが、高戦会に出れる機会があるってんなら話は別だ……テメェが作る部活、入ってやるよ!」


俺が力強くそう言うと、黒日々はふっ…と笑う。


「…いい返事だ、じゃあ早速…」


「ああ、申請届けを…」


「部活名を、考えよう!」


「……は?」


…俺はこいつの発言に、つい呆気に取られてしまった……ぶ……部活名……?


「何を呆けてるんだ? 私が君に話そうとしたこと、そう、それは……部活名についてだ!」


「…なんだと?」


「適当とはいえ、名前だけはちゃんと考えるべきだ……出来れば可愛い名前がいい。わんわん部とか、ねこにゃん部とか」


「……いや、どうでもいいから申請を…」


「よくない、どんな可愛い名前にするか迷って決められないから困っている。ゆえに君に聞こうと思ったのだ……部員の一員として提案を頼むぞレンガ!」


…黒日々は、俺を誘った時同様の真剣な眼差しで、センスない部活名について深く考えろと言った。


そんなヤツの発言は、俺の燃えていた心の炎を鎮火してくれた……やっぱ別の部活入って強くなるのを考えるべきかもしれねぇ……

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