一人と一人の昼休み
「ご飯を食べようか、レンガ」
……昼休み、転校生、いやバカはそう言って、目の前の席に座ってきた。
「消えろ」
「何を無茶なことを、私は超能力者じゃないんだぞ?」
「別に本当に消えろって訳じゃねぇ、俺の視界に入るなってんだよ」
そう言うと、転校生は肩をすくめて言ってくる。妙にムカつく挙動しやがって……
「またまた無茶なことを……いいかレンガ、一人で食べるのはさみしいんだぞ?」
「だからテメェのぼっち事情なんて知るか」
「いや、ぼっちはお互い様だろう? 見たところ君も友達いないじゃないか」
「この学校入って4月はバトルばっかしてたからな、交流する4月にそんなことしてりゃそりゃ話すやつも……ってなんだそのニヤケ面、別に友達が欲しいだなんて思ってねぇぞ」
「ははは、ツンデレンガは本当ツンデレだなぁ」
「何変な名前勝手に作ってんだてめえ…!」
そう言って転校生を睨み付けると、まぁ落ち着けと言わんばかりに手を動かして言う。
「よいよい、じゃあお互いに初めての高校の友達と言うことなんだな、2ヶ月間も寂しかったろう、その2ヶ月でお前の純粋な心もひん曲がったツンデレ思考になってしまったんだろう」
「勝手に人の高校の2ヶ月を想像すんなテメェ」
ったく、なんなんだこいつは……つうか、ぼっちとか言ってるがなんだかんだでこいつなら友達出来るだろうに。
と、そこまで考えて俺は思い付いた。
そうか、こいつが俺のとこ来たら近寄り難くて友達が出来ないってことか。
じゃあ、それをこいつに伝えれば、俺は晴れて自由、こいつは友達出来てウッヒャッヒャって訳だな。
よし、早速伝えてやろう。
「おい、一つ言わせてもらうぞ」
「下ネタか?」
「ちげぇバカ、手っ取り早く友達を作れる方法だ」
「ほほう、それは興味深いな、是非教えていいぞ?」
「なんで微妙に上から目線なんだよ。まぁいい、簡単なことだ…俺に付きまとうな、そしたらアッチから勝手に来る…」
「却下」
「だから………って、はぁっ? なんでだよ!?」
「そしたらお前は私を友達と思わなくなるじゃないか、全くに下らない考えだぞレンガ?」
「いや俺はお前を友達と思ってねぇし」
そう言うと、バカ転校生は驚きながら言う。
「……そ…そうなのか……?」
「なんでそんな意外そうなリアクションしてんだよ! 最初から言ってたろうが!」
「…そうか、そうだったのか」
…ようやくこのバカにも俺が本気だと言うことがわかったらしい、これでこいつも俺の前から消え………
「まさか………私を親友と思っていてくれたなんて………僅かな時間喋っただけなのに、私は嬉しいぞレンガ!」
るわけなかったなぁチクショウ!
俺は立ち上がってアホの顔に近寄り、威圧するように睨みつけながら言う。
「おい、テメェの頭の中は太陽でもつまってんのか? アホでバカでボケの救いようない三拍子で構成された脳ミソなのかお前の脳ミソは?」
「近視か? 顔を近付け目を細めるとは」
「ガンつけてんだよ!」
「銃を!? まさか、目がビームライフルとかそういうシャレみたいな武器を持っていると…!?」
だぁぁ……やっぱり会話が交わらねぇ。
俺はガンつけても、こいつには無意味ということがわかったので怒りは萎え、再び席に座る。
「ともかく、俺はテメェを他人としか思ってねぇ、以上だ」
「全く…頑固だなぁ君は」
「お前に言われたくねぇよ」
俺は素っ気なく返答する、すると転校生は手をポンッと叩く。
「わかった、そこまで言うのなら……一緒にご飯を食べよう!」
「お前話聞いてねぇだろ!?」
「聞いてたさ、まだ私を他人と思えるんだろう? でも、私は君を友達と思ってる、だから仲良くするために一緒にご飯を食べよう、レンガ」
…そう言ってこいつはまた、今朝のようにニコリと笑った。
もうこいつと口論するのは無駄だなと悟った俺は、持って来た弁当を出して言う。
「…今日だけだからな、明日は他のヤツと食えよ」
「ふふ、さてそれはどうなるかな」
全く、本当ムカつくヤローだなこいつは……
そう思いつつ、俺は弁当のご飯をかけこむように食べた。