表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/43

バンブーブラザーズ2

万里チュウカと別れて中に入るとそこは殺風景で妙に長い通路になっており、奥に扉らしきものが見えていた。なんでこんな妙に長ったらしい通路なんだよ……まぁ、入って即あいつらに遭ってたらいきなり殴りあいになって、少し面倒になってただろうから別にいいけどよ。


あの扉に多分奴らがたむろってんだろうな……一気に突撃するか、一応話し合いするか……まぁ俺としちゃケンカしてぇからそれで治まってもらっても困るが。とりあえず面倒くせぇし、入ってから考えるとするか。


そう思って歩いた瞬間、俺の鼻に何かがかする。目の前に突然、変な物が現れた。


その正体は、竹槍。左の壁から突如竹槍が出現したのだ。今、冷静に考えていられてる俺は恐らくさっきから変なことが起きすぎて思考回路がバグって逆に冷静になれてんだろうな。


そう思ったとき、奥の扉が開いて誰かが出てくる。それは、さっきの不良軍団の中で見た顔だった。数は二人か。


「けけけぇ、ばかがぁぁん! 飛んで火にいる夏の虫ぃ!」


「お前に気付いてなかったと思ってんのかよぉぉん!?」


などと言ってくる。なるほどな、気付かれてたのか。


「ここは元忍者部の部室ぅ! そして、この道は奴らにとっての修行の道だった場所ぉ! その道を通るには数々のトラップを避けねぇと来れないぜぇぇん!」


「いつもは起動してねぇがぁ、テメェのために田儀さんがわざわざ起動させてやったのさぁ! ありがたく引っかかってお陀仏しなぁぁん!」


そう言って顔がお互いに似てる奴らは笑う。愉快そうに笑ってんなぁ、まぁ俺もこんなもん起動させたら笑っちまうだろう。黒日々辺りを脅かすために使ってみるかもしれねぇし。


ともかく、気付かれてたんなら話は早い。そんで敵対する気満々ってのは実にいいと思うぜ? 


俺は内心、喜びつつもそれを表情に出さないようにクローン人間っぽい二人に聞く。


「おい、そこのクローン人間二人」


「誰がクローンだぁぁん!? 俺たちは似田利兄弟だ! この学校でも有名ななぁ!」


嘘付け、聞いたこともねぇっつうの。まぁ、んなことはどうだっていい、聞きたいことは一つだ。


「こんな仕掛け起動させてるってことは……つまり、ケンカ売ってるってことでいいんだよな?」


俺がそう言うと、ニタニタしていたクローン面二人は更に大爆笑して言う。


「ケンカァァン!? グヒャヒャヒャ! ケンカにもなりやしねぇよ! 万一テメェがこのトラップを突破できたとしても! 俺たち二人がいるし、中には田儀さんと土比さんもいんだよぉぉん!」


「特に今からお楽しみタァァイムだからなぁぁん! テメェなんかが乱入したら即病院送りなんだよぉぉん!」


全く、妙にテンション高い奴らだぜ。けれど、人のことは言えやしねぇか……。そんなことを考えて、俺はこらえきれずに口を吊り上げて笑って言う。


「うっし、んじゃあケンカ売ってるってことでOKだよな?」


すると、似たもん兄弟は再度大笑いして言う。


「げっひゃひゃひゃ! こいつ頭が悪いぜぇぇん! ケンカになんねぇってんだろうがぁぁん!?」


「うっひゃっひゃ! バカなやつだぜぇぇん!」


そう言って、奴らは更に笑う。それに便乗するように、俺も大爆笑する。いやぁ、笑わずにはいられねぇよな、はっはっはっ!


そう思って笑っていると、突然


「何がおかしいぃぃんだてめぇぇぇん!!」


などと、似たもん兄弟の片割れが怒りをあらわにして俺に向かって叫んできた。しっかし、ここはあんま声出さなくても響くからよく聞こえるな。つうか、笑う理由なんて決まってんじゃねぇか。


「ケンカ売られたから、嬉しくてたまらねぇからに決まってんだろ」


俺は手をポキポキと鳴らせつつ、笑みを浮かべて言った。すると、奴らは俺を睨みつける……そういう目をした奴なら遠慮なく殴れるからありがてぇ限りだぜ。


そのためにはまず、この忍者だかハットリだかの部活の罠を回避してあのクローン兄弟に拳一発食らわすとするか。


けどどうすっかな。黒日々なら、あの一瞬で近づく技っぽいのを使って一気に突破できるんだろうが俺にはそんな技ねぇし……まっ、成せば成るか。とりあえずこの竹みたいなのが出る前に突破すりゃいいだけの話だろうからな……!


俺はそれを実行するために走り出そうとして一歩踏み出した瞬間、俺の真下から竹槍が出てきた……俺はそれを焦りつつも咄嗟に下がって避ける。なんだこりゃ……! 上下左右どっからでも出てくんのか!? 


そんな俺を見て、再三、クローン兄弟は笑い始める。


「だっひゃっひゃぁぁん! あんなこと言っておきながらかっこわりぃぃんっ!」


「こぉのハッタリやろうがぁぁん!」


その言葉を聞き、俺は怒りを覚える。このクローン兄弟が……調子乗りやがって……!


怒りを抑えつつも俺は一歩踏み出し、再び歩き始める。右から竹槍、ギリ回避。


また歩く、上から竹槍、下がって回避。


「まさかぁテメェ……んなせこせこしたやり方で来るきかぁぁん!? だっせぇ! まぁじだっせぇ! ぎゃはっはっはっ!」


クローン兄弟はゲラゲラと笑うが俺はそれを無視しながらまた一歩歩く、斜め左と右からまとめて出てくる、また下がって回避。そんで、また歩く。左右から出てくる、また下がって回避。


「オラー! かっこわりぃぞぉぉん!? 走ってこいや走ってよぉぉん!」


クローン兄弟の煽る声が聞こえるが、こらえつつもまた一歩進むと、上下左右から出てくる、後ろに下がって避ける。


そして、今出てきた四つの竹槍のうち、真下の竹槍を踏みつけて破壊し、左右の竹槍を掴んで無理矢理へし折る。ありがてぇことに、竹槍の在質は脆いらしい。


さぁてと……こんなもんでいいか。


俺は来た道を戻り、通行の邪魔をする竹槍を更にベキベキとへし折っていく。


「ひぃっひゃっひゃ! あきらめるのかぁぁん!?」


「賢明! 懸命だぜぇぇん!」


なんてことをクローン兄弟は言ってくる。そしてドアの前まで戻った俺は、クローン兄弟のほうを振り向く。


誰があきらめるかってんだよ……ケンカと部室、その両方をみすみす見逃す訳ねぇだろが……! そして、俺は足を曲げて体勢を低くする。


「なぁ、クローン兄弟……さっきお前、走れとかセコセコすんなとか言ってたよな……?」


俺が小さくそう呟くと、クローン兄弟が耳をこちらに傾ける。


「あぁん? なんだって?」


「全く……その通りだよなぁぁっ!」


俺は、一気に走り出す。さっきより助走もつけれて快適な気分だぜ……!


「ひゃひゃひゃぁぁん! こいつばかだぜぇぇん!」


「竹槍に貫かれて重傷負っておっちんじまいなぁぁん!」


笑ってられんのも今のうちだぜボケ……! こんなトラップなんてのはつまり……ちょっとムズいハードル走と似たようなもんだろうが!


そして、左から竹槍が出てくるが、俺はそれを避けつつも走る。こんなもん、黒日々の攻撃や足野郎の蹴りよか全然おせぇ……!


更に妨害するように何度も出てくるが、俺は走りながら避け、避けられねぇ時は殴り壊す。さっきので壊せるってわかったからな、怖さなんてねぇ。


顔やら足やら腕などに竹槍がかするが、それでも壊して避けて壊して壊して壊して避ける。そんなことをしてるうちにクローン兄弟の顔が近くなってくる、もうちょっとだな……! と思ったとき。


突然、上から何かが落ちてくる。そして走っていた俺はそれに勢いよくぶつかる。いってぇ……なんだ一体……!


「ふっふっふ! まさか竹槍地獄を避けるとはそれなりにやるとは言ってやりたいがぁぁん!?」


「だがぁぁん!? お前は終わりさぁぁん! その、侵入者排除自立竹人形! 竹男マンが貴様を叩きのめっ……!」


俺は奴らが言い終わる前に、この邪魔な竹人形をクローン兄弟の後ろのドアまで殴り飛ばした。ったく、人が見事にゴールインしようとしたら邪魔してくさりやがって……!


「「……はっ?」」


クローン兄弟は声をあわせてありえないと言ったような顔をするが、こんな竹人形なんぞに俺が止められるか。


俺は一歩ずつ、クローン兄弟の方へと近づいていく。


「さてと、やっと近くで顔が見れたなぁ……クローン兄弟、あとなんか色々ごちゃごちゃ言ってくれてたよなぁ……?」


俺は腕をグルグルと回し、首を鳴らし、もう一度手をポキポキと鳴らす。すると、奴らは笑い出して言う。


「く……くくくぅぅっ! いいのかなぁぁん!? 俺らに手を出すと田儀さんと土比さんが黙ってねぇぞぉぉん!?」


「良いことじゃねぇか、ケンカできるし」


「なっ……お……お前頭おかしいんじゃねぇぇのかぁぁん!? そんな理由でいいのかよぉぉん!?」


「おお、別にかまわねぇよ? つうか俺以外の奴もほとんどそうするだろ、この学校そんな奴ばっかだし」


「「んな訳あるかぁぁんっ!」」


とか声を合わせて言ってきた。いや、黒日々といい、足原といい、激堂といい、エセチャイナ姉妹といい、みんな好戦的な奴ばっかだから喜んで闘うと思うけどな。


まぁ、んなことはどうでもいいんだよ。さっきまで色々とコケにしてくれた借りは返さないとなぁぁ……!


「覚悟はいいよなぁ……? クローン兄弟……!」


俺は口を目一杯吊り上げて、笑う。すると


「く……くっくっく! バカがぁぁん! 見せてやるぜぇぇん! 俺と弟の真骨頂! 擬似分身ケンカ殺法ぉぉっ!」


などと言って、左右から襲いかかってくる。


「右が利き腕の俺と左が利き腕の弟! どちらがどっちか……見切れるかぁぁん!」


そして、クローン兄弟の拳がほぼ同時に俺に届こうとする。


「「決まったぁぁん!」」


奴らがニヤリと笑った瞬間。


俺はクローン兄弟の顔面にそれぞれ左手右手で一撃を食らわし、そのまま地面に持っていくように叩き殴った。


「見切る必要なんてあるか、ボケ」


俺がそう言うと、悶絶しながら


「「そ……そうっすねぇぇん……」」


と言って、自分でガクッと言って気絶した。自分で言うか普通。


俺はクローン兄弟から目線を変えて、目の前のドアを見る。さてと、ご対面と行きますか。


俺は竹人形を蹴り退かしてドアを開ける。そこには。


「ウェルカ~ム、クソ野郎」


偉そうな男が、ニヤニヤと笑いながら俺をあざ笑うように高そうな椅子に座っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ