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シノビハットリハウス

数分後、奴らの後を追っていたら……そこは、行き止まりだった。おいおい、まさかそんな目立つとこでボコんのか? 頭悪いなこいつら。ていうか、そしたら俺が追った意味ねぇじゃねぇか……! 


すると、奴らは壁の端っこあたりを触り始める。何してんだこいつら……。


そう思っていると、突然鍵の開くような音がする。すると……突然、壁にドアノブが現れた。


……そう、ドアノブだ。いや、なんでドアノブが……? 考えている俺の思考が追いつかないまま、連中はそのドアノブを回す、すると。


行き止まりだったはずの壁の一部がまるで普通のドアのように開き、連中はその中に入っていった。……よくわからないが、つまり隠し扉ってやつだな……? ていうかあいつらなんでこんな場所知ってんだ……? それよかマジでこの学校はなんでもアリか?


訳のわからんことばかりで頭の中がごちゃごちゃになりそうだが、とりあえず追わないとな。


そう思い、俺は連中の真似をして壁の端っこ辺りを調べる。つうか、なんかこれ一人でやってたらアホに見えるんじゃ……と思っていると。


「アヒャヒャヒャヒャっ! アホ発見あるヨー!」


癇に障るような声で、笑う声が聞こえた。この声は……!


俺は後ろを振り返る。


するとそこにはやはり、先週戦った、あの苛立たせることが得意なあのエセチャイナ、万里チュウカがいた。


「何してるあるかナー? 一人でパントマイムの練習あるカー? 案外ユーモラスなやつあるネー」


などと言って必死に笑いをこらえながら万里チュウカは言った。性悪女よかこいつは最悪かもしれねぇ……!


「うっせぇ、さっさと失せろこのエセチャイナ」


俺は嫌悪感をあらわにして万里チュウカに言った。くそっ! 最悪だ、足原か足野郎ならまだしもこいつに見つかるとは……! あの不良共……こんなことさせやがって、あとでぶん殴る……!


すると、万里チュウカは俺の言葉に怒ったのか、こちらを睨み、


「相変わらず口の悪さは天下一品あるネー、このムカつく一年生は。今前回の決着つけてやってあげてもいいあるよコラァ」


と言って、万里チュウカは戦闘体勢を取る。おもしれぇ……! あん時の借りを今返してやる……!


そう思い、俺も右足を前に出して戦闘体勢に入ると。


「やっぱやーめたネー」


と言って、万里チュウカは体勢を崩し、手を頭の後ろに組んで背を向けた。


「おい、逃げんのか!?」


「そうある、こんなとこで道草してたらおねーちゃんに怒られるあるシー。お前相手だと、しつこいから倒すの時間かかりそうあるしネー」


なるほどな、つまり俺が強いと知ってるから闘うのを止めようと思ったわけか、懸命な判断だな。


「けっ、俺が怖いなら最初から言えってんだ」


すると、万里チュウカはこちらを恨めしそうにこちらを見て、


「お前って人を挑発することに本当長けてるあるナー……! 本気でムカつくあるけど、今日は見逃してやるあるヨ……!」


などと怒気を交えて言ってきた。どうやらマジで闘う気がないらしい、ちっ、つまんねぇの。


しかたねぇ、こいつが行ってからまたここを開けるのを再開すっか。と思ったとき、万里チュウカが何かに気付いたような顔をする。


「ンー、もしかしてお前、忍者部の部室に行くためのボタン探してるあるカー?」


「忍者部?」


俺がそう聞くと、万里チュウカは言い始める。


「去年まであった部あるけど、人数が足りずに廃部になった部活あるヨ。そういえば部室この辺だったあるナー」


「なんでお前がそれを知ってんだよ」


すると、万里チュウカはニヒヒと笑って言う。


「そりゃおねーちゃんの暗器道具補給のためにプレゼント代わりに盗んだり、サボりに来るためによく来たからあるヨー。あっ、これおねーちゃんには内緒あるヨ、ぶっ殺されかねんある」


なるほど、チャイナ姉が手裏剣やらクナイやら投げてたのはこいつがこっから盗んだからか。つうか意外にこいつろくでもない人間だな、俺が言えたことじゃないが。


だが、こいつはナイスタイミングだ。つまりボタンの場所もこいつは知ってるはず。


そう思ってると、すっげぇ腹立つ笑顔をして万里チュウカは言う。


「もしかして、ボタンの場所知りたいとか思ってるあるナー? ははぁ、知りたいあるよネー、この奥に用があるなら知りたいあるよネー。まぁ、だったらそれなりの聞き方というのがあるよネー?」


「教えろアホチャイナ」


「お前の聞き方はバカにするような聞き方しかないあるカ!?」


お前に丁寧に聞くなんて屈辱的過ぎて聞けねぇっての……! だが……このボタンを知っておかねぇと仮部室を得ることができねぇ……!


プライドか……部室か……! くそっ……!


俺は、その二つを天秤に量り……そして、迷いながらも俺は言う。


「……お……お……」


「お……? 何ある何ある?」


俺の言葉を期待して、万里チュウカは待つ。ああ、言ってやるよ!


俺は頭の血管が切れそうな気分を我慢して、言った。



「……お……お……俺と! 勝負して勝ったら教えやがれてめぇぇ!」



無理だった。やっぱ言うことを聞くとか無理だ。だったらもう勝って聞くしかねぇ……!


そして、そんな俺の言葉を聞いた万里チュウカはため息を吐いて両手をヤレヤレと言った風に上げて言う。


「あーあー、わかったあるヨ。意地っ張りな一年生あるネー、むしろ尊敬できるほどの面倒くさい頑固さある」


そう言うと万里チュウカは壁に近づいて、連中と同じように端っこを調べる。先ほどと同じように鍵の開く音がしたと同時に、ドアノブが出現する。


「ほら、行くがいいあるヨ。全く、私は優しい先輩ある」


「自分で言うなよエセチャイナ」


「うっせぇある。優しいことしたら自分をこうやって褒めたくなるのは当然ある」


確かに、それはあるな。まっ、実際無償で教えてくれたしな……案外いいやつじゃねぇか、こいつ。


「ほら、さっさと行けある。また閉まるあるヨ?」


「おう。わかってらぁ」


そう言って俺はドアノブを引いて、ドアを開けて万里チュウカのほうを向き、


「……教えてくれて、ありがとよ」


と言うと、万里チュウカは


「今度飯おごらせるから、気にすんなあるヨー」


と、ムカつく笑顔で言ってきた。ったく、やっぱ先輩ってのは厄介なやつばっかだな。


そう思いつつ、俺は中に入っていった。



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