クールなあの子も変人でした
黒日々さん……いえ、サクヤちゃんと会話して教室から出た私は、
鼻血を出していた。
いや、だって仕方ないじゃない、あんな可愛い必死な言われ方されたら鼻血も出ざる得ないわ。
そんなあの子と毎度毎度一緒にいる粗暴かつ口の悪い男、今日関レンガ。羨ま憎たらしい。
そう思ったのは、私が彼女を見たその日、遅刻したときのあの子を見て、私はときめいた。健気でかわいい……と。
あのダメっこオーラが出てるあの子を私は愛でてあげたい! そう思って次の日から早速声をかけようと、そう思ったのに……思ったのに!
次の日はあの今日関レンガと一緒に登校して、さらには一緒にご飯を食べ、あまつさえ部活を作り始めた。
私は愕然とした、私が一緒にやるべきことを全て取られた。そんな気分になった。
そして、そんな私に追い討ちをかけるように、あの狂犬男が私に嫌がらせのように話しかけてきたのだ。
そして思ったとおり粗暴極悪口悪いと性根の悪さがにじみ出て、さらにサクヤちゃんに後ろから抱きつかれるとかいう怒りのボルテージが高まりそうなことまでやってもらっており、最早一緒にいさせるわけには行かない、そう思った。
そして、この機会に私はサクヤちゃんと近づいてあの今日関レンガの凶暴性を教え、何とか引き離そうと思ったのだけど……思った以上に、彼女は今日関レンガを信用していた。
その信頼を勝ち取る今日関レンガが恨めしい……そう思う前に、あの子の必死さの威力がすごすぎてそんなの吹っ飛んでしまった。
むしろ、今日関レンガに我慢して部活に入れば私も後ろから抱きつかれたり一緒にご飯を食べれるのかしら……それは、中々いいかもしれないわ。
けれど、やっぱりあんな危険な男とサクヤちゃんを一緒にいさせるのは……。そう考えていると、私は前から来た人にぶつかってしまう。私としたことが……。
「すみません、少し考え事をしていて……」
そう思って前を見ると、そこにいたのは。
「へへぇ、気にすんなよねーちゃんよぉ」
下卑た笑みを見せる奇抜な髪型をした、不良と言われる人間たちだった。最悪……。
私は一礼したあと、彼らを素通りしようとしたが金髪の男に腕を掴まれる。
「おいおい、そんな冷たくあしらうなよ。俺らと遊ぼうぜ?」
「……穢れるから、触らないでくれない?」
私がそう言うと、金髪の男は怒りをあらわにして言う。
「……はぁ? なんだテメェその態度は、お高く止まりやがって」
「おい女! この人が能力者でランクCの田儀さんってわかって言ってんのか!」
金髪の取り巻きの一人が、そんなことを言う。
「そんなの知らないわ、誰も彼もが貴方たちみたいに暴力を振るうために来た人間と思わないでくれない? 本当、愚かしいわ貴方たち」
私がそう言うと、金髪は私の顔を殴りつけてきた。
「図にのんなよ、バトルバッチ持ちでもないただの女が……おい、連れてくぞ。こいつには……ちゃんと躾が必要みたいだからなぁ……!」
金髪は、気持ち悪い笑みを浮かべてそう言った。
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「くっそ……見当たらねぇ」
現在地点玄関前。
俺は黒日々と分かれたあと、使われてない部室を探していた。
無断で使っても問題のなさそうな場所、そんな場所を校内を回って探しているのだが全く見当たらない。体育館の倉庫は狭すぎで、空き教室も探したが中に物が置かれすぎて使えそうにない。というか空き教室を使うとすぐに鳥越やら文立花先生にばれそうだから使わないが。
やっぱ学校以外で探すしかねぇか……? いや、この辺りにはそんなとこねぇしな。
でもまぁ、学校内探すよかマシか……それにどうせ少し使うだけだしな、ジジイを叩きのめすか部員を探すまでのわずかな期間のみ。そう思って校舎内から出ようとしたときに、あほそうな頭をした奴らを見かける。おっ、不良だなありゃ、人数は五人か……強そうなのが二人、ケンカ売ったら間違いなく買うなあいつらなら。
そう思ったときに気付く、その連中の中に昨日の性悪女がいた。なんか暴れようとしてるが、女じゃやっぱ男の筋力に敵わずにじたばたするので精一杯みたいだな。
……けっ、あいつ口悪いからどうせ不良どもを怒らせて連行されてんだろ。いい気味だぜ、そのままボコられっちまいな。
そう思って俺は気付く。待てよ? どこにあの性悪女を連れて行く気だ?
俺はあんま使わない頭で考える、玄関を通らずにどこに……。それがわかったとき、俺はニヤリと笑う。なんだ、あの性悪女も中々役に立つじゃねぇか。
そして、俺は奴らの後を追うことにした。




