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副キャプテンルーコとランクS

「ん~、初々しい二人だね~。まるで幼なじみみたいに仲良し仲悪しって感じ~」


二人に授業時間について話した医薬野先生は、ニマニマと笑いながらそう言っていたが私は首を傾げる。


「ん? あの二人は昔からの友人じゃないんですか?」


「違うみたいだよ~? 黒日々さんは最近転校して来たらしくてね~、どうやら今日関くんと意気投合したらしいよ~? 変わった子だよね~、あの狂犬みたいに誰にでも噛みつく今日関くんと仲良くなれるなんてさ~」


狂犬。私はその言葉を聞いて苦笑してしまう。確かに、強気で負けず嫌いで啖呵を切るレンガはまさしく狂犬と言われてもしょうがない。多分、ランクSの人間が目の前に現れてもそれは変わらないのだろう。


まぁ、犬と言えばサクヤの方も犬っぽい気がしないでもない。真面目で愚直な感じもして、まさしく忠犬と言えるかも知れない。


そう考えたら、狂犬と忠犬が一緒に行動してるみたいだね……そう考えると、ちょっと微笑ましく思う。


「さてと、見た感じサッカー部の連中も無事なようなので、私もそろそろおいとまさせていただきますね先生」


「そこの壁に埋められてる貴方の弟さんはそろそろヤバそうだけどね~」


あ、忘れてた。でも、正直このままの方が良いかもとか私は思ってしまう。よりによって、サッカー部の連中もいる場所であんなことを言いやがって……寝てたから良かったものの……! これだからこいつは……。


……でも、これで今度から迂闊なことは言わなくなるだろうし、そろそろ許してあげようかな。


私はそう思い、シュウトの足を掴み、おもいっきり引っ張って壁から救出してあげた。すると、顔を青ざめさせてシュウトは言った。


「うっ……死ぬかと思った……」


「あんたはそんな容易く死ぬような奴じゃないって知ってるよ」


私がそう言うと、シュウトは何か反論したそうな目をしていたが私の目を見た途端に焦りながら目をそらした。


「ほら、そろそろ授業も始まるし行くよ」


「ああ……うん、わかったよ姉ちゃん、けど一つ言わせて欲しい……」


「なに?」


「もし結婚するなら、僕より年下の妹がいる人と結婚して欲しい。それが僕ののぞぉ痛たたたっ!」


私はおかしなことを言う弟の頭をおもいっきり掴む。……本気でこいつの将来心配になる。


「まぁまぁ~、足原さんもアイドル好きなんだから少しは優しくしてあげなよ~」


「か……関係ありません!」


ううっ……いいじゃないかい、アイドル好きでいいじゃない! 岡一さんカッコいいだから仕方ないじゃない! でも、それを知られたらサッカー部の副キャプテンとしての威厳が……と思った、その時。


「……えっ、足原先輩アイドル好きなの?」


「えーっ、意外ですー! かわいいですー!」


「うひゃっ、ギャップ萌えテンクス」


……ちょうど、偶然にもピンポイントにサッカー部の三人が、起きていた。


「へぇー、あの足原先輩が……意外と可愛いとこあるなー」


「先輩! 実は私もアイドル大好きですよー! 松くんとかすっごい大好きですー!」


「うひゃひゃっ、これやべー、足原先輩顔真っ赤でマジ可愛い」


……そんなことを三人は言ってくる……ふ、ふふふっ……!


「……ね、姉ちゃん……?」


「……頭宮、羽市、靴動」


私は、三人の名前を呼ぶ。


「は……はい、って……せ……先輩、なんか目が怖いんですが……」


「……今からちょっとグラウンド行こうか……身体動かしたいだろう……?」


「えっ……い、いや先輩……? あのちょっと……」


「わ……私たち、さっき怪我したばっかなのですがー……」


「うひゃっ、死亡フラグ来たわー」


三人は顔を青ざめさせている。けどもうアタシは自制が効かない。


「さぁ、行くよ……安心しな、三時間目までには間に合うだろうからね」


そう言って、私は三人のジャージのえりを掴み、保健室のドアを開ける。


「し……シュウト先輩、た……助けてください!」


「……えーっと……ああ、うん……その、頑張れ……御愁傷様……」


頭宮がシュウトに懇願していたが、シュウトは声を細々とそう言って拒否をした。


さてと、ちゃんと早く終わらせてやらなきゃねぇ。


私は涙を流す三人を連れて、グラウンドへ向かおうとした、その時。


「ん? おぉっ! 足原姉じゃねぇか! 元気か?」


目の前に、激堂ブンゴが笑って姿を現した。


「おおっ!? シュウトまでいんじゃんかよ! 仲良し姉弟だなぁお前ら!」


そう言って大きな声で激堂が笑う。相変わらず元気な男だね、こいつ。


「どうしたんだいブンゴ? 君が保健室来るなんて珍しいね」


「いやぁ、さっき中々気合い入った一年生と戦ってよ! せっかくだから見に来たんだよ! なんせ……あいつらは絶対強くなるタイプの連中だからな、今のうち再戦の約束しとこうと思ってよ! いっやぁ、ああいう発展途上な連中と戦うのもまた楽しいよなぁ!」


そんな風に、激堂は心から楽しそうに笑って言った。


恐らく、この学校で一番学園生活を楽しく送っているのは激堂なんだろうねぇ。


そう考えていると、激堂は私とシュウトを見て言う。


「よしっ! つう訳で足原姉弟! 俺と二対一でバトルしようぜ!」


……全く、私らを舐めてるのか、それとも単なる逆境好きか……それとも、ノリで戦おうと思ったのか……恐らく、最後のだろうね。


そんな激堂の態度に、シュウトは苦笑いして肩をすくめて『遠慮しておく』と言った。当たり前だ、今やれば四時間目まで眠ってしまうかも知れないしね。


そして、私はため息をはき、激堂に言う。


「何がつう訳だい、やらないよ。私は今から三人の記憶消さなきゃいけないんだから」


「記憶? まぁまぁ、んなことよか勝負しようぜ勝負! 特に足原姉、アンタとは純粋な殴りあいで勝ってみたいしな!」


「大した自信だね激堂。焦らなくても2ヶ月後の高戦会で真っ向から叩き潰してあげるから待っておきな」


私がそう言うと、激堂は白い歯を見せながら笑って言う。


「おう、ならそれまで更に強くなって待つぜ、足原姉!」


私はその笑顔を見て、微笑して保健室のドアを閉めて廊下に出る。


……暑苦しいぐらいに真っ直ぐな男だよ全く……まぁ、それはレンガとサクヤも同じようなものか。


ふふっ……本当にさぁ、こんなヤル気満々な奴らばっか見せられたら、あたしだってヤル気にならざる得ないね。


……2ヶ月後の高戦会が、楽しみだ。


そう思いながら、私は最早諦めたような顔をした三人を連れてグラウンドへ向かった。

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