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登校ぶっ飛び幕

「もー、心配して迎えに来たのに朝からほっぺたつねられるなんて思わなかったよ! ホームルームと一時間目の間の時間に朝の微妙な眠気を利用して僅かな眠りにつく作戦がレンガのせいでもう台無し!」


家を出た俺は、ヒカリと一緒に登校していた。そして朝っぱらからハイテンションのこいつの相手をするのは心底ダルい。


「かなりどうでもいい」


「どーでもよくない!」


などと言って、ヒカリはじだんだを踏む。実際にどうでも良すぎて何も思いつかん。


そして、歩いていると分かれ道のある道路まで来た。確かヒカリはこの左側からが学校方面だったな、俺は右だが。


「それじゃ、私の学校アッチだから行くね! ちゃんとさくやんに優しくしなきゃダメだよレンガ!」


そう言ってヒカリは俺の方を見ながら左側の道を走って行き……電柱にぶつかった。バカだ。


そして、頭を押さえながら改めて走って学校へ向かって行った。ちゃんと前見ねぇから、んなことになんだよ……


さてと、ヒカリも行ったことだし、ゆっくりと一人で歩いて学校行くか……


そんな安らいだ気持ちで、右側の道を歩こうとした時


「おーい!」


…聞き覚えのある声が聞こえた。


そして、俺は思い出す。


そういや……あいつと会ったのはこの辺だったような……


そんな回想もふまえて、もう声の主がわかっている俺は諦めつつ後ろを振り向く。


そこには……やはりというかやっぱりというか、黒日々サクヤ。そいつがいた。


「やぁ、おはようレンガ! 今日もいい朝だな!」


「そうだな、お前ともう一人のアホがいなきゃ素晴らしい朝だっただろうよ 」


「また何をそんな不機嫌そうな顔をしているんだ、あれか? ケンカに負けたのがそんなに悔しかったのか?」


「負けてねぇよアホ! 相手をズタボロにして勝ったわボケ!」


俺は黒日々に顔を近付けて怒鳴る。こいつは何で俺を負けが当然みたいな目で俺を見てやがんだ……!


「はははっ、済まない。でもツバが飛ぶから近くで怒鳴るのは勘弁してくれレンガ」


と言って来た。てめえが要らんこと言うからだろうが。


俺は軽く苛立ちながら歩き始める。黒日々も俺より少し後ろからついて来て、俺に話しかけてくる。


「ところで、今日の活動なんだが」


「活動? ああ、部員集めか」


「うん、私的には……まずは、一般の生徒から集めた方がいいかと思うんだ」


「ああ? どうしてだよ」


俺がそう言うと、黒日々はその理由を話し始める。


「恐らくレンガのアテ……というのは二年生や三年生のバトルバッチ持ちの人だろう?」


「ああ、そうだけどそれが問題あんのか?」


「レンガが戦いを挑み、相手をしてくれた人物が部活に加入していないのかな……と思ってな」


…なんだ、こいつそんな心配してたのかよ。やれやれ、そんなのは百も千も万も承知だっての。


俺は黒日々の心配の種を取り除くべく、話す。


「安心しろ黒日々、んなもん俺だってわかってらぁ」


「ん? そうだったのか? じゃあ私の取り越し苦労だったみたいだな……それじゃあ、入れる人物の目星はちゃんとついてたということなのか?」


「いや、ついてねぇよ」


「んん? じゃあどうしてそんなに自信満々なんだ?」


黒日々は全くわからないと言った顔で、俺の顔を覗きこんでくる。仕方ねぇ、教えてやるか。


俺は腕を組みながら言う。


「そりゃあ全員に、俺が勝ったら部活辞めて俺らの部活入れって言えば、あっさり決まるからに決まってんじゃねぇか」


俺は自信満々にそう言った。まさに、勝った奴は負けた奴に言うことを聞かすって奴だな。ついでにリベンジ出来て、一石二鳥だ。


そう思っていると、黒日々は呆れた顔でこちらを見てきた。


「なんだよ、なんか不満か?」


「レンガ、君はそんな適当な考えでアテがあるなんて言ったのか?」


「あぁ? 適当じゃねぇだろ、シンプルでわかり易く手っ取り早いだろうが」


俺がそう言うと、黒日々は頭を押さえてため息を吐く。こいつにこんな態度を取られると本気で馬鹿な考えをしてしまった気分になる。


そして、黒日々はこちらを見て言う。


「……レンガ、君は実に馬鹿だな」


「お前に言われたくねぇけど!?」


「いやいや、今回ばかりはそう言わせてもらうよレンガ、そんな条件で戦ってくれる訳ないじゃないか」


「どうしてだよ」


俺がそう聞くと、カラクリ刀の柄をこちらに向けて黒日々は言う。こっち向けんなそんなもん。


「レンガのように脊髄反射的に売られたケンカは買う。という人間ばかりではないんだぞ? いくらバトルバッチを付けているからといって戦ってくれるとは限らない。それも自らの在籍する部活の変更なんて、おいそれと承諾してくれるほど部に未練の無い人間なんて少ないと思うぞ? それに、私たち一年生が立ち上げた部活に入りたいと思ってくれる上級生も少ないだろう」


そう言われて俺は口をつむぐ。確かに、戦ってもらえなければこの条件に意味はねぇし、その可能性も高い、俺ら同様強くなりたいと思って部に入った奴らなら尚更だ。


「んじゃ、どうすんだよ、お前に案があるってのか?」


俺がそう尋ねると、黒日々はうーん……と言いながら考え、手をポンッとたたいて言う。


「やっぱり部活といえば張り紙じゃないか?」


「却下。面倒くせえ」


「そうかそうか、同意してくれるか、ありがとうレンガ」


黒日々はそう言って頷いていた。何答えを捻じ曲げてんだこいつは……!


「してねぇよ! つうかそんなんするなら最初に言った適当に声かけて入れとくでいいだろうが!」


「だからそれは駄目だと言っただろう! そんな乱暴なやり方で入れてもすぐに辞めてしまう!」


「あぁ!? 高戦会にさえ出られれば別にいいだろうが!」


「駄目だ! ちゃんとしたメンバーを集めるべきだ!」


この頑固女が……! と思いつつ、俺と黒日々と睨み合う。


「もう面倒だ……! 勝ったほうの意見を聞く、それでどうだ黒日々さんよぉ……!」


俺がそう言うと、黒日々はカラクリ刀の刃を出し、構えて言う。


「ああ構わないぞ……! それでレンガが納得してくれるなら、完膚なきまでに負かせてやる……!」


もう既に俺たちは学校の門の前に来ていたが……まだ遅刻するこたぁねぇはずだ。登校前に、敗北の借りは返させてもらうぜ、黒日々!


そして、俺と黒日々が互いに動こうとした


そのときだった。


ズゴォンッ!という、まるで大砲が発射されたかのような物凄い音が学校から聞こえた。


その音を聞き、俺と黒日々が学校のほうを見た瞬間。


門から何十人もの生徒が、まるでトラック……いや、バズーカ砲をぶっ放されたような感じで、ぶっ飛んできた。


俺は、それを見て唖然とする。な……何が起きたっつうんだ……!?


黒日々もそれを見て呆然としていたが、黒日々は学校内に入って行く。


俺もすぐに学校内に入る。そこには


ハチマキを巻いた筋肉質の男が、そこにただ一人立っていた。


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