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なんやかんやで

…目を覚ますと、そこは見たことある風景だった。どうやら病院っぽいな……中学時代以来だな。


身体を見ると、包帯が巻いてある、身体の節々が痛ぇ。


「よぉ、起きたかレンガ」


俺が身体の痛みがどれほどかを確認していると、誰かが俺に話しかけて来る。俺はそっちを見るとそこには、スーツをつけてるくせに、やる気なさそうに爪楊枝を口に挟む、若めの男がいた。


俺はそいつに見覚えがある。確かこいつはうちの学校の先生で担任の、鳥越フクロウだ。


「な……何でお前がいんだよ鳥越」


「何呼び捨てしてんだ、焼かれたいか」


そう言って、ライターを出す。脅しのつもりかこの野郎。


「まぁいい、俺が来たのはな、警告だ」


警告?とか思ってると、鳥越は俺の胸ぐらを掴む


「てめぇなぁ…あんな分かりやすいとこで大声出してケンカしてんじゃねぇよ! ただでさえウチは戦闘制度なんつうもんを組み込んでるから肩身が狭いっつぅのに、もしお前らを見つけた一般人が俺じゃなかったら俺に飛び火が来てたぞ…!」


「お……おおっ、悪かった、悪かったって鳥越」


俺はキレる鳥越の気迫に圧され、ついつい謝る。そうか、ここに連れて来たのはこいつか?


そういうと、鳥越は舌打ちして胸ぐらから手を放し椅子に座る。


「いいか? ケンカするなら通報されねぇように、隠れてやれ」


「おいおい、教師がケンカ認めていいのかよ」


「当たり前だ。ウチは元々そんなやつの集まりなんだ、うちの先生らもケンカなんて認めてる、校長なんか存分にやれとかむしろ煽ってた。世間には言えないけどな」


ああ……始業式ん時にいたあのジジイか、最初はイカれジジイと思ったな………なんせいきなりワシを殺せるぐらい強くなれとか言ってたしな、死にたがりのアホジジイかと思ったなあの時。


呆れながら思い出してると、鳥越は話を続ける。


「とまぁ、偉そうに言ってるが、既にうちに入って来る素行の悪い連中のせいで評判駄々下がりだがな、そして逆に素行良い生徒のおかげで評判が良くなる……全く、なんて不安定な学校だかな、いつ潰れるかもわかりゃしない」



とか言って溜め息を吐いていた、先生ってのも大変なもんだ。


そう思ってると、鳥越は立ち上がり、ドアの方まで向かい、こちらを振り向いて言う。


「明日までに治して学校来いよ、いや、治らなくても来い、わざと負けりゃ動けるまでには回復するだろうしな……おっと、連敗して成績ヤバいお前には酷なやり方だったな、んじゃ、大事取って休んどきな、俺は的上の方にも言って来る」


と言って鳥越は部屋から出ていった。あの野郎、馬鹿にしやがって。


いつかあいつ殴る………とか思っていると、ドアからノックの音が聞こえる。誰だ?


まっ、誰だって構わねぇか。俺は入っていいぜと気だるげに言う。


するとドアがガチャリと開き、そこに入って来たのは黒日々だった。


「よう、どうしたんだよ」


「どうしたんだよじゃないだろう、私は君に呆れるぞ…」


とか言って、本当に呆れた顔をしてきた。既に呆れてんじゃねぇか。


そして黒日々は椅子に座って言う。


「鳥越先生がたまたま二人を見つけたから良かったが、普通こんなになるまで戦わないだろう」


「けっ、あのハゲがさっさと諦めねぇから悪いんだよ」


と言うと黒日々は溜め息を吐く。さっきから鳥越といい、溜め息ばっか吐きやがって。


「あまり無茶ばかりしてやるなレンガ、リンカちゃんやヒカリがすごく心配していたぞ?」

俺はそれを聞いてハッとする。


…そういや、前も大怪我した時にやかましい程に泣かせちまったな、あの馬鹿二人を。


だが、俺はそんな考えを打ち消す。だからなんだってんだ、と。


「関係ねぇよ、俺はいつだって俺のためにやってきた、わざわざあいつらの事を気遣うならケンカなんて一切しねぇ真人間になってらぁ」


と、黒日々に言い切った。


どうせ変に真面目なこいつのことだ、なんか色々言ってくんだろう、それとも愛想尽かすか?


面倒くせぇな…とか思いながら、あいつを見ると


…納得するように、静かに笑っていた。


「ふふっ…レンガらしいな、その回答は」

…などと、訳のわからんことを言ってきた。


「あぁ?バカにしてんのかお前?」


「バカになんてとんでもない、君らしいと思ったんだよレンガ」


…こいつは本当にわからねーことばっか言って来やがる、頭がごちゃごちゃする前に俺は黒日々に言う。


「まだるっこしい言い方すんじゃねぇよ、つまり何が言いてぇんだてめえは」


と言うと、黒日々は顔をズイッと近付かせ、右手の人差し指を俺の目の前に向け、ちょっと睨むように言う。ちけぇよ…!


「素直に言え、ということだよレンガ」


はぁ?というと、黒日々は続けて言う。


「全く…本当はヒカリやリンカちゃんに対しても悪いだとか思っていたんだろう? でも自分の意見の大部分だけ言って………例え矛盾していても、それをちゃんと言えばいいじゃないか、私はそんな言い方でも怒らないぞ?」


…何を言ってんだこいつは?


そして、黒日々は手を差し出して言う。


「まぁでも、私にはわかっていたからな、君はひねていても優しさがあるということはな。さっ、ヒカリやリンカちゃんのところに行こう、顔を見せたら二人も喜ぶぞ?」


と言って、黒日々はニコリと笑った。


…そうか、こいつは俺をわかってくれてたんだな。


俺は黒日々のそんな優しさに感銘を受け…差し出してその手を


力の限り、叩き払った。


「な…何をするんだレンガ!」


「だぁーっ! うっせぇ! 何を知ったように言ってんだてめえは! 勝手に俺の性格決めんなアホ! つうかてめえに何を言われようが構うか!」


そう、感銘なんて受けるか! 全く見当外れなこと言って来やがってこのアホは…!


そんな俺の顔を見て、黒日々は焦るように言ってきた。


「なっ! 私の言葉は君に届かないというのか!? この数日で親友になった私の言葉を!」


「だぁから誰が親友だボケ! よくて悪友だてめえは!」


「あ……悪友!? まるで私が君に悪影響を与える友人みたいじゃないか!」


「実際その通りだろうがこのボケ!」

そして、そっから黒日々と俺は言い争いをし始める。


…まっ、後でこいつの言う通りあいつらにちゃんと顔だしてやんねぇとな。


そう思いながら、俺は黒日々の頬を引っ張ってやった。覚えとけよ、チクショウ。

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