ともだちのトモダチは友達
「行っちゃったね~」
レンガの幼なじみさんの明泊さんは、ちょっとのんきそうな声でそう言った。
「せっかくのハーレムポジションだっていうのに、勿体ないよね! 美少女三人もいるって言うのに!」
私は明泊さんの言葉に対して苦笑する。すごく明るい人物だなぁと、ぼんやりと彼女を見ていると、彼女は私に話しかけてくる。
「で、黒日々さんはどうやってあのレンガと友達になったの?」
「え……あ、えっと………あの学校で初めて戦ったのがレンガで、それで………戦ったせいかもしれないけど、気軽に話しかけてしまいやして………それから喋るようになったのです」
私はしどろもどりになりながら明泊さんに話す…ううっ、なんで私はこんなにトークスキルが無いんだ…口調もバラバラになってしまってるし。
私は自己嫌悪しつつ、明泊さんの返答を待つ。すると、妹さんと明泊さんは驚いた表情をして聞く。
「戦ったって、あのレンガと!? 勉強で戦ったとかじゃなくて!?」
「う…うん、文字通りの意味です」
私がそう返すと、二人は怒った顔をして言う。
「さいてーきちくやろーだな、あいつー」
「全くだよ! 昔からケンカーケンカーって言ってたけど、まさか黒日々さんみたいな女の子にまで手を出すなんて……!」
「ち……ちょっと待って欲しい! 二人は誤解をしている!」
二人はへっ?と言ってこっちを見る。
「レンガに戦おうと言ったのは私からだし、それに対してレンガは全力を尽くしてくれた。だから、レンガは悪くないんだ明泊さん、妹さん」
私がそれを言うと、二人は安心したような表情をする。
「なんだぁ、レンガがいきなりケンカ売ったとかじゃないんだね、良かった良かった。そう言えばそういう高校だもんね、黒日々さんとレンガの高校は」
どうやら納得してくれたらしい、良かった。
その後に、妹さんが続けて言う。
「しょーじき、学校でぼうりょくのせいとうかなんておかしな話だけどなー」
「うん、私もそれはちょっと思うよ、でも」
私は言葉を繋げて言う。
「私はそんな高校に来て良かったと思ってる、強い人と戦えるそんな場所が私は……すごく、好ましいと思っているんだ」
本当、女の子らしくないな私は。
私の年齢の女性はみんな恋愛や部活などに興味を持って青春を送ろうとしているのに、私は相変わらず強い人と戦うことばかり。きっと、理解されないんだろうな、おかしな人だと思われるんだろうな。
そう思っていると
「ふふふっ…………あはははははっ!!」
突然、明泊さんは声をあげて笑った、ど………どうしたんだろう……?
そう思って見ていると、明泊さんは笑顔でこちらを見る。
「わわっ、ごめんねいきなり笑っちゃって。でも、なんかレンガと友達になれたのなんかわかった気がするよ!」
「あ、いや……友達というか、私が勝手に友達だと思ってしまっているところもあって……」
「大丈夫大丈夫!! そんなことないない! レンガって嫌いな相手とは会話もしたがらないから! むしろ中学の時から私以外の女子には話しかけられもしなかったから内心喜んだりしてるかもよ~?」
明泊さんはいたずらっ子みたいな顔をしながら笑う、表情がコロコロ変わって可愛い人だな明泊さんは。
明泊さんは、ニコニコ笑いつつ話を続けて言う。
「なんかさ、黒日々さん…………ううん、サクヤはさ、レンガと似てるんだよ」
「私が………レンガと?」
「ヒカリおねーちゃん、それはさくやさんにしつれーだぜ」
「はっ! たしかに! ごめんねサクヤ! サクヤの方が全然可愛いし素敵だよ!」
私はそう言われて、顔をうつむかせてしまう………か…可愛いと言われると恥ずかしいな……
明泊さんは更に話を進めて言う。
「なんていうかさ、性格とか見た目は全然似てないんだけど一緒なんだよね、考えが」
「…つまり、強い人と戦いたいというところがか……?」
うむ! と言って明泊さんは頷く。
「レンガって小学校、いや幼稚園の頃からかな? 毎回毎回強そうな人に向かって行ったりしてさ、もー昔っからのケンカ中毒! 小学校の時に私がいじめられてた時に助けてくれたんだけどさ、その時の言ったことと言ったら…!」
「な…なんて言ったんだ?」
「最悪だよ! 『あ、お前いたの?』だよ! 助けたんじゃなくて、単にいじめっ子が強そうだからケンカ売ったとかそんなん! 私は眼中になしだよ!」
なんかレンガらしいな……私は苦笑いしつつも話を聞く。
「でも、それからいじめられる事もなくなったから、感謝してるんだけどね。でも今思えばあれは今のツンデレ属性の前触れだったのかもとか思うとさ、ちょっと可愛いとこあるじゃんとか思うけどね~!」
「ふふっ、確かにそれは言えてるかも」
私は明泊さんの笑顔を見てクスリと笑う、妹さんもクスクスと笑っていた。
「話ずれちゃったけど、そんなレンガにサクヤは似てると私は思ってる、勿論レンガみたいにめちゃくちゃなケンカの売り方なんかしてないと思うけどね」
レンガに…似ているか。確かに、そうかも知れないな。
だからこそ、私は彼に話しかけたのかも知れない、きっと仲良くなれると、そういう確信があったからあの日、レンガに話しかけたのかも知れない。
けれど、今考えてみれば、確かにレンガの言う通りおかしな行動をしていたのかもな……
自分の行動を少し見つめ直す必要があるかなと思っていると、明泊さんはニコリと笑みを見せて言う。
「まぁ似てる似てないはさておいて。レンガはぶっきらぼうで怒りっぽい奴だけど、根はいい子だからさ、これからもアイツをよろしくねサクヤ」
私はそんな彼女の言葉にああ、と頷いた。
いい幼なじみを持ったな、レンガは……
そう考えていると、明泊さんは意地悪そうな顔をする。
「もちろん、彼女になっちゃうのもヒカリさん的には全然アリだからね~!」
「か…彼女!? って、あ…明泊さん!?」
「明泊じゃなくてヒカリでいいよサクヤ、ていうかヒカリって言わなきゃ絶対ききませ~ん」
わざとらしく顔を背けながら、明泊さん……いや、ヒカリは笑いながら口笛を吹く。
「ていうことは、さくやおねーちゃんが私のおねーちゃんにー? おー、それはさいこーだぜー」
「り…リンカちゃんも便乗してからかわないでくれ!」
二人はそんな私の反応を見て笑う、私は自分の顔が赤くなるのがわかる、むぅ…そういう方面でからかわれるのは私は苦手なんだ。
「あははっ! 冗談だよさくやん、レンガと付き合うんなら猛獣使いの資格得るぐらいしなきゃ大変だもんね、まっ! そんなことより!」
ヒカリはこちらに向かって手を差し出して言う。
「改めて、よろしくねさくやん!」
私は明るく差し出された手を握って、真っ直ぐとヒカリを見て言う。
「うん、こちらこそよろしくヒカリ」
私は手を握ると同時に、嬉しさを感じた。
そして、私に手を握られたヒカリは顔をこちらを見て言った。
「ふぁ~、友情を確かめあった後の握手ってテンション上がるよね!」
「う…うん、嬉しすぎてちょっと私も元のテンションがわからなくなって来そうだ…!」
「うぁー、ずるいぞどうねんだいどうしでー!」
そんな可愛い怒りかたをするリンカちゃんを見て、更に和みそうになった。その時。
「なぁなぁ、そこのおじょーさんたちー」
「ちょっと、俺らと遊び行かなーい?」
それぞれ個性的な髪をした、四人の男性がこちらにニヤニヤしながら現れた。




