ブレーク幼なじみ幸運日
「久しぶりだねマイ幼なじみ! 友達出来たかい!? 私? もちろん出来たよ!! めっちゃ良い子で、テニスとかめっちゃ強い子だよ!! あっ!! さっきレンガのお母さんに玄関開けてもらったんだけど、まだまだ若いよねー!! 二十代って言えるぐらいに!! それもおしとやか!! レンガのお父さんは本当いい人と結婚したよね!! 私も男なら絶対ほっとかなかったね!!」
「長々話してるとこに水指すが、さっさと帰るかリンカんとこ行け、全力でウゼェ」
とか言うと、シュンとした顔をし
「…うん、わかった……」
立ち上がって部屋を出て行く。
「…とか言うと思ったかな!? 甘い甘いぞレンガくん! 出ていきませっ!」
バタンッ、と俺はドアを閉めてアイツの言葉を遮った、さてカギを閉めるか。
「っておいこらぁー!! 何で閉めたぁー!!」
そしてまたドアを開けて来た、こいつはローテンションってのを知らんのか。
「もう出てけ、案外マジで」
「あまりにも辛辣過ぎやしませんかそれ!?」
俺はベッドに座り、腕を組んで言う。
「いいか? お前はもう高校生だ、わかるな?」
「うんうん、あっ! もしかして……異性として意識し始めてるとか? ついにレンガもそういう可愛い心に目覚めましたかー!」
「頭パー女に惹かれるほど俺は落ちぶれてねぇ」
「落ちぶれってちょっと酷くないですかそれ!?」
さっきから無駄にオーバーリアクションする頭パー子の言葉を無視しつつ、俺は会話を続ける。
「それもお前は女、既に幼なじみとしてウチに来る期間は終わってんだよ、リンカと遊ぶならともかくな、わかったらリンカんとこ行け」
「それが世間的な流れってやつ?」
「ああ、そうだ」
それを聞いたヒカリは、座り込んで胸を張って言う。
「なら私は! そんな世間一般の常識を打ち破るスーパー幼なじみだね!!」
「いや、面倒でうるさくて邪魔の三拍子が揃った最悪の幼なじみだ」
「えっ!? 何その悪の幼なじみみたいな三拍子!? あ、いやでもそれもレアくていいかも…」
とか言いながらヒカリはアゴに手を置きながら考える。
本当にこいつは昔から変わらねぇ、底抜けのアホでうるさくて面倒なヤツだ。
…ただ、悪いヤツじゃねぇってのは知ってる。
まぁそれだけだけどな、後はこいつのいいとこなんて一つも知らねぇ、知る気もねぇけどな。
ため息をつきつつ、そう思っているとヒカリは笑って言ってくる。
「そんなことより、そんなことよりさ! 買い物行こうよレンガ!」
「俺はさっきもリンカに言ったが、行かねぇ。俺は家で寝とくんだよ」
「そんなこと言わずにさ~! ほら、大好きなアニメのおもちゃ買ってあげるから!」
「俺はガキか!!」
「うん!」
俺は間髪入れずにデコピンをヒカリのデコに食らわせた。
「いた~!? 頭痛起きた時よりいた~!?」
「ほう、そりゃ何よりだ」
額を押さえながら頬を膨らませつつ、ヒカリはこちらを睨んで来る。
「も~! レンガはもっとラノベとかいっぱい読むべきだね! 女の子の扱い方って言うのがまるでなってないよ~!! 暴力はんた~い!」
「そうだそうだー!」
ヒカリの言葉に便乗するように、ドアを開けてリンカも言ってきた。どっから降ってわいて来やがった、もう知らんって言ってなかったかお前。
「って、ひゃっほー!! 可愛い可愛いリンカちゃん登場ですかー!? おっはよー!!」
ヒカリはリンカに抱きつき、頬を刷り寄せる。そんなヒカリの行動に照れながら、小さく「おはよう」と言っているのが聞こえた、バカ同士仲良いよなこいつらは。
待てよ? ヒカリとリンカは買い物に行きてぇと言っていた、ならこいつら二人で行かせりゃいいじゃねぇか。
そう思った俺は、じゃれ合うバカ二人に向かって言う。
「ちょうどいい、お前ら二人で買い物行ってくりゃいいじゃねぇか、そうすりゃ何の問題もねぇ」
俺がそんな風に言ってやると。
「「却下」」
とか声を合わせて言って来やがった………つうか最近似たようなやり取りした気がすんぞオイ…!
嫌な予感が頭によぎりつつも、俺はその理由を聞くことにする。
「何でだよ!」
「ヒカリおねーちゃんとはすでに一緒に行くやくそくしてたのだー」
「そうそう! それでレンガも連れて行こうってことになったんだよ!」
などと言って来やがった。
「何で俺を連れてく必要があんだよ、面倒くせぇ」
俺が頭をかきながら聞くと、ヒカリはニンマリと笑って言う。
「それはね、本日お一人様一つ限定の!! ファンシーぬいぐるみシリーズを買いに行くためにだよ!!」
「よし、お前ら出てけ」
「うん、レンガのそんな態度はもっともだと思うよ?ファンシーぬいぐるみシリーズについて何も知らないものね、知らない話されてもつまんねーよって思うもんね」
俺の出てけ発言を全く違った理由で考えているこのバカをとっとと追い出そうとした時、リンカが話し出す。
「お願い、ぜひとも今回の三種のどーぶつシリーズが欲しいのー」
「三種?」
そんな疑問の声をあげると、ヒカリは解説し始める。
「そうそう! ファンシーぬいぐるみシリーズのうさちゃん、ねこにゃん、わんわんの三種が今回限定発売なんだけど、全部揃えるには三人で行かなきゃ駄目だからさ、是非レンガにも行ってもらいたいなーって!」
なるほどな、今回の買い物はリンカがヒカリに頼んだって訳か、道理で妙にタイミング良く二人して買い物行こうだなんて言った訳だ。
「つうか、なんで後一人を俺に選んだ、他にもお前やリンカの友達がいるだろうが」
俺は二人に問うと、リンカは顔を背けつつ
「だ………だって、このとしになってぬいぐるみ集めてるなんて………い……いえない…」
と言った。いや高校生になってもそれを語ろうとするバカもいるから気にすることねーと思うけどな。
対して、ヒカリはあっけらかんとこう言った。
「勿論! レンガが可愛いぬいぐるみ持ってるって言うミスマッチ見たくてに決まってるよー!!」
「そうか、テメェは後でしばく」
俺はまたもため息をつき、どうするか考える。
正直なとこ、かなり面倒だが、さっさと行ってこのダブルバカから解放された方がいいと考えた俺は、舌打ちして言った。
「ったく、わぁーったよ。行きゃいいんだろ行けば、マンガ買うついでに行ってやるよ、あくまでおまけにな」
俺がそう言うと、二人は目を輝かせてハイタッチをする。
「やったー!! レンガがデレたよリンカちゃん!! やっほー!!」
「いえーいー、つんでれんがさいこー」
そして、明るい声でふざけたことを言っていた浮かれたバカ二人にげんこつを食らわし、その限定品とやらが売ってる場所に向かった。