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8/12

異世界で、胸キュンしちゃいました

甘野芣婭(17歳)


マダムとシュバルトお兄さんに抱きつかれながら、屋敷の中に入ると執事さんとメイドさん達に出迎えられた。


「お帰りなさいませ、芣婭様!!!御無事で何よりです!!!」


「体が血で汚れていますね、お風呂の準備は出来ておりますから。今日はゆっくり、休みましょう」


「え、ええ?ど、どしたの?みんな…」


一斉に声をかけられ、誰に返事をしたら良いか分からない状況だ。


「こらこら、貴方達。一斉に声をかけたら芣婭さんが混乱するでしょ?シエサ、芣婭さんをお風呂に入れてきて」


マダムの命令を聞いたシーちゃんが、芣婭の方に向き直る。 


「かしこまりました、奥様。芣婭様、行きましょう」


「あ、うん…、ふわぁ…」 

 

「今日は早めに休みましょう、お疲れになられたでしょう?」


「めちゃくちゃ眠い…」


シーちゃんと話していても、めちゃくちゃ瞼が重い。

あー、だっるいなぁ…。


「芣婭、こっち向け」


「へぇ?」


ベロちゃんにクイッと顎を指で持ち上げられ、まじまじと顔を見つめられる。


「熱あんじゃねーか。大丈夫か、芣婭。抱えて部屋に運ぶぞ」    

 

「えー、あー、ありがとぉ…」


熱と言われたら、なんか熱な感じがしてきたな。


今日は色々あったから疲れたのかなぁ、色々あったもんなぁ…。


目の前で人が腕を斬り落とされるのも初めて見たし、血だって初めて見た。


馬鹿な芣婭でも、異常な光景だったって理解出来てる。


みんな、芣婭を助ける為にしてくれた事だって分かってる。


そんな事を考えていると、ベロちゃんに軽々と抱き上げれたまま階段を登り始めた。


「おい、眼鏡。医療魔法を芣婭に、もう1回使え」

あぁ、勿論だ。医師の手配もさせるよ」


ベロちゃんとシュバルトお兄さんの会話を聞きながら、芣婭はいつの間にか眠ってしまっていた。


*** 


甘野芣婭が自分の腕の中で眠った事を確認してから、シュバルトに向かって口を開く。  


「それから、あの男と芣婭二度と会わせるな。芣婭に会いに来ても、俺等が対応する」


ベロちゃんの言葉を聞いたシュバルトは、驚いた表情を浮かべたまま答えられなかった。


甘野芣婭が危険な目に遭ったのも事実で、体調までも崩している姿を見たら、何も答えられなかった。 

     

「お前等が芣婭の事を可愛がり始めてるのも、見てれば分かる。芣婭の事を大切に思うなら、答えは簡単に出るだろ」


そう言って、ベロちゃんは甘野芣婭を抱き上げたまま階段を登り始める。


ケロちゃんとシエサの2人も、ベロちゃんの後を追うように階段を登り始めた。


「貴方、今は芣婭さんの体調を優先させましょ?きっと、初めて人が斬られる瞬間も見たと思うの。本人が自覚していないだけで、精神的にもきてると思うの。芣婭さんの頬にも服にも、返り血が付いてたから」


「僕達の娘の安全が第一だからね。ロザリア、養子縁組の書類を取りに行かないか?」


「え、良いの?貴方…」 


「うん、僕も君も芣婭さんの事を可愛いと思っているだろう?今日1日、芣婭さんの事が心配で仕方なかったし、何より芣婭さんのあの言葉を聞いたら…」 

  

「あら、私と同じ事を考えていたのね?ふふ、嬉しいわ」


シュバルトとロザリアが話をしていると、年配の執事長グロービィが慌てた様子で2人に駆け寄る。


「旦那様、奥様!!!大公子殿下とカーディアック家の専属の魔法医師メディサンドゥーマージがいらっしゃいました!!!」


「「えぇぇ!!!?」」


執事長の言葉を聞いたシュバルトとロザリアの声が重なった。


魔法医師メディサンドゥーマージとは、治癒魔法で治療を行う医者の事。

 伝統的な医学と魔術が融合した技術を使い、一般の医療では治せない原因不明の病を治療する専門家*

   

「分かった、大公子殿下は僕が対応するよ。ロザリアはグロービィと共に魔法医師を芣婭さんの所に、お連れしてくれ」 


「かしこまりました、旦那様。大公子殿下と魔法医師のお二人を、お出迎え致します」


シュバルトの指示を聞きいたグロービィは、すぐに玄関扉を開ける。


キィ…。 


ギルベルトの隣に立っていた小柄な男の容姿を見て、グロービィは目を奪われてしまう。


血の通っていない色白の肌、長い睫毛の中から見えるイエローダイヤモンドのような瞳、右側が水色で左側が黒のツートンカラーの髪、童顔に合うフリルの付いた白シャツが似合っていた。


男はサファイアが装飾されたピアスを揺らしながら、グロービィに声をかける。


「僕の顔に何か付いてますか?」


「あ、いえ!!!すみませんっ、何も言わずに見てしまって」


「いや、僕の顔を見たら、大体の人間は貴方のような反応をしますから。見慣れてますので、問題ありません」


「は、はぁ?あ、すみません、どうぞ、旦那様がお待ちしておりますので」


男の返答を聞いたグロービィは、首を傾げながら頭を下げ、2人を屋敷の中に招き入れた。 

  

「公爵、今日はすまなかった。俺の不手際で、芣婭に怪我をさせてしまった」


そう言って、ギルベルトはシュバルトに深く頭を下げる。


「頭を上げて下さいっ、大公子殿下!!!芣婭さんの怪我は治癒(ヒール)で、手首の腫れは治りましたのでっ。ただ、熱が出てしまって…」


「熱が出た?芣婭は大丈夫なのか!!?」


ギルベルトは慌てて、シュベルトに近寄り、ガッと肩を強く掴む。


「い、今はっ、部屋で休んでもらっていて…っ、」


「ギルベルト様が慌てるなんて、珍しいな…。ますます、興味が出てきましたよ。ギルベルト様、落ち着いて下さい。そのままの勢いだと、公爵の肩が折れます」


「公爵、すまない」


男の言葉を聞いたギルベルトはすぐにシュバルトの肩から手を離した。


「だ、大丈夫ですよ。大公子殿下、この方が…」


「あぁ、自己紹介がまだでしたね。申し遅れました、僕の名前はミラ・グレイバーツ。グレイバーツ家の次男です」


「グ、グレイバーツ!?あの、代々宮廷医師を務めている名家の!?」


「まぁ、そんな感じですね。父に代わって、今は兄が宮廷に務めていますよ。僕にも話は来たんですけどね?話が来る前に、ギルベルト様から声が掛かっていたので、断りましたけど」


ミラはケラケラと笑いながら、シュバルトの問いに答えた。


グレイバーツ家は貴族社会の間で、知らない者はいない魔法医師の家系である。


伯爵の位だったのだが、技術を認められて数年前に公爵の位を徐爵(じょしゃく)され、公爵家となった。


「俺は公爵と話がある。ミラ、芣婭の診察をしてきてくれ」


「分かりましたけど、用意した花束は渡さなくて良いんですか?あのピンクの…」


「良いから、行け」


「分かりましたよー」


ギルベルトに強く言われたミラは、グロービィと共に甘野芣婭の部屋に向かって行った。


***


ミラ・グレイバーツ(20歳)


ロールベルク家の屋敷に入った時から全身に悪寒が走り、今も鳥肌が立ち、妙な魔力を感じていた。 


ギルベルト様の口から聞きなれない女性の名前が出た時は、正直驚いたな…。 


コンコンッ。


「奥様、魔法医師様をお連れ致しました」


執事長が扉をノックすると、芣婭と言う名前の女性の部屋の扉が開き、中から出て来たのはシエサと公爵夫人のマダムロザリアだった。


「初めまして、公爵婦人。ギルベルト様のから、芣婭嬢の診察をするようにと(めい)を受けて参りました。ミラ・グレイバーツと申します」


「グ、グレイバーツ!?早速で申し訳ないのだけれど…、私の娘の診察をお願いするわ」


公爵婦人の言葉を聞いて、疑問に思ってしまった。

娘? 


ローベルク家には子供がいなかった筈だが…、芣婭嬢はローベルク家の養だったのか?


「分かりました、失礼しますね」


そう言って部屋に入ると、謎の魔力の正体がすぐに分かった。 


芣婭嬢と思われる女性が眠っている側にいる黒髪の2人組の男から、威圧的な魔力を感じ取れる。


2人の容姿は人間離れした美しさで、苺のように真っ赤な人瞳さえも美しい。


男達は僕の事を見定めするような視線を送ってくるが、僕は気にせずにベットで眠る芣婭様に近付く。


成る程、これはギルベルト様が気に掛ける訳だ。


目を瞑っていても、この女性が可愛らしい事が見て分かるし、白い肌に映えるピンク色のふわふわの髪は、眠っている人形のよう。 


ベットサイドに置かれた椅子に腰を下ろし、持って来た鞄を開け、中から魔力の流れを見れる魔法道具の眼鏡を取り出す。


「少し、失礼しますね」 


眼鏡を掛けてから芣婭様の右手首に触れ、脈と魔力の流れを確認する。


魔力の流れは体内に流れている生命エネルギーと同じように流れ、1つの属性持ちなら、その属性に沿った色のエネルギーが体内に流れている。


火属性なら赤、水属性なら水色と言って、複数持ちならそれぞれの魔力エネルギーが流れているが…。


僕が知っている中で複数持ちは、早々いるものじゃない。 


それに、手首にある黒い三日月のタトゥー。


これがある人間は悪魔と契約した者に浮かび上がる刻印だ。 

 

「へぇ…、面白いな」


それと彼女の中に流れる魔力の流れを見て、思わず呟いてしまう。 


芣婭嬢の体内には莫大な量の闇属性の魔力と、見た事がない色の魔力の2つが体内を駆け回っている状態だった。


成る程、幼少期に済んでいる筈の魔力形成が今、行われているのか。 


「芣婭さんの容体はどうなの??かなり悪いの!?」


「発熱の原因は、芣婭嬢の中で魔力エネルギーが暴走している所為ですね」


「魔力エレルギーが暴走?どう言う意味なの?良くない事なのよね?」


「幼少期に誰しもが通る、体内の中で魔力が形成される過程の中で起きる発熱ですね。普通なら5歳ぐらいに、魔力が体内で作られますが…。芣婭嬢の場合は、魔力が形成されるのが遅かったようですね」


公爵婦人に説明しながら、鞄の中から解熱剤と回復薬を出す。 


「魔力形成で起こる発熱は、一日二日で治りますよ。薬を出しておきますので、芣婭嬢に飲ませて下さい」


「わ、分かったわ!!!」


「また、何かありましたら連絡下さい。今日の所はこれで失礼しますね。明日また、芣婭嬢の診察に伺います」


「そうしてくれると、助かるわ。シエサ、魔法医師様をお送りして」


公爵婦人の指示を聞き、シエサは「かしこまりました」と一言返事をする。


診察を終えて帰る準備をしていると、黒髪の2人組の男は心配そうな表情を浮かべながら、芣婭嬢の頭を優しく撫でていた。


「行きましょう、魔法医師様」


「君に様呼びされるのは、未だに慣れないなぁ…」


「私はもう、黒騎士団の一員ではありませんから」


「そんな事、ギルベルト様は気にしないけどな」


シエサと他愛のない話をしながら、芣婭嬢の部屋を出ようとした時だった。


「ギルベルト君が来てるの?」


「芣婭っ、寝ていないと…」


「大丈夫だよ、ケロちゃん。ギルベルト君は、ここに居るの?」


舌足らずな言葉が聞こえ、振り返ると大きなレッドピンクの瞳が僕の事を捉えていた。


ギルベルト様が大事にしたくなるのも分かるな、これは…。


目を閉じていても美人な事は予想出来ていたけど、目を開けた姿は絵本の中に出て来る姫様だ。


今まで、ギルベルト様に女の噂が出てこなかったのは、面食いだったんじゃないかって思えてしまう。 


「はい、ギルベルト様と一緒に来ましたから…って、え!?芣婭嬢!?」


芣婭嬢がベットから飛び起き、ふらふらしながら部屋を出て行ってしまった。 

 

***  

 

ギルベルト・カーディアック(21歳)


ミラの背中を見てると、公爵が声をかけてきた。 


「大公子殿下、客室に案内しますよ」


「いや、ここで良い。皇帝の命令でゴブリン狩りに行く事になってな、コンラット達も連れて行かないければならない。今回の誘拐の事もあるから、コンラットの部下を2名、芣婭の護衛に付ける」


「黒騎士団から2名も…、宜しいのですか?うちの騎士達も付けようと思っていたのですが…」


「俺が留守の間に、芣婭に何かあっては困る。俺が…、安心したいだけなんだがな」


公爵と話していると、連れて来た執事が芣婭に用意したピンクの薔薇の花束を持って来る。 


「ギルベルト様、お持ち致しました」


「あぁ、これを芣婭に。帰りに渡そうと思っていたんだ」


執事からピンクの薔薇に花束を受け取李、公爵に手渡しをする。


宮殿からの帰り道で、馬車の窓から見えた花屋の前で咲いているピンク色の薔薇が目に入った。


俺は無意識に馬車を止めて、花屋にある限りのピンクの薔薇の花束を作らせ、ミラを連絡鳥を使って呼び出し、気が付いたら公爵家の向かってた。


芣婭の怪我の具合も心配だったが…、ゴブリン討伐に言う前に芣婭に会いたかったんだ。 


公爵家に行った所で、ケルベロスが芣婭に会わせてくれない事は分かってる。


だが魔法医師のミラなら、芣婭に会える。


帰りの際に、ミラの様子がどうだったか聞けばいい。


芣婭が…、俺に会いたくないかもしれないから。  

 

「顔を見ていかれないのですか?」


「…」


俺が言葉に詰まっていると、騒がしい音が2階から聞こえてきた。     


ドタドダドタドタッ!!!


「芣婭嬢、お待ち下さい!!!寝ていないと!!!」


「芣婭様っ!!!」


2階から慌ただしい足音、ミラとシエサの叫び声が聞こえて、階段の前に部屋着を来た芣婭が現れる。  


顔を真っ赤に染め、涙目になっている芣婭が、俺の顔を見ながら口を開く。


「帰っちゃだめだよ、ギルベルト君っ。芣婭の事を置いて、どこに行くの?」


「っ…」


芣婭の言葉を聞いたら、俺の中にあった不安なんかすぐに吹き飛んだ。


俺は急いで階段を登り、今にも泣き出しそうな芣婭の体を引き寄せ、強く抱き締めた。


ギュッ。


この女は悪魔だ、俺の心を簡単に掻き乱す悪魔だ。

「芣婭を置いて、消える訳ないだろ」


「嘘、芣婭の部屋に来てくれなかったじゃん」


芣婭はそう言いながら、俺の腕の中で静かに泣き出す。  


俺に交際を申し込んで来んできた女達が、俺に断られて泣いてる姿を見ても何も感じなかった。


寧ろ、面倒にしか思わなかったのに。


それなのに芣婭に泣かれると胸が痛いのは、何故だ?  


「それは…、芣婭が俺に会いたくないんじゃないかと思って…。すまない、不安にさせる気はなかったんだ。だから、泣かないでくれ」 


「泣いてないもん」


「こんなに目を赤くして、泣いてないなんて嘘だ。あぁ、目を擦るな」


目を擦ろうとする芣婭の手を止め、優しく指で撫で取る。 

 

「ギルベルト君が悪いんだよ」


「あぁ、俺が悪い」


「ギルベルト君が、芣婭に会わずに帰ろうとするからぁ…っ。もう、会えないのかなって…っ」

 

「何で…、そんな可愛い事を言うんだ?芣婭」


そんな可愛い理由で、お前は泣いていたのか?


俺に会えないと思ったから、熱が出てるのに俺に会いに来たのか?  


「はぁ…、うちの芣婭、可愛い過ぎませんか」

「あの男の為に泣いてるってのが、腹つがな…。おい、芣婭が不安にならねーようにしろ」


ケルベロスの2人が芣婭の頭を撫でながら、ベロが俺に芣婭に会う事を許可するような言葉を吐く。 


「うぅー、頭も痛いし、目も痛いし…。ギルベルト君に面倒臭い事言って、最悪過ぎるぅ…」


「そんな事を気にする必要はない。もっと、我儘(わがまま)を言ってくれ」


「いやいや…、それは申し訳な…、ひゃっ!?」


「軽過ぎるな」


芣婭の体を抱き上げてみたら、予想以上に軽くて驚いてしまった。


「ミラ、芣婭の発熱の原因は何だったんだ」


「幼少期に起きる魔力形成の影響による発熱です」


「分かった。お前は先に帰っていろ」


「へ?」


俺の言葉を聞いたミラは驚いているのか、目を丸くさせながらキョトンとしている。


「それは良いんですけど…。ギルベルト様、明日からゴブリン討伐に行かれますよね?それも早朝に…」


「1日睡眠を取らなくても何も問題はない」


「まぁ、確かに…。ギルベルト様は、睡眠時間が短くても平気なタイプでしたね。分かりました、僕は先に失礼します。明日また、芣婭嬢の診察に伺いますから」


そう言って、ミラはシエサに連れられ、門前に止められている馬車の元に向かって行行く。


芣婭が俺の顔色を伺いながら、尋ねてきた。


***


甘野芣婭(17歳)  


熱で頭がぼーっとしてる所為なのか、芣婭かなり大暴走したよね!?


ギルベルト君に抱き締められて嬉しかったけど、わがまま言って泣き出すとか最悪過ぎる!!!


帰っちゃうんの嫌で、思わず言っちゃったんですけど!!?


マジ、勘弁してよ芣婭!!!


何なら、芣婭が病人だから姫抱っこしてくれてるぅ!!!


それも軽々と!!!  


ギルベルト君、朝早くからゴブリン?討伐に行くって言ってたし…。


「あの、ギルベルト君。ギルベルト君、本当に帰らなくて大丈夫そ?ゴブリン討伐?に行くって言ってたけど…」


「フッ、芣婭は我儘を言い慣れていないのか?俺の事を心配してくれるのは、嬉しいがな」


「言った事ないかも…、行かないでとか…」


ギルベルト君の問い掛けに答えながら、歴代の彼ぴ達の反応を思い出していた。


わがまま言える雰囲気じゃなかったし、言ったら面倒臭いって思われるのが分かってたから。


芣婭は恋愛になると、メンヘラ気味になる事も分かってる。 

 

元カレ達は芣婭と付き合ってるのに、平気で浮気して、芣婭の事を大事にしてくれなかった。


ギルベルト君だけは、芣婭のわがままを聞いても、嫌な顔せずに涙を拭いてくれる。


もっと、わがままを言ってくれって…。


静かに階段を登るギルベルト君の横顔を、こっそり盗み見してしまう。 


これ以上、甘やかされたら好きになっちゃう。


芣婭を抱き上げたまま部屋の扉を片手で開け、ゆっくりベットに座らせてくれる。


「芣婭、これからは自分の気持ちを隠すな」


「…、我慢出来なくなったら、言う事にするよ」


「我慢する前に言え、良いな」


そう言いながら、ギルベルト君が顔を近付けてきた。


「うぅ…、わ、分かりました」


「分かってくれたなら良い。回復薬はまだ、飲んでいないようだな」


「回復薬?って、ポーション?」


「よく分かったな」


芣婭の言葉を聞きながら、ギルベルト君は綺麗な水色の液体が入った小瓶の蓋を開けてくれた。   


「少しは怠さが取れる筈だ。安心しろ、俺の専属の医者が作ったものだ」


「は、初めて飲むな…」


ギルベルト君に渡されたポーションの匂いを嗅いでみると、ラムネのような甘い香りが鼻を通る。 


「甘くて、お菓子みたいな匂いがする!!!」


「本来なら無味無臭なんだが、ミラの趣味でな」


「これなら飲めそう…、いただきます」


少し緊張しながらポーションを飲んでみると、ラムネ味が口の中に広がって行った。


マジで、ラムネ味だった。


「ポーションを飲んだら、布団の中に入れ」


「ふふっ、はーい」


ギルベルト君に促せながら布団の中に入り、ギルベルト君の顔をジッと見つめる。


「今日のデート、少しの時間だったけど楽しかったよ。また、どこかに連れてってくれる?」


「勿論、ゴブリン討伐から帰ってきたら、真っ先に芣婭に会いに行く」


「いつ帰ってくる?」

 

「早く終われば、1週間後に帰って来れる」


そうか、1週間もかかるのか…。


あ、そうだ。 


「あのね?ギルベルト君がいない間に、芣婭やりたい事があるんだ」


「やりたい事何だ?」


「せっかく異世界に来たんだから、異世界らしい事しないと!!!」


「は?」

     

***


シュンッ!!! 


甘野芣婭とギルベルトの2人が部屋で談笑している中、ケルベロスの2人は空中に瞬間移動していた。


「おーおー、今回は派手な演出で来やがったな」


「何百本の光の矢(ライトアロー)が、こっちに飛ばされてますね。何が目的か知りませんけど」


ケロちゃんが楽しそうに呟いてる横で、ベロちゃんは気怠げに右手首を振り払うような仕草をする。


光の矢(ライトアロー)光で作られた矢を放つ* 


シュシュシュシュッ!!!


バキッ!!!


何百本の光の矢がローベルク家に敷地内の前で、黒い

壁に当たり、光の矢が粉々に砕ける。  


ベロちゃんの影が大きく膨らみながら、ローベルク家の前に巨大な影壁(シャドウ・ウォール)を作り出していた。

  

影壁(シャドウ・ウォール) 陰で作った壁、防御魔術の1つ*


ズンッ!!!


「「…っ!!!」」


バッ!!!  


ケロちゃんとベロちゃんの体に少量の重圧が掛かり、

2人は一斉にある方向に視線を向ける。 


「俺達の片割れが、近くにいんな」


「そうみたいですね。俺達と同じように、人間と契約してますね」  


2人の視線の先にあったのは、現皇帝ガルシア・A・オルティスが住む宮殿があった。

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