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21.異世界で、とんでもない事になってきました⑤

甘野芣婭 (17歳)


え、芣婭が魔性の女(エンチャトレス)を発動させただけで、魔界で会合が開かれる程の大事になってるとは思ってもなかったんですけど⁉


確かにさ?ケロちゃんとベロちゃんにも言われてたから、ある程度の事は覚悟してたつもりなんだけどさ⁉


芣婭の事を狙って来る悪魔が、この部屋に居る倍の悪魔が狙って来るって事でしょ?


え、1人ずつ来てくれる感じ?


え、それとも大群で来る感じ?


え、一旦落ち着いて?


「ケルベロスの2匹から言われてなかったのか?」


「言われてたけど、芣婭の想像以上だったから驚いて…、だって、ここにいる倍の悪魔がいるって事だよね?」


「あぁ、魔界には数万の悪魔が住んでいる。下位の悪魔から上位の悪魔まで、さまざまな悪魔がいて狙われる立場にいると言う事だ」


「はー、ヤバい感じだ」


ダンタリオン様がこうおっしゃってるんだし、芣婭の敵は悪魔になってきたと言う事ですな。


本格的に魔法の使い方をパパに教えてもらって、レベルアップしないとダメだね。


そう言えば、この世界ってどうやって強くなるんだ?

RPGみたいに武装して野原に行くとか?


スライムか目が1つしかないモンスターとかが現れて、【戦う】・【魔法を使う】・【逃げる】のコマンドが出て、選択して戦ってレベルを上げるのかな?

だって、ポーションがあるんだから、ダンジョンとかもあるんじゃない?


そう考えると、ちょっと楽しくなってきたな。


冒険に行くってなったら、ギャルっぽい服着て、カッコイイ武器装備して、上級魔法ってヤツを涼しい顔して使えたら…。


「ちょっと楽しくなってきたな」


「「は?」」


「アハハ!!!命狙われてんのに、楽しくなってきたってなんだよ⁉アハハ!!!ヤベー、笑い過ぎて腹いてー!!!」


「あ」


芣婭が妄想を膨らませている最中、ケロちゃんとベロちゃんは芣婭にずっと声をかけていたらしく、心の声が漏れてしまったようだ。


それで、芣婭の返答を聞いたパズさんが、めちゃくちゃ笑ってる。


「へぇ、俺がいない時にすごい盛り上がってるじゃん?遅れて来た甲斐があったかな」


なんかもんのすっごいイケボが聞こえて来たんですけど、何事ですか!?


チョコレートの甘い匂いが鼻を通った瞬間、芣婭の背後から手が伸びてきてテーブルの上に乗る。


黒い手袋の上から高そうな大粒の宝石が装飾された指輪がはめられ、振り返って見ると顔面偏差値高めのイケメンが芣婭の顔を覗き込んできていた。


お洒落なハット帽を指で上げ、帽子で隠されていた顔が露わになり、肩までの長さのウルフカットに焦げ茶色の髪、右目は眼帯で隠され、首元には目玉に翼が生えたタトゥーをが入っている。


黒のファーが付いた茶色のロングコートを肩で羽織り、薔薇の刺繍が施されたワインレッドのスーツ姿はマフィアそのもの。


「俺の顔をジッと見ているようだけど、何か付いているかな?」


苺のように真っ赤な瞳が芣婭の顔を映し、頬に熱が溜まって行くのは分かる。


この人、カッコよ過ぎない?


ケロちゃんもベロちゃんもカッコイイけど、この人はワイルド系のイケメンで、正直芣婭の好みドンピシャ。


「あっ!えっと…、カッコイイ目と鼻と口が付いてます?」


「フッ、この顔がお好みのようで。可愛いお姫様」


「はわわわ!?」


顔面国宝お兄さんが自然な流れで芣婭の手を取り、そのまま優しく手の甲に口付けをした時、ドンッと机が強く叩かれる音がした。


すぐ隣から音が聞こえてきたような…って、ベロちゃんとケロちゃんがものすっごい恐ろしい顔をしているではありませんか!?


「ハウラス?なんで、ボクの目を目隠しするの?」


「ジオンの目を守る為だ」


「ん?」


ジオン君の目を隠すのは大正解です、ハウラスさん…。


2人の怖い顔をはちっちゃいジオン君が見たら、ギャン泣きもんだよ…。


「おい、バフォメット。挨拶が終わったなら、さっさと芣婭の手を離せ」


「おいおい、手の甲にキスをして挨拶するのは魔界流だろ?ハウラスだって、さっきしてたじゃないか」


「ハウラスは芣婭に色目を使ってな…、お前最初から見てたのか」


「さぁ?それはどうかな」


バフォメットと呼ばれたお兄さんは芣婭の手を離し、ダンタリオン様の元に向かって歩いて行く。


*バフォメットとは、近世に山羊の頭に人間の体を持つと位置づけられた、西方キリスト教世界に措ける有名な悪魔で、1300年頃に、十字軍で活躍した騎士修道会・テンプル騎士団が時の為政者フィリップ4世の糾弾を受けた際、彼等がこの悪魔の偶像を崇拝していた、と言う風評が元で広く世に知られるようになりました*


 

ケロちゃんは何も言わずに芣婭の手を握り、無表情のまま芣婭の顔をジッと見つめてくる。


「な、なぁに?ケロちゃん」


「浮気したらダメですよ、芣婭」


そう言ったケロちゃんの頭に、耳がぺしゃんとなった犬の耳が幻覚で見えてしまう。


ゔっ、そんな可愛い事を言われてしまうと困っちゃうよ!!!


何だよー!他人にはそっけないのに、芣婭にだけ甘えてくるとか最高かよー!


ベロちゃんもベロちゃんよ!?


芣婭が顔面国宝お兄さんに見惚れてたのが気に入らなかったんだよね?


はー!可愛いが過ぎますよ、ベロちゃん!


「浮気なんかしないよ?芣婭にはケロちゃんとベロちゃんがいるんだもん」


「ふーん、なら良いけど?」


「わっ」


ベロちゃんは芣婭の肩に頭を乗せて、グリグリと動かしてくる姿もすごく可愛い。


もう、この世界は異世界じゃなくって乙女ゲーの世界では?


【異世界にトリップしたら、魔界のイケメン悪魔達に愛されて困ってます】みたいな感じのタイトルの乙女ゲー。


だったら、いつでも見れるようにスチル化してほしいんですけど!


画像で収めたい胸キュンシーンはいくつかあるんですけど!


「バフォメット、レイラの妹を困らせるな」


「はいはい、ごめんなさいね?ダンタリオン」


顔面国宝はそう言って、ダンタリオン様の手を取って手の甲に口付けをする。


何ですか、今のは!?


魔界式の挨拶は男の人でもするの!?


美しい男の子ぎ人達の美しい光景を見た事なかったけど、BL好きじゃなくても2人の光景を見て合掌してしまう。


「芣婭、何で合掌してるんだ?」


「美しい光景を見せてもらったからだよ、ベロちゃん」


「バフォメットが男相手にするのは、ダンタリオンだけだ。男の悪魔が魔界式の挨拶をするのは、美しいと思った相手にだけだし」


「え!?誰にでもするものじゃなかったの!?」


ベロちゃんの話を聞いた後、悪魔式の挨拶をしてくれたハウラスに視線を向けると普通に答えた。


「お前は今まで会った人間の女の中で、最も美しいからしただけだ」


「は、な、成る程」


「ジオンと仲良くしてくれているし、お前は悪い人間ではない」


この人、サラッと誉め言葉を言ってくれるな。


「ダンタリオン、今日の集会の目的は?もう話したのかい?」


「いや、これから話す所だ。早速だが、今日の集まりには2つの目的がある」


顔面国宝お兄さんの問いに答えたダンタリオン様は、部屋の中にいる悪魔達に視線を向けながら話を続ける。


「1つ、お前等にレイラの妹である芣婭を守護してもらいたい。アスタロトの軍勢が芣婭の事を狙う可能性が高い、ケルベロスの2匹だけでは相手をするのは難しいだろう」


ダンタリオン様の言葉を聞いたケロちゃんとベロちゃんは、あからさまに嫌そうな顔をしてるなぁ。


2人だけで芣婭の事を守ろうとしてくれてたし、ダンタリオン様に言われたら嫌だよね。


「アスタロトなぁ、奴はレイラにゾッコンだったもんなぁ。お前とレイラが結婚してから、スッゲー荒れてたし。芣婭が魔性の女(エンチャトレス)を発動させた時には、奴も気付いてたろうし。アイツ、手に入れる為なら手段選ばないから」


「え、サイコパス的な存在なの?そのアスタロトって人は」


「サイコパスっちゃ、サイコパスだけど執着が凄いって言ったら良いのか?あれは。アイツの性格は説明がしにくいんだよ、直接会ってみたら分かるだろ」


芣婭の疑問に答えてくれたけど、パズさんの反応から見て、アスタロトって人は性格がやばめって事だけは分かった。


とにかく、どやべー奴って事だけ覚えとこ。


「ケルベロスの2人が既に、アスタロトの部下達を何人か相手していたよ。俺の部下からの報告だかね、間違いはないよ?ダンタリオン」


「貴方、本当にどこからでも見てますね」


「俺の部下達は俺に忠実だからね、目となり足となって動いてくれる。君が異世界に来た時も、すぐに報告してくれたよ」


ケロちゃんと話しをしていた顔面国宝お兄さんが、芣婭の事を見ながら優しく微笑む。


マジ、その顔スクショしたいんですけども!!!


「え?芣婭が来た時に見てたって事?声かけてくれたら良かったのに!」


「いや、君は気を失っていたから、声をかけていたとしても話は出来なかったと思うよ。今、こうして目を見ながら話が出来ているしね?あの時に話せなくても良かった」


「確かに、あの時寝ちゃってたね。顔面国宝のお兄さんは色々知ってるね、物知りさんなんだ」


「俺の名前はバフォメットだよ、覚えにくいだろうけど覚えたら呼んでくれ。君がこちらの世界に来た時に、同じような格好をした異世界人の女の子が来てみたいだよ」


ガタッ!!!


バフォさんの話を聞いていた黒髪のショートの女の子が勢いよく立ち上がり、バフォさんの事を睨みつけた。


「バフォメット、アンタどこまで知ってんの?あの子が現れたのは外じゃなかった。まさか、中にまで監視を入れてたって事?」


「人間界の世界でも、俺のファミリーはいるんでね?怪しい動きをしている者がいれば、俺の耳に入って来るのは自然の流れだ。それとも、俺の耳には入ってはいけない事でもしてるのか?」


「この糞悪魔、本当に性格悪いわね」


「俺は気に入った相手にしか優しくなよ?その事は、お前自身がよく分かってるだろ」


穏やかな顔して話してるけど、バフォさんの事が怖く見えてしまった。


声のトーンもさっきと同じなのに、言葉を選んで話さないといけない空気が部屋の中に広がる。


ちょっと待てよ?さっき、芣婭と同じよう恰好をした異世界の女の子が来たって言ってなかった?


「芣婭に悪魔召喚書を渡す、お前達の紋章を芣婭に渡せ」


ダンタリオン様の発言は部屋の中の空気を違うものに変え、悪魔達がざわつき始めていく。


「も、紋章をですか!?」


「へぇ、思い切ったじゃねーか」


戸惑う悪魔達もいれば面白がってるパズさんは、芣婭とダンタリオン様の顔を交互に見ながら呟いた。


「ダンタリオン様、この子に紋章を渡すと言う事は、更にアスタロトに狙われるリスクが高まりますよ?その事を承知で召喚書を作ると言う事ですか?」


「奴の手中に入る前に叩き潰せば良い、そうだろう?ラマシュトゥ」


「おっしゃる通りですが、おいそれと紋章をこの子にあげる訳にはいきませんわ。それはここにいる悪魔達も同じ意見かと」


「え?」


パスさんの奥さんはそう言いながら、芣婭に視線を向けと隣に座っているベロちゃんが口を開く。


「おい、うちの芣婭に紋章を渡すのが不満って言いたいのか?」


「貴方達は自分の主人だから、紋章を喜んで差し出すでしょうけど。私と夫は人間と契約していないもの、今日初めて会った相手に渡せないわ」


「そんなに紋章って、大事な物なの?パズさんの奥さん」


「奥さんって、もしかして私の事?名前も覚えてないの」


ゔっ、確かに名前を覚えきれてない芣婭が悪いんだけど…、異世界の人達の名前も悪魔の名前も長すぎるんだもん!


しょうがないじゃん!リリィちゃんみたいに、短い名前にしといてよ!


「だって、名前が長いんだもん…。ラマさんって呼んでも良い?」


「はぁ?ラマさんって何よ、私の名前はラマシュトゥよ!」


「ラ、ラマシュ?」


「…、ラマさんで良いわよ。貴方、何回聞いても覚えなさそうだし。悪魔にとって紋章はね、命と同じくらい大切なものなの」


「い、命…」


ラマさんの口から予想外の言葉が出て来て、ダンタリオン様が芣婭に渡そうとしてる物の重さを理解した。


あくまで想像の話るけど、ゲームとかに出てくるような悪魔の紋章は紙に書かれてて、その紙が破れたりしたらヤバいって事?


そんなのを渡そうとしてんの!?ダンタリオン様は!?


ダンタリオン様は何も言わずに1冊の真っ黒な本を取り出すと、本は浮き上がり芣婭の元まで飛んでくる。


本全体にシルバーのチェーンが巻かれ、十字架やハート、星や鳥がモチーフのチャームがチェーンについていて可愛い。


表紙もなんかオシャレな絵が描かれてて、芣婭の好みのデザインだ。


「今、渡したのは悪魔召喚書の本体になる本だ。中は白紙になっているが、悪魔が血を滲ませれば紋章が出て来る仕組みになっている。ケルベロスの2人は既に主従関係を結んでいるから、その悪魔召喚書とは関係ない」


「ふむ、ケロちゃんとベロちゃん以外の悪魔の紋章がいるって事?」


「紋章さえあれば、契約していない悪魔の事を呼び出せるようになる」


「んーでも、無理矢理貰うのはやだなぁ。だって、悪魔にとって紋章ってすごく大事なものなんだよね?」


ダンタリオン様に本音を言うと、顔面国宝お兄さんじゃなくバフォさんが代わりに答える。


「じゃあ、こうしたら良い。ダンタリオンの意見と君の意見を通る方法をとろうじゃないか」


「方法?」


「悪魔達がこの子を気に入れば問題ないだろう?だったら、試験みたいな事をしたら良いんじゃないか?」


「試験?なんか楽しそう!クエストみたいな感じで!」


「おい、バフォメット」


芣婭とバフォさんの会話にダンタリオン様が入って来るけど、バフォさんはダンタリオン様の事を説得し始めた。


「ダンタリオン、俺達にとって紋章はとても大事なものだ。易々と人間の手に渡して良いものじゃない、それはお前もよく分かっておるだろ?」


「…、芣婭の意見を尊重する。お前等もそれで良いだろ」


「リリィ、君もちゃんとテストをするんだよ?」

バフォさんに名前を呼ばれたリリィちゃんは、ムッとしながらバフォさんの事を軽く睨む。


「む、何で名だしで呼ぶの?バフォメット」


「早く御主人の所に戻らないといけないからって、さっさと紋章を渡そうとしてただろ」


「むー、わかりましたぁ」


「良い子だ、ハウラスもだ」


「…」


ハウラスもバフォさんに名だしされ、何も答えずにジオン君に視線を落として髪を優しく撫でている。


ジオン君ラブだから、2人を引き離すような事はしたくないね、うん。


「個人的に芣婭に会う事は禁止する。試験内容が決まったら俺の所に来い、以上だ」


他の悪魔達もバフォさんの提案を了承し、ダンタリオン様の一言で今回の集いはお開きになった。


人間の姿をしていない悪魔達が客間を出て行く中、芣婭はすぐにバフォさんの元に行き、ずっと聞きたかった事を尋ねる。


「バフォさん!聞きたい事があるんだけどっ、良いかな?」


「ん?何かな」


「芣婭と同じ格好をした女の子の事なんだけど…」


「君が求めている答えは、俺の試験に合格出来たら教えてあげる」


「へ?」


教えてくれると思ってたのに、バフォさんは教えてくれなかった。


普通に教えてくれるとものだと…、あれれ?


ケロちゃんが後ろから抱きついてきて、芣婭の頭にポスッと顎を乗せる。


「バフォメット、何で芣婭に意地悪するんですか。教えてあげたら良いじゃないですか」


「俺は性格は良くないからね、何でも全部話してあげる事はしないよ、ケルベロス」


「試験に合格したらい教えてくれる?」


「勿論、約束は破らないよ」


バフォさんはこれ以上、芣婭が駄々をこねても教えてくれなさそうだ。


悪魔達が出す試験ってなんだろう、芣婭の予想をはるかに超えてきそうだもんなぁ。


「帰るぞ、芣婭。魔界での用は済んだし、ここに残っててもやる事ないだろ」


「あ、うん、分かった。ダンタリオン様、芣婭達は帰るね」


「芣婭、帰る前に召喚書を開いて出せ」


ベロちゃんに声をかけられ帰ろうとした時、ダンタリオン様に呼び止められ、言われた通りに召喚書を開くとダンタリオン様が自分の親指を噛んだ。


鋭い牙が親指の皮膚に食い込んで小さな血玉ができ、そのまま親指を真っ白なページに押し当てる。


すると何も書かれていないページだったたのに、紙に

血が円を描きながら染み込み、漫画で見た事がある悪魔の紋章が浮き上がってきた。


「これは俺の紋章だ、助けが必要になったらページを破って呼び出して良い」


「これって、1回呼び出したら終わりのシステム?」


「その心配はしなくて良い、破ったとしてもページは復元される。」


「神並みの便利システムだ!」


何度でも呼び出せるのは凄いけど、何度も呼び出される悪魔の気持ちを考えたら申し訳ないな。


「芣婭!俺も試験の内容考えておくから、楽しみにしててくれよ」


「あんまり難しいのは嫌だからね!パズさん」


「アハハ!!!それは分からねーな、またな芣婭」


「うん、ラマさんもばいばい!」


「ふんっ」


パズさんがラマさんの肩を抱くと、2人は芣婭の前から一瞬で姿を消す。


ラマさんにもばいばいしたんだけど、そっけない態度をとられてしまったけど美しいな。


ツンツンッと指で肩を突かれ、視線を向けるとリリィちゃんが芣婭のほっぺに軽くキスをしてきた。


「え!?きゅ、急にどしたの?」


「リリィ、もう帰るから御挨拶しとかないとって。ダメだった?」


「そ、そんな事ないよ?いきなりだったから、驚いちゃっただけだよ。挨拶してくれてありがとう、リリィちゃん」


「ケルベロスの御主人様、優しくて良い人。リリィの御主人様の許可が下りたら、一緒に遊んでくれる?」


そう言って、リリィちゃんは上目遣いをして芣婭の事を見つめてくる。


リリィちゃんの御主人様って、リリィちゃんの事が大好きに違いない。


計算してやってる動きじゃなく、自然に可愛い事が出来るから御主人様はメロメロだろうなぁ。


「勿論!リリィちゃんの御主人様のお許しが出たら女子会しよ」


「女子会?よく分かんないけど、分かった。またね、ケルベロスの御主人様」


パズさん達と同じように一瞬で姿を消し、芣婭達の事を魔界に連れて来てくれたコウモリが芣婭の所に飛んできた。


「ケルベロス様、ハウラス様、人間界にお送りしますね!本日は、お疲れ様でした!」


「もう芣婭達が帰っても大丈夫な感じ?」


「召喚書を渡す事が本来の目的だったからな。それと、お前の事を守護する悪魔達の顔を見ておいてもらいたかっただけだ」


「1回で顔と名前は覚えきれなかったけど、ありがと!ダンタリオン様」


芣婭の言葉を聞いたダンタリオン様は、芣婭の頭に手を置いて優しく撫でてくれる。


子犬や子猫を可愛がるような撫で方で、少しくすぐったい気持ちになってしまう。


「気を付けて帰れよ、芣婭」


「ありがとう、ダンタリオン様!気を付けて帰ります!」


「お任せください、ダンタリオン様!この私が責任を持って、人間界に置くり届けますか…、イデデデ!!!」

ダンタリオン様が張り切ってるコウモリの耳を強く掴み、痛い事をされている。


このコウモリって、いじられキャラなのかな?

「何、偉そうにしてんだ?テメーは」


「え、偉そうになんてしてませんよ!?私は、ダンタリオン様の命令をっ、忠実に聞いてるだけで!!!」


「生意気な事言いやがって、さっさと送ってこい」


「わわ、分かりましたっ!すぐに送り届けますっ!」

コウモリの返事を聞いたダンタリオン様は、コウモリの耳から手を離す。


泣きながら芣婭の元に飛んで来て、ピトッと芣婭の腕に抱き付きいてきた瞬間、鬼簿形相をしたベロちゃんに羽を掴まれ引き剥がされる。


「なーにー、芣婭の腕に抱きついてんだ!!!マジで、殺すぞこの野郎!!!」


「ヒィ!?」


あー、可哀そうって思ってたんだけど、これは可哀そうって思えなくなってきたぞ。


コウモリが芣婭の事を見ながら「グヘへッ」と涎を出して、ニヤニヤしている姿は変体オヤジそのものだ。


「仕方ない、俺が代わりに送ってあげるよ」


そう言ってバフォさんが指を鳴らすと、芣婭達の足元に大きな黒い穴が開き、ジェットコースターの急落下する時みたいに穴の中に吸い込まれた。

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