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残機ゼロの探索者〜究極の異能【可能性の選択】の代償は自我消失。世界に溶ける俺を、相棒の声だけが繋ぎ止める〜  作者: aramakid
第一章 臨界編

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第5話 日記 / Diary

【Day 1】 ランキング:17,209位


 今日から、記録をつけることにした。


 グレイ・コリドーから帰ってきた後、相棒に言われた。


 「日記を書け。バックアップが更新できないなら、記録を残せ」

 「能力のことだけ書け。余計なことは書くな」


 【能力マニュアル ver.1.0】を作った。

 実戦で掴んだコツを、これから追記していく。


 でも——それだけじゃ、足りない気がした。


 この【探索ログ】も作った。

 ランキングと、何があったか。

 感情は最小限に。

 ただ事実だけを。


 相棒には、内緒だ。



【Day 5】ランキング:12,847位


 相棒と裏口ダンジョン。

 敵が多い。電撃だけじゃ追いつかない。

 凍結を試す。成功。

 咄嗟に床を「滑ってる可能性」に変更。敵が転倒。

 相棒が仕留める。


 連携:悪くない。


 相棒評価:「即興にしては悪くない」

  → 褒められてるのか、けなされてるのか。



【Day 18】 ランキング:8,932位


 「消す」力を実戦で使用。

 成功。でも、自我拡散が予想以上。

 相棒が名前を呼んでくれて、戻れた。


 重要:名前を呼ばれると、確実に戻れる。

    一人では絶対に使わない。



【Day 32】 ランキング:5,421位


 ギリギリだった。

 出口が見つからない。相棒が焦ってる。

 でも——俺には「出口できる可能性」がある場所がわかった。

 揺らぎが収束する瞬間。空間がほつれる場所。

 「ある可能性」を選んだ。出口が現れた。


 相棒:「お前、本当に()()()()な」


 持ってる、か。

 分からん。ただ——可能性が、見えるんだ。



 この日、パッチの店に寄った。


「よう!ランク上がってきたな!」


 パッチが祝いの酒を出してくれた。

 安物だけど——悪くない。


「お前、このペースなら三桁いけるぞ」


 三桁。

 本物のランカー。


 悪くねえ。



【Day 51】 ランキング:3,287位


 完璧な連携。

 俺が電撃で牽制。

 相棒が凍結で止める。

 俺が壁を透過して回り込む。

 相棒が仕留める。


 一つのミスもなかった。


 帰り道、相棒が言った。


「お前、成長したな」


 照れくさくて、何も言えなかった。


 追記:特製スモークチーズバーガーを勧めたら相棒がハマった。


【Day 78】 ランキング:1,842位


 街で声をかけられた。

 「あなた、Kさんですよね?」


 ランカーとして、認知され始めてる。


 悪くない。



【Day 95】 ランキング:1,205位


 相棒曰く:

 「四桁と三桁の間には、壁がある」


 生還率が、ガクッと下がるらしい。

 ランクを上げるにはTier7以上のダンジョンに挑む必要がある。


 不安定で、危険で——

 でも、可能性に溢れてる。



【Day 114】 ランキング:892位


 今日は、書かなきゃいけない。


 相棒が、死んだ。


 Tier7の深層。

 俺たちは、イレギュラーに囲まれた。


 黒い霧のようなクリーチャー。

 俺の電撃も、相棒の凍結も効かない。


 俺が「消す」力を使おうとした瞬間——


 相棒が、俺の前に出た。


 霧が、相棒を飲み込んだ。


 悲鳴。

 血。

 そして——


 静寂。


 その瞬間、俺は世界線を見た。


 無数の可能性。

 全部の世界で、相棒は死んでいた。


 俺は必死で探した。

 「相棒が生きている可能性」を。


 でも——なかった。


 どの世界線でも、

 相棒は死んでいた。


 俺は——


 「敵がいない世界」を選んだ。


 霧が、消えた。

 でも、相棒も消えた。


 俺は、出口まで走った。


 外に出た瞬間、端末が震えた。

 相棒からだ。


 相棒は——バックアップで戻ってくる。

 それがこの世界の仕組みだ。


 でも、俺は知っている。


 あの瞬間、相棒は本当に死んだ。


 バックアップで戻ってきても、

 あの時の相棒じゃない。


 死んだ記憶は、消えている。


 翌日。


 相棒が来た。

 いつも通りの顔で。


「昨日はごめん」


 俺は、何も言えなかった。

 相棒は、不思議そうな顔をした。


 俺は——


 二度と、相棒を死なせない。

 そう、心に誓った。


【Day 135】 ランキング:387位


 街中で、声をかけられる頻度が上がった。

 「Kさん、サインください」とか。


 パッチが、めちゃくちゃ喜んでた。

 「お前、マジで伝説になるぞ!」


 伝説、か。

 まだだ。まだ、足りない。


 ——強くならないと。

 二度と、相棒を死なせないために。



【Day 157】 ランキング:219位


 死にかけた。


 クリーチャーの群れに囲まれた。

 「消す」力を使った。一気に消した。

 でも——

 自我が、深く拡散した。

 可能性の海に、深く沈んだ。


 全部が見えた。

 「いる可能性」も「いない可能性」も。

 「生きてる可能性」も「死んでる可能性」も。


 世界と、溶けかけた。


 相棒が、何度も名前を呼んでくれた。

 それで、戻れた。


 帰り道、強い口調で言われた。

 「もう、あの力は使うな」


 でも——使わないと、相棒を守れない。



【Day 163】 ランキング:156位


 バーで、二人で飲んだ。


 「……お前、無茶しすぎだ」

 「分かってる」

 「分かってない」


 またか。

 でも——今回は、反論しなかった。


 確かに、無茶してる。

 あの力を使いすぎてる。


 でも——


 「俺は、ランカーになる」

 「……」

 「生きた証を、残す」


 小さくため息。

 「……バカだな」

 「知ってる」


 二人で、笑った。


 ——お前が笑ってくれる世界線が、一番好きだ。



【Day 175】 ランキング:89位

 二桁に入った。


 でも——体調が悪い。

 いや、体じゃない。

 意識が、時々ぼやける。


 自分の輪郭が、薄い。

 可能性が、勝手に見えることがある。


 自分が「いる可能性」と「いない可能性」が重なってる感じ。


 手を見る。

 指を数える。

 1、2、3、4、5……


 大丈夫。

 まだ、ちゃんと5本だ。



【Day 182】 ランキング:67位


 相棒が、提案してきた。

 「次のダンジョンで、一気に一桁を狙おう」

 「……どこだ?」

 「Tier9。企業占有の研究用ダンジョン」


 研究用。


 真剣な目で言われた。

 「これが、最後だ」

 「最後?」

 「お前の限界が、近い」


 「だから——これで終わりにしよう」

 「一桁に入ったら——もう潜るな」


 「……分かった」


 嘘だった。


 でも——

 相棒と一緒なら、どこまでも行ける。


 それを、証明したい。


 ——


 半年分の記録を見返した。


 17,209位から67位まで。


 相棒との戦い。

 相棒の死。

 相棒の笑顔。


 でも——これだけじゃ、足りない気がした。


 明日、Tier9に挑む。

 もし、戻れなかったら。

 もし、記憶を全部失ったら。


 新しいファイルを作った。


 【Private Log】


 強力な暗号化。

 パスワード保護。


 相棒のことを、書いた。


 声のこと。

 手のこと。

 笑い声のこと。

 死んだ時のこと。


 全部。


 もし俺が記憶を失っても、

 きっと、思い出せるように。


 パスワードは——

 忘れるわけがない。



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