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残機ゼロの探索者〜究極の異能【可能性の選択】の代償は自我消失。世界に溶ける俺を、相棒の声だけが繋ぎ止める〜  作者: aramakid
第二章 回帰編

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12/21

第12話 再会 / Reunion

 ——

 フラックス・エナジー 採掘ダンジョン

 2,850クレジット

 Tier:4

 生還率:27%

 ユーザーの評価:★★★☆☆

 レビュー:

「森林タイプ。クリーチャーは動物型で比較的狩りやすいが、密度が薄い」

  — Neon_Ω_diver ↑229

「専属はスリーマンセル。隠れる場所も多い」

  — hexrunner ↑125

「ランカーの狩りやすいは真に受けるな」

  — scott318 ↑56

「↑雑魚が背伸びするのが悪い」

  — K ↑18 ↓27

 ——


「……これにするか」


 入り口を潜ると、空気が変わった。

 ひんやりとした風が頬を撫でる。

 整然と立ち並ぶ針葉樹と乾いた土の匂い。


 周囲にクリーチャーや専属の気配はない。

 足早に奥を目指す。


 段々と木の密度が上がる。

 薄暗い森の更に奥へ。


 木々の合間に鹿の角が見える。

 そっと回り込んで、様子を伺う。


 毛の無い体表には血管が透け、異様に長い脚は幾つもの関節で折れ曲がっている。

 触手の様な角の先端が、何かを探るように蠢く。

 黒く虚ろな眼がこちらを捉えた。


 多関節の脚が猛烈な速さで蠢く。

 こちらに迫ってくる様が、スローモーションに見える。


 銃を構える。

 意識を集中する。

 現実を書き換える。


 銃弾が、心臓を捉える。

 同時に電撃が走る。


 ポトリと結晶が落ちた。


「これなら大丈夫そうだな」


 結晶をポケットに入れながら、呟く。


 ………

 ……

 …


 森はいよいよ濃くなり、入り口の整然とした様子は見る影もない。


 「このあたりで良いか」


 大木を背に立つ。

 頭上には枝葉が厚く重なり合い、僅かな光しか届かない。


 肩幅に足を広げ、背筋を伸ばす。

 軽くひじを曲げ、手のひらを上に向ける。


 足元の苔が柔らかく沈み込む。

 呼吸するたび、湿った土と腐葉土の匂いが鼻腔に押し寄せ、胸の奥まで冷たく染み込む。


 鬱蒼とした木々を見るともなく見ながら、空間のザラつきを探る。


 風はほとんど無い。

 静寂が身体に纏わりつく。


 僅かな違和感。

 意識を向けると途端に霧散する。


 再び違和感を感じるまで、無心で待つ。


 また違和感。

 意識してしまうと途端に消えてしまう。

 目の端の埃を見ようとした時のようなもどかしさ。


 違和感を探す。

 意識の一番外側の端に引っかかる様に。


 微かに感じるザラつき。


 ——これか?


 一瞬で消えたが、確かに感じた。

 もう一度捉えようとするが、何も感じない。


 やがて、先ほどザラつきを感じたあたりに出口が出現した。


「さっきの感覚が、当たりか?それとも偶然?」


 なんとなく釈然としないまま、出口を潜る。

 ショッピングモールの裏手に出た。

 西日を背に路地を歩く。


 前から、ヘリオス・ダイナミクスの私兵たち。


「探したぞ」


 低い声が、私兵の更に後ろから聞こえる。

 私兵より頭一つデカい黒い義体が、私兵の肩を叩く。


「お前!この前の!」


「覚えてるなら、話は早い」

「人にぶつかったまま、逃げたな?」


「邪魔するなら、お前から——」


 轟音。

 銃を抜こうとした一人が、吹き飛んでひしゃげた。


 呆気に取られているうちに、残りの2人もスクラップになった。


「待ってくれ」


 そのまま立踵を返した義体に思わず声をかけた。


「……なんだ?」


 微かに肩を震わせた義体が振り返る。


「今の奴ら、たぶん俺の客だ。助かった」


「気にするな」


 義体は淡々と言う。


「私の用事を済ませただけだ」


 そのまま立ち去ろうとする背中に、声をかけた。


「よかったら、奢らせてくれ」


 義体は足を止める。

 一拍。

 二拍。


 バイザーがわずかにこちらを向いた。


「……奢り、か」


 しばらく逡巡したあと、ぎこちなく頷く。


 *


 裏通り。

 角の小さな店にSMOKE & GREASEのネオンが赤く光る。


「ここだ」


 年季の入った扉を開けると、鉄板から上がる煙と、肉の焼ける匂いが飛び込んでくる。


 奥のテーブル席に向かい合って座る。


「小汚えが、味は確かだぜ」


 肩をすくめて言う。


「ああ、知っている」

「特製スモークチーズバーガーを」


 即答だった。

 低く、迷いのない声。


「おお!わかってるじゃねえか」


 思わず笑いが漏れる。


「昔の相棒に勧められて、ハマった」


 義体はそれだけ付け足した。


「その相棒いい趣味してるぜ」


 悪くない気分で、俺は頷いた。


「特製スモークチーズバーガー二つだ!」

「それとビールも」


 厨房に向かって叫ぶ。


 *


「改めて今日は助かった」


 運ばれてきたバーガーをパクつきながら礼をいう。


「たまたまだ」


「それにしても、あんた強いな」

「そのゴツい義体、傭兵かなんかか?」


「……そんなところだ」


「なら、護衛でもしてくれないか?……なんてな」


 少し冗談めかして言う。


「でもこう見えて、金なら結構あるんだぜ」


「護衛?」


「ああ、最近さっきみたいな、鬱陶しいのに付きまとわれててな」

「俺は探索者なんだけど、今はダンジョンに専念したくてさ」

「地上で煩わされたくないのよ」


「……」


「まあ、無理だよな。あんたみたいな凄腕雇うのは」

「忘れてくれ——」


「……いいぞ」


「え?」


「だから、護衛だ。受けてやる」


「マジで!?」

「俺はケイだ。よろしくな」


「……ィだ」


 義体が、ぎこちなく名前を返す


「え?」


「……リリィだ」


「ぶはっ!」

「いや、悪い。巨体に似合わずかわいい名前だな」

「意外と似合ってるぜ……くっ」


「……」

 

 義体は無言で顔を背けた。

 バイザーに映る店の光が揺れる。


 ビールを流し込む。


「今日は奢りだから、お前もじゃんじゃん飲め」


 リリィはジョッキを掴むと、一気に飲み干した。


「……」


 空のジョッキを置くと、無言で少俺の方に押し出す。


「いい飲みっぷりだ」

「おやじ!ビールおかわり」


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