表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残機ゼロの探索者〜究極の異能【可能性の選択】の代償は自我消失。世界に溶ける俺を、相棒の声だけが繋ぎ止める〜  作者: aramakid
第二章 回帰編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

第10話 残響 / Echoes


━━━━━━━━━━━━━

【能力マニュアル ver.1.3】

━━━━━━━━━━━━━


■はじめに

 もし俺が死んで、バックアップから戻ったら——このマニュアルを読め。

 お前は俺だ。俺はお前だ。

 忘れても、感覚は同じ。伝わるはずだ。


■本質:すべては可能性の選択


 この能力の本質は一つだけだ。


 「世界に重なった無数の可能性から、一つを選び取る」


 凍結も、硬化も、透過も、消去も——

 全部、同じ原理だ。


 違うのは、世界との境界をどれだけ緩めるか。

 深く潜るほど、選べる可能が増える。

 でも——戻れなくなる。


■基礎:世界との境界を緩める


【ステップ1:ザラザラを探す】


 空間を撫でろ。

 目で見るんじゃなくて、皮膚感覚で。


 ツルツルの場所 → 確定済み。触るな。

 ザラザラの場所 → 未確定。ここを弄る。


 ザラザラってのは——

 世界がまだ「どっちでもいい」って迷ってる場所だ。


【ステップ2:境界を緩める】


 自分と世界の間にある「膜」をイメージしろ。

 普段はピンと張ってる。

 それを柔らかくしろ。


 意識を集中したらダメだ。

 ぼんやりとあるのをイメージしつつ意識の外に置け。


 それができたらゆっくり、拡げる。

 膜が、薄くなる。


 これが「境界を緩める」感覚だ。


【ステップ3:可能性を選ぶ】


 境界を緩めると——無数の可能性が見えてくる。


 「凍ってる世界」

 「凍ってない世界」

 「半分凍ってる世界」


 全部が、同時に重なってる。


 そこから一つを選べ。


 選び方:

  「こうしたい」じゃなくて「もうこうなってる」を選ぶ。

  未来じゃなくて、今を選ぶ。


 世界が「カチッ」と鳴る。

 選んだ可能性が、現実になる。


 ……



 頭が痛くなって、途中で読むのをやめた。


「ツルツル?ザラザラ?『伝わるはず』じゃねえよ……」



 *



 薄汚れた、廃墟となったビルが立ち並ぶ街並み。

 古くからある、出涸らしダンジョン。


 ——危険はほとんどない、練習にはうってつけのダンジョンだ。


 「はぁ、こんな怪文書でも、今はすがるしかねぇ……か」


 マニュアル通りにやってみる。

 目を閉じる。

 手のひらを空間にかざしてみる。


 左右の手のひらに集中する。

 左の方が僅かに温かい——気がする。


 深く息を吸う。

 吐く。


 呼吸に集中しろ、と書いてあるわけじゃない。

 だから、集中しない。


 ただ、空気が肺に入る感覚を、放っておく。


 胸が膨らみ、縮む。

 服が擦れる。

 手のひらに感じる風。


 意識の外に置く。


 空間の質感を探す。


 「……」


 何も感じない。


 ——半年前の俺は、こんなのを“当たり前”にやってたのか?


 雑念を払い、集中する。

 やはり何も感じない。


 いや——

 何か違和感を感じる。


 微かな気配。

 右側。


 ——これは!

 薄っすらと目を開ける。


 探索者達と目があった。

 

「こんなとこで、何やってんだ?」

「Kが落ちぶれたって噂、本当だったんだな」

 

 バカを見る目で、そいつらは言った。


 *


「クソッ……」


 乱暴にグラスを屋台のカウンターに置く。


「ボトルでくれ」


 店主が差し出したボトルを引っ掴むとグラスに流しこむ。

 

 一息で飲む。

 また、注ぎ込む。


 カウンターに影が差す。

 

 「Kだな」


 振り返ると義体が3人。

 最新のフラッグシップ機。

 ヘリオス・ダイナミクスのロゴ。


 ——企業の私兵か。


「……」


 黙って、真ん中の男に酒瓶を叩きつける。

 怯んだ隙に走る。


 走る。

 

 ——上位身体(ハイエンド)でも、義体には勝てない。逃げるが勝ちだ。



 狭い路地を曲がる。

 

 眼の前に、黒い装甲に覆われた義体。

 身長は優に二メートルを超える。

 バイザーで覆われた顔。


 ——ぶつかる


 と思ったが、機敏に脇に避けてくれた。


 僅かな隙間をすり抜ける。


 後方で衝突音。

 追手の喚き声。

 構わず路地を走り抜ける。 

 

 「はぁ」


 積まれた酒瓶のケースに腰を下ろすと、タバコに火を付ける。


 「このまま、燻ってるわけには行かなそうだな……」

 

 紫煙を吐き出す。


「あの感覚を掴むにしても、もっと不安定なダンジョンじゃなきゃダメそうだな」


 ——かと言って、死んだら練習の成果もパーだ。


「ドクのところ行くか」


 まずは、この身体をできる限り強化する。

 生きて帰ってこれるように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ