放課後はSSS級な美少女と共に
放課後になり、俺はアニメイトに向かおうと、柊を誘おうとすると奴はニヤケ顔で「用事がある」と言って、俺だけアニメイトに向かっていた。
「おい柊、お前も一緒に来いよ。一人だと心細いんだけど」
「やだよー。裕一、せっかく足立さんとデートなのに、僕が邪魔しちゃ悪いだろ」
「デートじゃねぇよ! ただ漫画買いに行くだけだ!」
俺の必死の訴えも虚しく、柊はニヤニヤしながら手を振って去っていった。その背中を見送りながら、俺は小さく舌打ちする。
アイツ、用事があるなんて嘘だな。絶対に俺と足立さんを二人きりにするために、わざと断ったんだ。柊への明らかな疑いを思いながら、俺は待ち合わせ場所のアニメイトに向かって歩き始めた。
学校からアニメイトまでの道のりは、いつもと同じはずなのに、なぜか今日は長く感じる。足立さんと二人きり。四皇の美少女の一人――足立楪とアニメイト。無事に終わるといいんだが。
いや、大丈夫だろ。ただホラー漫画の番外編を買いに行くだけだ。それ以上でも、それ以下でもない。俺は恋愛から距離を置くと決めたんだ。これはただの、趣味が合う友達との買い物。そう、それだけだ。
そう自分に言い聞かせながら、俺はアニメイトの前に到着した。
店の前には、すでに足立さんが立っていた。制服姿のままで、カバンを両手で持って、どこかソワソワしている様子。その姿は、まるで初めてのデートを待つ少女のようで――いや、デートじゃない。
「あ、八杉くん!」
足立さんが俺に気づいて、パッと顔を輝かせる。その笑顔は、夕日に照らされて、どこまでも優しくて、俺は思わず息を呑んだ。
「お、おう。待った?」
「ううん、私も今来たばかりだから。じゃあ、入ろうか」
足立さんは、嬉しそうに俺の隣に並ぶ。その距離は、適度に近くて、でも遠すぎない。ちょうどいい距離感。
俺たちは、アニメイトの中に入る。店内には、平日の放課後ということもあって、学生やサラリーマン、主婦など、様々な客がいた。
「えっと、『人形の家』の番外編は、確かホラーコーナーにあるはずだから……」
足立さんは、慣れた様子で店内を歩いていく。その後ろ姿を見ながら、俺は少し驚く。足立さん、結構アニメイトに来慣れてるんだな。
「あ、あった! 八杉くん、これだよ!」
足立さんが、嬉しそうに一冊の漫画を手に取る。表紙には、『人形の家』のタイトルと、禍々しい人形の絵が描かれている。番外編ということで、本編とは違うキャラクターが描かれているようだ。
「おお、これか。番外編って、本編の前の話なのか?」
「そうそう! 主人公が人形の家に来る前の、別の人物の話らしいの。本編を読んだ後だと、色々と繋がる部分があって面白いんだって」
足立さんは、目を輝かせながら説明する。その姿は、どこか子供のように純粋で、俺は思わず微笑んでしまった。
「へー、じゃあ俺も買おうかな」
「本当? 嬉しい! じゃあ、一緒にレジ行こう!」
足立さんは、俺の腕を軽く引っ張る。その手は、柔らかくて、温かい。俺は、少しドキッとするが、すぐに気持ちを落ち着かせる。
いや、これはただの友達としてのスキンシップだ。深い意味はない。
俺たちは、レジに向かう。レジには、若い女性店員が立っていて、俺たちを見て少し驚いたような顔をした。おそらく、足立さんの美貌に驚いたのだろう。
「こちら二冊でよろしいですか?」
「はい」
俺と足立さんは、それぞれ会計を済ませる。足立さんは、嬉しそうに袋を持って、俺の方を向いた。
「ねぇ、八杉くん。せっかくだから、どこかでお茶でも飲まない? この漫画の感想とか話したいし」
足立さんの提案に、俺は少し迷う。このまま帰れば、無事に今日は終わる。でも、足立さんの期待に満ちた瞳を見ると、断る理由が見つからない。
「あ、ああ……じゃあ、少しだけな」
「やった! じゃあ、駅前のカフェ行こうよ!」
足立さんは、嬉しそうに歩き出す。その後ろ姿を見ながら、俺は小さく息を吐いた。
また、カフェか。昨日は川瀬と足立さんと柊と四人だったけど、今日は二人きり。これは、まずいんじゃないか?
いや、大丈夫だ。ただの友達同士の、趣味の話をするだけだ。それ以上でも、それ以下でもない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、足立さんの後を追った。
駅前のカフェに着くと、俺たちは窓際の席に座った。足立さんは、紅茶を注文し、俺はアイスコーヒーを頼む。
「ねぇ、八杉くん。本編読んでみてどうだった?」
「ああ、面白かったよ。特に心理描写が丁寧で、読んでて引き込まれた」
「でしょ!? 私もそう思ったの! あの作者、本当に上手いよね」
足立さんは、目を輝かせながら話す。その表情は、どこまでも楽しそうで、俺も自然と笑顔になる。
ホラー漫画の話から始まり、他のアニメや漫画の話へと話題は広がっていく。足立さんは、意外とアニメにも詳しくて、俺が好きな作品もいくつか見ているらしい。
「八杉くん、『異世界転生したけど、俺は普通に生きたい』読んでる?」
「え、読んでる読んでる! 柊に勧められて、今ハマってるんだ」
「私も好き! 主人公が、チート能力使わずに普通に生きようとするのが面白いよね」
「そうそう! 周りがどんどん騒がしくなっていくのに、主人公だけ冷静なのが笑える」
俺と足立さんは、笑いながら話す。その時間は、どこまでも楽しくて、心地よい。
ふと、俺は気づく。これは、まずいんじゃないか、と。
足立さんといると、楽しい。話が弾む。一緒にいて心地いい。
でも、これは友達として当たり前の感情だ。恋愛感情じゃない。絶対に違う。
「八杉くん、どうしたの? 急に黙っちゃって」
「あ、いや……何でもない」
足立さんが、心配そうに俺を見つめる。その瞳は、どこまでも優しくて、俺は少しドキッとした。
「もしかして、疲れてる? 無理させちゃったかな……」
「いや、全然疲れてないよ。ただ、ちょっと考え事してただけ」
「そっか。良かった」
足立さんは、ホッとしたように微笑む。その笑顔を見て、俺の心は少しだけ揺らいだ。
いや、揺らいでない。これは、ただの友達としての感情だ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、アイスコーヒーを一口飲んだ。
「ねぇ、八杉くん」
「ん?」
「また、一緒に漫画買いに来てくれる?」
足立さんが、少し恥ずかしそうに尋ねる。その表情は、どこか不安そうで、俺の返事を待っている。
「ああ、いいよ。また新刊出たら、一緒に行こう」
「本当? 嬉しい!」
足立さんは、満面の笑みを浮かべる。その笑顔は、太陽のように眩しくて、俺は思わず目を細めた。
カフェで一時間ほど話した後、俺たちは店を出た。外はすでに暗くなっていて、街灯が道を照らしている。
「じゃあ、私こっちだから」
「ああ、気をつけて帰れよ」
「うん。八杉くんも」
足立さんは、手を振って去っていく。その後ろ姿を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。
楽しかった。本当に、楽しかった。
でも、これは友達としての楽しさだ。恋愛感情じゃない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、家に向かって歩き始めた。
でも、頭の中では、足立さんの笑顔が離れない。
「……面倒くさい」
俺は、小さく呟いた。
恋愛から距離を置くと決めたはずなのに。
でも、足立さんといると、その決意が少しずつ、揺らいでいく気がした。
いや、揺らいでない。絶対に揺らいでない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、夜道を歩き続けた。
でも、心のどこかでは、また足立さんと会いたい、と思っている自分がいた。
その事実に気づかないふりをしながら、俺は家へと帰った。
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