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SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級美少女たちの攻防戦〜  作者: 沢田美


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一人の美少女との過去

「ただいまー、はぁマジで疲れた」


 柊たちと別れて帰宅した俺は、そのまま靴を脱ぐ。その動作がどうも疲れから来る遅さで気に食わない。絶対に神行――いやあの美少女の四皇達のせいだ。カフェで二時間近く拘束されて、アニメの話やら漫画の話やらで盛り上がってしまった。いや、盛り上がったのは事実だが、疲れたのも事実だ。


 俺の家はマンションの一角にあり、そこで姉と一緒に過ごしている。姉はあまり帰宅してこないから、俺は一人の時間が多い。姉は看護師で、夜勤も多いため、家にいないことがほとんどだ。だからこそ、この一人の時間が俺にとっては至福のひとときなのだ。


 そうだ、貯めてたアニメがまだあるんだった。今日は柊が勧めてくれた新作アニメの第三話まで見る予定だ。


 俺は靴を適当に並べてそのままリビングに向かった。玄関から続く廊下を歩きながら、姉の靴がないことを確認する。おそらくまだ帰宅してない。台所に繋がっている扉から入って俺は、冷蔵庫からコーラとポテチを準備する。アニメのお供には欠かせない。


 ルンルンとステップに近い足取りでリビングに向かった。今日の疲れも、アニメを見れば吹き飛ぶだろう。そう思っていた矢先だった。


「――ッ!?」


 俺の足は自然と止まった。それと同時に”またかよ”という心の声が漏れた。そう俺の目の前にはソファでゆったりと漫画を読んでくつろいでいる一人の女がいた。金髪を後ろで緩く結び、制服のブレザーを脱いでYシャツ姿で、靴下も脱いで素足をソファに投げ出している。


 神行晄だった。


「な、なんで! 神行! お前勝手に人の家に入るのやめろよな!?」


 太陽のようにまぶしい存在が今俺の前にいる。俺は思わず目を瞑りたくなる。いや、目を瞑るんじゃなくて、コイツを家から追い出さなければ。


「お! おかえりー! 勝手におじゃましちゃったー」


 悪びれずに足を交互に上下に動かす神行。まるで子犬が尻尾を振っているかのような無邪気さだ。こいつは全く。おそらく学校からそのまま俺の家のマンションに帰ってきたのだろう。だから、制服のままで俺の家のソファでくつろいでいる。手には、俺が買ったばかりの漫画が握られている。勝手に読むな。


 てか、年頃の男の前でそんな無防備にしていいのかよ。スカートの中ワンチャン見えるぞ!? いや、見えてないけど。見てないけど。


「ねぇ、裕一。今変なこと考えなかった?」


「お前はエスパーか!!」


 思わず心の声が漏れてしまった。すると、神行はニヤリと顔を歪める。そして、そのままソファから立ち上がり俺の元まで歩み寄ってくる。その歩き方は、まるで獲物を狙う猫のようで、どこか妖艶ささえ感じさせる。


 その何気ない立ち振る舞いが学校での神行とはどこか違う。学校では明るくて元気な太陽のような存在だが、こうして二人きりになると、どこか大人びた雰囲気を醸し出す。それが、どうにも俺を困惑させる。


 神行はニヤケ顔を崩さずに俺の襟を掴む。その所作がどうもこちらを誘っているようで気が気でならない。顔が、近い。近すぎる。甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐる。


「あのなぁー! お前はさっさと家に帰れ! 俺はアニメを見たいんだよ!!」


 最悪だ。こうなるんだったら、コイツに鍵なんて渡すんじゃなかった。完全に判断ミスだ。いや、渡した当時は、こんな事態になるとは思わなかったんだが。


「お前、このまま勝手に家に入ってくるようなら、鍵返してもらうぞ?」


「いいよー? でも取れるかなぁ? 取り返せるものなら取り返してみなー?」


 神行はニヤニヤとしながら、ポケットから鍵を取り出し、それを神行の豊満な胸の谷間に入れる。そして、こちらを挑発するような顔をしてくる。その表情は、まるで悪戯好きの悪魔のようだ。


「神行! お前どこに入れてんだ!!」


「ほらー? 取ってみなー? 取れる度胸があるならねー?」


 殺す! コイツが超絶美少女で四皇で女じゃなかったら絶対に殺してる! いや、殺さないけど、マジでブチギレてる。


 俺は大きく息を吐いて、神行から距離を取る。こいつの挑発に乗ったら、それこそ負けだ。冷静になれ、冷静に。


「……わかったよ。勝手にしろ。でも、俺はアニメ見るからな」


「えー? 一緒に見ようよー!」


「お前、アニメなんて興味ないだろ」


「あるよー! だって裕一が好きなものは、私も好きになりたいもん」


 神行のその言葉に、俺は少しだけ動揺する。いや、動揺するな。これは幼馴染特有の、ただの友情の発言だ。深い意味はない。絶対にない。


「……まぁ、いいけど。でも、うるさくしたら追い出すからな」


「わーい! やったー!」


 神行は嬉しそうに飛び跳ねる。その姿は、まるで子供のようで、どこか憎めない。いや、憎めないけど、マジで面倒くさい。


 俺はリビングのテレビの前に座り、録画していたアニメを再生する。神行は俺の隣に座り、ポテチを勝手に食べ始めた。お前、本当に遠慮がないな。


「ねぇ、このアニメって何?」


「お前が知ってるわけないだろ。深夜アニメだよ」


「へー、面白いの?」


「まぁ、面白いから見てるんだけど」


 俺はそう答えながら、アニメに集中しようとする。でも、隣に神行がいるせいで、どうにも集中できない。神行の体温が、妙に気になる。いや、気にするな。集中しろ。


 アニメが進むにつれて、神行も徐々に物語に引き込まれていく様子だった。最初は「へー」とか「ふーん」とか言っていたが、途中からは黙って画面を見つめている。その横顔は、学校で見るよりも真剣で、どこか子供っぽい純粋さを感じさせた。


「……面白いね、このアニメ」


 神行がポツリと呟く。その言葉に、俺は少しだけ嬉しくなった。別に恋愛感情とかじゃない。ただ、自分の好きなものを他人が認めてくれるのは、単純に嬉しい。それだけだ。


「だろ? このアニメ、結構深いんだよ。見た目はただのバトルものだけど、実は人間ドラマがメインでさ」


「へー、裕一って結構熱く語るんだね」


「うるさい。好きなものについて語って何が悪い」


 俺はそっぽを向く。神行は、クスクスと笑っていた。


 思えばコイツにこのマンションの鍵を渡したのは、俺が中学のときだ。


 ※ ※ ※


 去年の春、俺がまだとある女子に一途に好意を寄せていた時期。


 当時の俺は、恋愛に対してまだ希望を持っていた。好きな子に告白すれば、もしかしたら上手くいくかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた、今とは違う俺がいた。


 神行とは小学校からの幼馴染で、いつも一緒にいた。というか、神行が一方的に俺にくっついてきていた。当時から、神行のルックスは周囲の注目を集めていて、多くの男子から告白されていた。でも、神行はその全てを断っていた。


 中学三年の春、俺の姉が夜勤が多くなり、俺は一人で家にいる時間が増えた。姉は心配して、「何かあったら近所の神行ちゃんに頼りなさい」と言っていた。


 そんなある日、俺が風邪で学校を休んだ時のことだ。


 一人で寝ていると、玄関のチャイムが鳴った。起き上がる気力もなく、無視していると、再びチャイムが鳴る。そして、三度目のチャイムの後、スマホに神行からメッセージが届いた。


「裕一、風邪って聞いた。大丈夫? おかゆ作ってきたから開けて」


 俺は仕方なく、ふらふらと玄関に向かい、ドアを開けた。すると、そこには心配そうな顔をした神行が立っていた。手には、保温容器に入ったおかゆ。


「バカ、無理して起きなくてもよかったのに」


「お前がしつこくチャイム鳴らすからだろ」


「ごめんごめん。でも、心配だったんだもん」


 神行は俺を部屋に戻すと、おかゆを温め直して、俺に食べさせてくれた。正直、あの時の神行の優しさは、今でも忘れられない。


「ねぇ、裕一。これからも、何かあったら私が来るから。だから、鍵貸してくれない?」


「は? 鍵?」


「うん。だって、裕一が倒れてたら誰も気づかないでしょ? お姉さんも忙しいし。だから、私が合鍵持ってれば、緊急の時に入れるじゃん」


 神行の言葉に、俺は少し考えた。確かに、一人暮らしに近い状態で、何かあった時に誰も気づかないのは危険だ。それに、神行なら信頼できる。


「……わかった。でも、勝手に入ってくるなよ? 緊急の時だけだからな」


「うん! 約束する!」


 神行は嬉しそうに笑った。その笑顔は、太陽のように眩しくて、俺は少しだけ照れくさくなった。


 でも、その約束は、すぐに破られることになる。


 ※ ※ ※


 回想から戻ると、目の前には相変わらずニヤニヤしている神行がいた。


「ねぇ、裕一。あの時のこと覚えてる?」


「……まぁ、覚えてるけど」


「あの時、裕一が鍵くれたの、すごく嬉しかったんだよ。だって、裕一が私のこと信頼してくれてるってことでしょ?」


 神行の言葉に、俺は何も言えなかった。確かに、あの時は信頼していた。でも、その信頼を利用して、こうして勝手に家に入ってくるのは違うだろ。


「でも、お前。緊急の時だけって約束したよな?」


「うん。でも、これも緊急なの」


「何が緊急なんだよ」


「裕一が一人で寂しくしてたら可哀想だから。私が一緒にいてあげなきゃって思って」


 神行は真顔でそう言う。その表情は、どこまでも純粋で、俺は反論する言葉を失った。


「……お前、本当に変わらないな」


「えへへ、でしょ?」


 神行は嬉しそうに笑う。その笑顔を見ていると、まぁ、いいか、という気持ちになってくる。別に恋愛感情とかじゃない。ただ、幼馴染として、こいつがいるのは悪くない。それだけだ。


「じゃあ、アニメの続き見るぞ。お前もちゃんと見てろよ」


「うん! 見る見る!」


 神行は俺の隣に座り直す。その距離は、さっきよりも少しだけ近い気がした。でも、俺は何も言わずに、アニメの続きを再生した。


 画面に映るキャラクター達が、激しいバトルを繰り広げる。神行は、時折「すごい!」とか「かっこいい!」とか言いながら、楽しそうに見ている。


 そんな神行を横目で見ながら、俺は少しだけ思った。


 まぁ、たまにはこういうのも、悪くないかもな。


 でも、それはあくまで幼馴染としての関係だ。恋愛とは、絶対に違う。


 俺はそう自分に言い聞かせながら、アニメに集中しようとした。でも、隣にいる神行の存在が、どうしても気になってしまう。


 その夜、俺と神行は、結局三話分のアニメを一緒に見た。神行は最後まで楽しそうにしていて、俺も、まぁ、悪くない時間を過ごせた。


 ただ、それだけの話だ。


 本当に、それだけの話なんだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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