SSS級なギャルとデート
午後の授業も全て終わり、俺はそのままいつものように優里と一緒に帰ることになっていた。
六限目の授業が終わり、教室は放課後特有の賑やかさに包まれている。部活に向かう生徒、友達と遊びに行く約束をする生徒、それぞれが思い思いに過ごしている。その中で、俺は机の上に散らばった教科書やノートを片付けていた。
最近、柊とは喋れてないから少しだけ寂しいな……。そんな気持ちを抱きながらも、俺は優里と下校する準備をしていた。柊は、部活の見学に行くと言って、既に教室を出ていた。その背中を見送りながら、俺は少しだけ寂しさを感じる。
でも、これも優里を守るためだ。偽の恋人として、できるだけ一緒にいる。それが、今の俺の役目だ。
「ねぇ、八杉っち。せっかく私たちカップルなんだからさ! カップルぽいことしよ!」
優里はいつもの様子で俺に提案した。その声は、どこまでも明るくて、元気だ。カバンを肩にかけながら、キラキラとした瞳で俺を見つめている。
コイツ、相変わらずブレないな。まぁでも優里の提案は良いと思った。ストーカーのことばっか考えてちゃ、いつか絶対悪影響が出てくるからだ。優里も、昨日の佐藤先輩との件で、少なからずストレスを感じているはずだ。だったら、少しでも楽しい時間を過ごした方がいい。
「ああ、そうだな。カップルらしいことな。まぁ俺は優里が笑ってさえいてくれれば、嬉しいんだけどな」
俺は自然とそう口にしていた。別にその言葉に他意はない。ただ自然とその言葉を発していた。優里の笑顔を見ていると、こっちまで元気になる。それだけのことだ。
そして、ふと、視線を優里に向けると彼女は顔を真っ赤にしていた。耳まで赤くなっている。その表情は、いつもの明るい優里とは違って、どこか初々しい。
「どうした? 体調でも悪いのか?」
俺は、心配そうに尋ねる。優里の顔が、こんなに赤くなるなんて珍しい。もしかして、熱でもあるのか?
「い、いや! えと、その。八杉っち……その、いきなりはズルい……」
どこか照れたような顔をしている優里を見て、俺は「うん?」と言葉を漏らす。ズルいって、何がズルいんだ? 俺は、何か変なことを言っただろうか?
「と、とりあえず! 今日はカフェに行こ!」
そう言って、優里は真っ赤な顔を隠すように俺の手を引っ張って、教室を出た。その手は、少し汗ばんでいて、温かい。優里の体温が、俺の手を通して伝わってくる。
俺は、優里に引っ張られるまま、教室を出る。周囲の生徒たちが、俺たちを見て小声で囁き合っている。
「あれ、川瀬さんと八杉って本当に付き合ってるんだ」
「羨ましい……」
「川瀬さん、めっちゃ嬉しそう」
そんな声が、廊下に響く。俺は、少しだけ照れくさくなる。
廊下を歩きながら、俺は優里の横顔を見る。優里は、まだ少し顔を赤らめていて、でもどこか嬉しそうだ。その表情は、どこまでも可愛らしくて、俺は思わず見とれてしまう。
いや、見とれてない。ただ、優里の様子が気になっただけだ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、優里と一緒に学校を出た。
校門を出ると、夕日が街をオレンジ色に染めている。七月の夕暮れは、まだ明るくて、心地よい風が吹いている。街は、放課後の学生たちで賑わっている。
「どこのカフェに行くんだ?」
俺は、優里に尋ねる。
「えっとね、駅前に新しくできたカフェがあるの! インスタで見たんだけど、すごく可愛いの!」
優里は、嬉しそうに言う。その瞳は、キラキラと輝いている。
「インスタか……俺、そういうの全然わからないんだけど」
「大丈夫! 八杉っちは私と一緒にいればいいだけだから!」
優里は、満面の笑みで言う。その笑顔は、どこまでも明るくて、俺は思わず微笑んでしまう。
俺たちは、駅前に向かって歩き始める。道中、優里は色々な話をしてくる。学校であったこと、友達のこと、最近ハマっているドラマのこと。その話は、どれも楽しそうで、優里の明るさが伝わってくる。
「ねぇ、八杉っち。最近、何かハマってることある?」
優里が、俺に尋ねる。
「ハマってること? まぁ、最近見てるアニメが面白いかな」
「へー、どんなアニメ?」
「ファンタジー系のアニメなんだけど、世界観がしっかりしてて、キャラクターも魅力的なんだ」
俺は、少し熱を込めて説明する。アニメの話をすると、ついつい熱くなってしまう。
「八杉っちって、アニメの話するとき、すごく楽しそうだよね」
優里は、クスッと笑う。その笑顔は、どこまでも優しい。
「そ、そうか?」
「うん。目がキラキラしてる」
優里の言葉に、俺は少しだけ照れくさくなる。
そして、俺たちは駅前に到着した。駅前は、多くの人で賑わっている。学生、サラリーマン、主婦、様々な人々が行き交っている。
「あ、あそこ!」
優里が、指差す方向を見ると、そこには可愛らしい外観のカフェがあった。白を基調とした外観に、ピンクの看板。窓には、可愛らしいイラストが描かれている。
「わー、本当に可愛いな」
俺は、素直に感想を言う。
「でしょ! じゃあ、入ろ!」
優里は、嬉しそうに俺の手を引いて、カフェに入る。
店内は、外観と同じように可愛らしい内装だった。白とピンクを基調とした壁紙、木製のテーブルと椅子、壁には観葉植物が飾られている。店内には、若い女性客が多く、インスタ映えを狙って写真を撮っている人もいる。
「いらっしゃいませ! 二名様ですか?」
店員さんが、笑顔で迎えてくれる。
「はい、二名です」
優里が、答える。
「こちらへどうぞ」
店員さんは、俺たちを窓際の席に案内してくれた。窓からは、駅前の風景が見える。
俺たちは、席に座る。優里は、嬉しそうにメニューを見ている。
「わー、どれも美味しそう! 八杉っち、何にする?」
「まぁ、コーヒーでいいかな」
「えー、せっかくなんだから、もっと可愛いの頼もうよ! ほら、このパフェとか!」
優里は、メニューの写真を指差す。そこには、色とりどりのフルーツとアイスクリームが盛られた、巨大なパフェの写真がある。
「いや、俺そんな甘いの食えないぞ……」
「じゃあ、私が頼むから、一緒に食べよ!」
「は?」
「カップルなんだから、一緒に食べるの当たり前でしょ!」
優里は、ニヤリと笑う。その笑顔は、どこか悪戯っぽい。
「わ、わかったよ……」
俺は、諦めて頷く。
優里は、嬉しそうに店員さんを呼んで、注文する。
「いちごミルクパフェと、アイスコーヒー二つお願いします!」
「かしこまりました」
店員さんは、メモを取って去っていく。
俺たちは、料理が来るまで、他愛もない話をする。学校のこと、友達のこと、最近あったこと。その時間は、どこまでも心地よくて、俺は少しずつリラックスしていく。
優里といると、不思議と緊張しない。いつもの明るさと、優しさが、俺を包み込んでくれる。
しばらくして、料理が運ばれてくる。
「お待たせしました。いちごミルクパフェと、アイスコーヒー二つです」
店員さんが、テーブルに料理を置いていく。パフェは、写真で見たよりもさらに大きくて、色とりどりのフルーツが美しく盛り付けられている。
「わー、すごい! 可愛い!」
優里は、目を輝かせながら、スマホでパフェの写真を撮る。その姿は、どこまでも楽しそうだ。
「じゃあ、食べよ! 八杉っち、あーん」
優里は、スプーンにパフェをすくって、俺の口元に持ってくる。
「え、ちょ、待て……」
「いいから! あーん!」
優里は、強引に俺の口にパフェを運ぶ。その感触は、冷たくて、甘い。いちごの酸味と、ミルクの甘さが、口の中に広がる。
「……美味い」
俺は、素直に感想を言う。
「でしょ! じゃあ、次は八杉っちが私に食べさせて!」
「は?」
「カップルなんだから、お互いに食べさせ合うの当たり前でしょ!」
優里は、口を開けて、俺を見つめる。その瞳は、期待でいっぱいだ。
「……わかったよ」
俺は、諦めてスプーンにパフェをすくって、優里の口元に持っていく。
「あーん」
優里は、嬉しそうに口を開けて、パフェを食べる。その表情は、どこまでも幸せそうだ。
「美味しい! ありがとう、八杉っち!」
優里は、満面の笑みを浮かべる。その笑顔を見て、俺は少しだけ胸が温かくなる。
いや、温かくなってない。ただ、優里が喜んでくれて、嬉しいだけだ。
俺たちは、パフェを食べながら、他愛もない話をする。その時間は、どこまでも楽しくて、心地よい。
ふと、優里が真剣な表情で俺を見つめる。
「ねぇ、八杉っち」
「ん?」
「本当に、ありがとね。私のために、偽の恋人になってくれて」
優里の声は、どこまでも感謝でいっぱいだ。その瞳には、涙が浮かんでいる。
「気にするな。困ってる奴を放っておけないだけだ」
俺は、素っ気なく答える。
「でも……八杉っちのおかげで、私、すごく安心してるの。一人じゃないって思えるから」
優里の声は、震えている。その表情は、どこまでも真剣だ。
「……優里」
俺は、優里の名前を呼ぶ。
「私ね、八杉っちと一緒にいると、すごく楽しいの。本当は、こんな状況じゃなくて、普通に……」
優里が、何かを言いかけた時、俺のスマホが鳴る。
俺は、スマホを取り出して、画面を見る。銀咲からのメッセージだ。
「佐藤先輩が、学校の近くをうろついてるらしい。気をつけて」
そのメッセージを見て、俺は少しだけ緊張する。
「どうしたの?」
優里が、心配そうに尋ねる。
「いや、銀咲から。佐藤先輩が、学校の近くをうろついてるらしい」
俺の言葉に、優里の表情が曇る。
「そっか……」
優里の声は、小さくなる。その表情は、少しだけ不安そうだ。
「大丈夫だ。俺がいるから」
俺は、優里に言う。
優里は、少しだけ安心したような表情を浮かべる。
「うん。ありがとう、八杉っち」
優里は、小さく微笑む。
俺たちは、パフェを食べ終えて、会計を済ませる。
店を出ると、外はすでに夕暮れ時だった。空は、オレンジ色から徐々に紫色に変わっていく。
「じゃあ、送ってくよ。優里の家まで」
俺は、優里に言う。
「ありがとう。でも、八杉っちの家、反対方向じゃない?」
「気にするな。優里を一人にするわけにはいかないだろ」
俺の言葉に、優里は少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる。
「八杉っちって、本当に優しいね」
「優しくなんかない」
俺は、素っ気なく答える。
俺たちは、優里の家に向かって歩き始める。
道中、優里は俺の腕に寄りかかってくる。その体温が、俺の腕を通して伝わってくる。
「ねぇ、八杉っち」
「ん?」
「今日、すごく楽しかった。ありがとう」
「……どういたしまして」
俺は、小さく答える。
そして、俺たちは優里の家に到着した。
「じゃあ、また明日ね」
「ああ、気をつけて」
俺は、優里に言う。
優里は、少しの間俺を見つめた後、小さく微笑む。
「八杉っち、本当にありがとう。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
優里は、家の中に入っていく。その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。
今日は、楽しかった。
優里の笑顔を見ていると、こっちまで楽しくなる。
でも、これは友達としての感情だ。恋愛感情じゃない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、家に向かって歩き始めた。
でも、心の奥底では、少しだけ揺らいでいる自分がいた。
その事実に、俺はまだ気づかないふりをしていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。
応援が次回更新の励みになります!




