表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級美少女たちの攻防戦〜  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/7

冷めてしまった恋心

 俺の青春という名の初恋は去年の夏に終わった。一途に思い続けた好きだった子に振られて、俺の恋は幕を閉じた。そして、俺は分かったんだ――恋をするのも一苦労だと。


 中学三年の夏祭り。浴衣姿の彼女に告白して、優しく断られた。「ごめんね、八杉くん」というその言葉は今でも耳に残っている。別にトラウマという訳じゃない。ただ、恋愛というものに対する熱量が一気に冷めてしまっただけだ。


 だから今は、アニメやゲームという趣味に没頭する日々を送っている。恋愛なんて面倒なものより、よっぽど楽しくて確実な娯楽だ。少なくとも、裏切られることはない。


「なぁ陽平。今日の放課後アニメイトでも行かね?」


「良いけど……お前良いのか? 神行さん達と遊んだりしないのか?」


 柊の言葉に、俺は露骨に顔をしかめる。昼休みの教室、弁当を食べながらの会話だ。周囲では数人のクラスメイトが談笑している。その中には、四皇の一人である足立楪の姿もあった。彼女は女子グループに囲まれて、穏やかな笑みを浮かべている。


「アイツらと遊ぶって……俺からしたら苦行でしかないわ」


「贅沢な悩みだな」


 柊は呆れたように笑う。確かに傍から見れば贅沢な悩みかもしれない。だが当事者からすれば、これほど面倒なものはない。特に神行の場合、幼馴染という立場を最大限に利用してグイグイ来る。距離感というものを完全に忘れているあの金髪は、俺にとって天敵以外の何物でもなかった。


 弁当箱の蓋を閉めながら、俺は小さく息を吐く。教室の窓から見える青空は、どこまでも澄み渡っていた。こんな平和な日常がずっと続けばいいのに、と思う。恋愛沙汰に巻き込まれることなく、静かに高校生活を送りたい。それだけが俺の願いだった。


「でもさ、裕一。お前って本当に神行さん達のこと、何とも思ってないの?」


「当たり前だろ。俺はもう恋愛とか興味ないし」


 即答する俺に、柊は少し寂しそうな表情を浮かべた。何だその顔は、と聞こうとした瞬間、教室の扉が勢いよく開いた。


「八杉くーん! お昼ご飯食べた? 私のデザート、一緒に食べない?」


 神行晄だった。手には可愛らしい包装のケーキが握られている。その登場に、教室中の視線が一斉に俺へと向けられた。針のむしろとはこのことだ、と俺は心の中で呻く。


「いや、もう食ったから」


「えー? でもデザートは別腹でしょー? ほら、あーん」


 神行は俺の席まで近づいてくると、フォークに刺したケーキを俺の口元に持ってくる。甘い香りが鼻腔をくすぐるが、それ以上に周囲からの視線が痛い。殺意すら感じる。特に男子からの視線は、明らかに羨望と嫉妬が入り混じったものだった。


「晄、ちょっと待て――」


 俺が制止する暇もなく、神行はケーキを俺の口に押し込んだ。甘い。確かに美味しい。だが、この状況はまったく美味しくない。


「どう? 美味しい?」


「……まぁ、普通に美味い」


「やったー! じゃあ次も私が作ってきてあげるね!」


 神行の満面の笑みに、俺は頭を抱えたくなった。手作りケーキ。つまりこれ、神行が自分で作ったということか。幼馴染の手作り菓子を食べさせられるという、ある意味では羨ましいシチュエーション。だが俺にとっては、ただただ面倒な展開でしかない。


 柊は隣で苦笑いを浮かべている。お前はいいよな、当事者じゃないから笑っていられる。俺の心の叫びは、当然柊には届かない。


「それでね、八杉くん。今度の日曜日、一緒に映画行かない? 面白そうなの、やってるんだよ」


「日曜は用事がある」


「じゃあ土曜日は?」


「土曜も用事」


「えー、じゃあ来週の――」


「晄、お前ちょっとしつこいぞ」


 俺の言葉に、神行はハッとした表情を浮かべた。その瞬間、俺は少しやりすぎたかと後悔する。だが、ここで引いてしまえば、さらに面倒なことになるのは目に見えていた。優しくすればつけ上がる。それが神行晄という人間だ。


「ご、ごめん……また、グイグイいっちゃった」


 神行は申し訳なさそうに笑う。その表情は、どこか寂しげで、俺の胸に小さな棘が刺さったような感覚を覚えた。だが、それを表に出すわけにはいかない。ここで情けをかければ、また同じことの繰り返しになる。


「わかった。じゃあまた今度ね」


 神行はそう言い残して、自分の席へと戻っていった。その背中は、いつもの元気な彼女からは想像できないほど、小さく見えた。


 教室に再び静寂が訪れる。周囲の視線も、徐々に別の場所へと移っていく。俺はホッと息を吐いた。


「……なぁ、裕一。お前、ちょっと冷たすぎないか?」


「冷たくしないと、アイツ際限なく来るんだよ」


 柊の問いに、俺は小さく答える。確かに冷たいかもしれない。だが、これが俺なりの自衛手段だった。神行晄という太陽は、眩しすぎる。近づきすぎれば、火傷する。俺はそれを本能的に理解していた。


 チャイムが鳴り、午後の授業が始まる。教壇に立った教師の声が、教室に響き渡る。俺はノートを開きながら、窓の外をチラリと見た。青空は相変わらず綺麗で、どこか遠い世界のように感じられた。


 放課後まで、あと少し。アニメイトに行って、新刊をチェックして、柊とアニメの話をする。そんな平凡で平和な時間こそが、今の俺には何よりも大切なものだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ