SSS級の事案
俺の名前は八杉裕一。どこにでもいる高校生で、平凡な日常、人生を送りたい人間だ。でも俺の周りはそうはいかない。距離感のバグった幼馴染、ツンデレぽいカリスマ系女子、女神のような女子――そして、偽りのカップルを演じさせられているオタクに優しいギャル。
まぁいい、そんなことより今は現実逃避をしている場合じゃない。俺にはやるべきことがある。まずそれはたった一つ、優里の周りを付け回るストーカーの佐藤先輩をどうにかしないといけないことだ。
昨夜、布団の中で考えた。佐藤先輩は、簡単には諦めないだろう。あの執念深い視線、異常な独占欲。警察に相談しても、証拠がないと動けない。だったら、俺が優里を守るしかない。
でも、どうやって? 俺は、ただの高校一年生だ。喧嘩も強くないし、体格も佐藤先輩には劣る。それでも、何かしなければ。
「おはよう! 八杉くん!」
学校の廊下でそう言って、相変わらずの太陽のような眩さを放っているのは神行だった。神行は俺の腰に抱きつくように来た。その力は、思ったよりも強い。
「おい! お前なぁ! 周りに人がいるだろ! 恥ずかしい!」
俺は、慌てて神行から離れようとする。でも、神行は離してくれない。
「えぇ? 私と八杉くんの仲じゃーん! 昨日だって、一緒に夜を過ごした中じゃん……」
神行がからかうような顔で言うと、周りにいた生徒たちが囁き始める。廊下を歩いていた生徒たちが、一斉に立ち止まって、俺たちを見る。
「え? 二股?」
「浮気?」
「最低」
「川瀬さんと付き合ってるのに……」
そんな声が、廊下に響く。俺は、頭を抱えたくなる。
ダメだコイツ相変わらずのホラ吹きだ。全く俺は一体どうすれば……。そんな時、この窮地を救済するように銀咲が俺達の前に現れた。銀咲の視線は既に鋭く、俺――いや神行を睨んでいる。
その視線は、もはや刃物のように鋭くて、神行も思わず身体を硬直させる。
銀咲は、何も言わずに神行の耳を引っ張り、俺から引き剥がしてくれた。
「いたたた! 明日香、痛い痛い!」
「うるさい。貴方、いい加減にしなさい」
銀咲の声は、どこまでも冷たい。その表情は、完全に怒っている。
「ちょっと、八杉くんと足立と、コイツと、私で話したいことがあるんだけど。昼休み大丈夫?」
銀咲の視線は真剣で何かを考えているような顔だった。いや、きっと優里のことについての相談事だろう。昨日の佐藤先輩との件を、もう知っているのかもしれない。これは行かない手はない。
俺はそのまま銀咲に摘まれている神行を置いて、教室に向かった。
すまない! 神行! お前のことは多分一週間ぐらいまでは覚えておくからな! ――多分!
「ちょっと! 八杉くーん!」
背後から聞こえてくる神行の声を背中に、俺は教室に入った。教室に避難すると、そこには足立さんと優里がいた。二人とも、既に席に座っていて、楽しそうに話している。
「お! おっはー! 八杉っち!」
「おはよう、八杉くん!」
足立さんはいつもの様子で、優里もいつも通りの様子で心のどこかで俺はホッとした。昨日あんなことがあったのに優里は強い人間だな。あの恐怖を味わった後でも、こうして笑顔でいられる。
そんなことを思っていると、優里が俺の手をそっと触ってきた。その手は、少し冷たい。
「昨日は本当にありがとうね。八杉っち」
優里の声は、小さくて、でも感謝でいっぱいだ。その瞳には、少しだけ不安が残っている。
「いや気にするな。あれは完全にあっちが悪い。あれから特に何もなかったか?」
俺は、心配そうに尋ねる。佐藤先輩が、また何か仕掛けてきてないか。家まで尾行してきてないか。
「うん! 特に何も無かったよー!」
優里は、明るく答える。その笑顔は、いつもの優里の笑顔だ。でも、その笑顔の裏に、少しだけ不安が隠れているのがわかる。
俺は、小さく頷く。良かった。でも、油断はできない。佐藤先輩は、まだ諦めていないはずだ。
※ ※ ※
昼休み。俺は銀咲達から屋上へ呼び出されていた。行く前に柊から「四股だけはやめとけよ」と言われたが、こいつは本当にムカつく野郎だな、と思いながら俺は屋上に続く階段を上る。
階段を上りながら、俺は考える。銀咲が、わざわざ四人を集めて話したいこと。それは、きっと優里のストーカーのことだろう。銀咲は、情報収集能力が高い。もしかしたら、佐藤先輩について何か知っているかもしれない。
そして、夏風が吹く屋上に出ると、そこには銀咲と神行、足立さんが既にいた。三人とも、真剣な表情で俺を待っていた。
何だこの神々しい空間は。四皇の内の三人が邂逅を果たしている。これは歴史的瞬間かもしれない――そんな訳ないか。
でも、三人が揃って立っている姿は、どこか圧倒的な存在感を放っている。銀髪の銀咲、金髪の神行、茶髪の足立さん。それぞれが違う魅力を持っていて、でも共通しているのは、その美しさだ。
「お! キタキタ! はやく! 八杉くん!」
神行が、嬉しそうに手を振る。その表情は、さっきまでの耳を引っ張られていた時の痛そうな顔とは全く違う。
「時間通りね、八杉くん」
銀咲が、冷静に言う。その表情は、真剣そのものだ。
「八杉くん、こっち!」
足立さんが、優しく微笑みながら、俺を手招きする。
俺は、三人の方に歩いていく。フェンスに寄りかかって立っている三人の前に、俺は立つ。
「それで、話って何?」
俺は、銀咲に尋ねる。
銀咲は、しばらく俺を見つめた後、口を開く。
「優里のストーカーについてよ。昨日、佐藤先輩と揉めたんでしょ?」
銀咲の言葉に、俺は少し驚く。もう知っているのか。
「ああ、まぁ……そうだけど」
「優里から聞いたわ。佐藤先輩が、かなり執拗に付きまとってるって」
銀咲の声は、どこまでも真剣だ。その表情は、心配そうだ。
「私たちも、何か協力したいの。優里は、私たちの大切な友達だから」
足立さんが、優しく言う。その瞳は、どこまでも真剣だ。
「そうそう! 私も手伝うよ! 優里ちゃんを守らなきゃ!」
神行も、元気よく言う。その表情は、どこまでも真剣だ。
俺は、三人の言葉を聞いて、少しだけ安心する。一人じゃない。優里を守るために、協力してくれる仲間がいる。
「ありがとう。でも、具体的に何をするんだ?」
俺は、銀咲に尋ねる。
銀咲は、腕を組んで、少し考える。
「まず、佐藤先輩の行動を記録すること。ストーカー行為の証拠を集めるの。写真、動画、何でもいい。証拠があれば、警察も動いてくれる」
銀咲の言葉に、俺は頷く。確かに、証拠がなければ、警察も動けない。
「それから、優里を一人にしないこと。登下校は、必ず誰かが一緒にいる。昼休みも、放課後も、できるだけ誰かが一緒にいる」
足立さんが、続ける。その声は、どこまでも優しい。
「私も、できるだけ優里ちゃんと一緒にいるようにするよ!」
神行も、元気よく言う。
俺は、三人の言葉を聞いて、少しだけホッとする。これなら、優里を守れるかもしれない。
「わかった。じゃあ、そうしよう」
俺は、三人に言う。
銀咲は、満足そうに頷く。
「それから、八杉くん。貴方も気をつけなさい。佐藤先輩は、貴方のことを敵視してる。何かされる可能性もあるわ」
銀咲の言葉に、俺は少しだけ緊張する。確かに、佐藤先輩は、俺のことを睨みつけていた。
「ああ、わかってる」
俺は、小さく頷く。
「それから、もう一つ」
銀咲が、続ける。
「もし、何かあったら、すぐに私たちに連絡して。一人で抱え込まないで」
銀咲の言葉に、俺は少しだけ胸が温かくなる。
「ああ、ありがとう」
俺は、三人に言う。
神行が、俺の腕に抱きつく。
「八杉くんも、私たちの大切な友達だからね!」
神行の言葉に、俺は少しだけ照れくさくなる。
「お、おい……離せよ」
「やだー!」
神行は、全く離す気配がない。
足立さんは、優しく微笑んでいる。
銀咲は、少しだけ呆れたような表情を浮かべている。
そんな三人を見ていると、俺は少しだけ安心する。
一人じゃない。
仲間がいる。
優里を守るために、みんなで協力する。
俺は、そう改めて決意した。
そして、昼休みが終わる。
俺たちは、それぞれ教室に戻る。
午後の授業が始まる。
でも、俺の頭の中では、佐藤先輩のことを考えていた。
あの執念深い視線。
あの異常な独占欲。
これから、どうなるんだろう。
俺は、その答えを知らないまま、授業を受けた。
でも、一つだけわかっていることがある。
優里を守る。
そして、この偽の恋人関係を、最後まで演じきる。
俺は、そう決意していた。
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