SSS級のストーカー①
学校終わりのホームルーム前の時間。俺はめんどくさい事に巻き込まれていた。
教室は、放課後特有のざわめきに包まれている。部活に向かう生徒、友達と遊びに行く約束をする生徒、それぞれが思い思いに過ごしている。その中で、俺は優里に腕を絡まれて、完全に周囲の注目を集めていた。
「ねぇ、八杉っち。今日私と一緒に帰ってくれない?」
優里に腕を絡まれて、俺は周りの鋭い視線を感じながら、しばらく優里と教室にいた。もう既にこの学校では"俺と優里は付き合っている"ということになっている。めんどくさくて、めちゃくちゃ嫌なことだが、これも困ってしまっている友達のためだ。
周囲からの視線が、もはや刺さるように痛い。特に男子生徒からの視線は、完全に殺意を帯びている。「あの野郎」「羨ましい」「爆発しろ」という心の声が、はっきりと聞こえてきそうだ。
柊からは羨望の眼差しが向かってくる。その表情は、「お前、本当にすごいな」と言っているようだ。お前は良いよな……お気楽そうで。こっちはこっちで神行とかの優里以外の四皇のメンタルケアをするのに大変だぞ。
「分かった。色々とこっちも話したいことがあるしな」
俺は、小さく頷く。優里のストーカーについて、もっと詳しく聞かなければならない。どんな奴なのか、どこまでエスカレートしているのか。そして、本当に警察に相談したのか。
「やった! じゃあよろしくね!」
優里は、満面の笑みを浮かべる。その笑顔は、どこまでも明るくて、でもどこか安心したような表情だ。
優里との会話をしている間にも、神行、銀咲、足立さんからの視線が痛い。三人とも、複雑な表情で俺たちを見ている。
神行は、少し寂しそうな表情をしているが、でもいつもの明るさを取り戻している。昼休みに話せて良かった。
銀咲は、じっと俺たちを見つめている。その視線は、「ちゃんと優里を守りなさい」と言っているようだ。
足立さんは、優しく微笑んでいる。でも、その笑顔は、どこか寂しそうにも見える。
なんで恋愛を拒絶する俺にこうもあの四人は俺に構ってくるんだろうか。俺は、ただ普通に高校生活を送りたいだけなのに。
そんなことを思っていた時、教室の扉の方から嫌な視線を感じた。それは何者かが誰かを見ているようなそんな視線。ただ人を見る視線じゃない、その視線を常に使っているようなそんな嫌な視線だ。
俺の背筋が、ゾッとする。この視線は、明らかに普通じゃない。まるで、獲物を狙う肉食動物のような、執念深い視線だ。
それを優里も気取ったのか、少し不安そうな顔をして、俺の腕を掴む力が強くなる。その手は、小刻みに震えている。
まだ視線は俺たちを見ているので、俺はその視線の方向に目を向けた。すると、教室の扉の窓から、こちらを覗き込んでいる男の姿が見えた。明らかな陽キャな雰囲気を醸し出している男だ。
その男は、身長は180センチくらいで、体格もがっしりしている。髪は茶色く染めていて、ピアスをつけている。制服は着崩していて、どこか不良っぽい雰囲気だ。でも、顔立ちは整っていて、女子からモテそうなタイプだ。そして、胸元には二年生の学年章がついている。
その男は、優里をじっと見つめている。その視線は、どこまでも執念深くて、気持ち悪い。まるで、優里を自分のものだと思っているような、独占欲に満ちた視線だ。
そして、俺に気づくと、その男は明らかに不快そうな表情を浮かべる。その目は、俺を睨みつけている。まるで、「お前、何でそこにいるんだよ」と言っているようだ。
「あれか? お前を付け回してる犯罪者予備軍は」
俺は小声で優里に耳元で囁いた。すると、優里は何故か頬を赤らめながら、コクコクと小さく頷いた。
「そう……あいつが、私を付け回してる奴。二年生の佐藤って人」
優里の声は、小さくて震えている。その表情は、明らかに怯えている。
俺は、再びその男――佐藤を見る。佐藤は、まだ優里を見つめている。その視線は、どこまでも執念深くて、気持ち悪い。廊下から教室の中を覗き込むその姿は、完全に異常だ。
周囲の生徒たちも、佐藤の存在に気づき始めている。教室がざわつき始める。
「うわ、二年生が覗いてる……」
「あれ、佐藤先輩じゃない?」
「何してんの? キモくね?」
そんな囁き声が、教室に広がる。
佐藤は、周囲の視線に気づくと、舌打ちをして去っていく。でも、その前に、もう一度優里を見つめ、そして俺を睨みつけた。その視線には、明らかな敵意が込められていた。
優里は、大きく息を吐く。
「ごめんね、八杉っち……あいつ、最近ずっとあんな感じなの。授業中も、廊下から覗いてたり、休み時間には教室の前をうろついてたり……」
優里の声は、不安でいっぱいだ。その手は、まだ俺の腕を強く掴んでいる。
「それ、完全にストーカーじゃないか。警察には相談したのか?」
「うん……一応相談はしたんだけど、まだ何もされてないから、証拠がないって。写真とか撮っておいてくださいって言われたんだけど、怖くて……」
優里の声は、どんどん小さくなっていく。
俺は、小さく息を吐く。警察も、証拠がないと動けないのはわかる。でも、それでは優里が危険に晒されたままだ。
「わかった。これからは、できるだけ一緒にいるようにする。それと、もし何かあったら、すぐに俺に連絡しろ」
俺は、優里に言う。
優里は、少し安心したような表情を浮かべる。
「ありがとう、八杉っち。本当に、ありがとう……」
優里の声は、感謝でいっぱいだ。
神行が、心配そうな顔で俺たちの方に近づいてくる。
「八杉くん、優里ちゃん、大丈夫? 今の二年生、何だったの?」
「ああ、ちょっとな……」
俺は、曖昧に答える。ここで詳しく説明したら、また騒ぎになる。
銀咲も、鋭い視線で俺たちを見ている。
「八杉くん、後で話があるわ」
銀咲の声は、どこまでも厳しい。
「ああ、わかった」
俺は、小さく頷く。
足立さんも、心配そうな表情で俺たちを見ている。
「八杉くん、優里ちゃん、何かあったら私にも言ってね」
「ああ、ありがとう」
俺は、足立さんに答える。
そして、ホームルームが始まる。
担任の先生が、教室に入ってくる。
俺は、自分の席に座る。
優里も、自分の席に戻る。でも、時々俺の方を見て、小さく微笑む。
柊が、隣で小声で尋ねてくる。
「おい、裕一。あの二年生、マジでヤバそうだな」
「ああ、完全にストーカーだ」
「お前、大丈夫か? あんな奴に目をつけられて」
「まぁ、何とかするよ」
俺は、小さく答える。
でも、心の中では、少しだけ不安だった。
あの佐藤という男の、執念深い視線が忘れられない。
二年生という、俺たちより学年が上の存在。体格も良くて、喧嘩も強そうだ。
これから、どうなるんだろう。
俺は、小さく息を吐いた。
ホームルームが終わり、放課後になる。
俺は、優里と一緒に学校を出る。
校門を出ると、優里は俺の腕を掴む。
「ありがとね、八杉っち。これから、よろしくね」
「ああ、任せとけ」
俺は、優里に答える。
そして、俺たちは一緒に帰り道を歩く。
でも、時々、後ろを振り返る。誰かに見られているような、そんな気がするからだ。
優里も、同じように不安そうに周囲を見渡している。
「大丈夫だ。俺がいるから」
俺は、優里に言う。
優里は、小さく頷いて、俺の腕にしがみつく。
これから、どうなるかわからない。
でも、優里を守る。
俺は、そう決意しながら、帰路についた。
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