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SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級美少女たちの攻防戦〜  作者: 沢田美


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傷つけてしまったヒロインたち

 次の週の月曜日、俺は先週の土曜日の出来事を振り返っていた。突然始まった優里との偽りとはいえ恋仲となってしまったこと。それを神行が知ってしまっていること。


 やばかったな、あの日は。特に神行のテンションの落差が激しかったな。ファミレスでの食事中、神行は終始不機嫌そうで、優里と俺の関係について何度も確認してきた。そして、別れ際には「また明日ね」といういつもの明るい挨拶もなく、ただ小さく手を振っただけだった。


 俺にとっては恋愛なんてどうでもいいし、それに神行が俺のことをどう思っているかなんて、正直興味がない。幼馴染として大切に思ってはいるが、それ以上でもそれ以下でもない。でも、土曜日の別れ際、神行は少し寂しそうな顔をしていたのを覚えている。あの表情が、どうしても頭から離れない。


「はぁー、めんどくさいなー」


 そんなことを呟きながら、俺は学校に行く支度をする。姉は既に出勤していて、テーブルには姉が作ったおにぎりが置かれていた。『今日も頑張ってね』と付箋で貼られた皿を見てつい頬が緩む。姉は忙しいのに、いつもこうして俺のことを気にかけてくれる。


 そして、俺はおにぎりを片手に食べながら、そのまま靴を履いて学校へ向かった。道中にはサラリーマンや学生がいる。一見なんともない光景だ。いつも通り、だからこそ今日はいつも通りに過ごしたい。


 でも、その願いは叶わないだろう。優里との偽の恋人関係が始まってしまった以上、もう平穏な日常は戻ってこない。


 ※ ※ ※


 学校の校門前まで来ると、俺の肩が突つかれた。俺は自然と視線を背後に向けると、頬をプシュッと突かれる。そこに居たのは、相変わらず明るい顔をしている優里がいた。


 オレンジ色の金髪をポニーテールにまとめていて、いつもより少し派手なメイクをしている。制服のスカートも、心なしか短い気がする。


「よっ! おはよう! 八杉っち!」


 普通と言ったところか。今のところは。優里の笑顔は、いつも通り明るくて、先週の不安そうな表情は微塵も見せていない。


 ――そんな時、俺の腕を優里が絡める。周りの視線が一気に俺たちへと集中する。全く、なんで俺はこうも荷が重いことばかり……。


 通学路を歩いていた生徒たちが、一斉に立ち止まって俺たちを見る。その視線は、驚き、羨望、嫉妬、様々な感情が混ざっている。特に男子生徒からの視線は、もはや殺意に近い。


「しばらくは私の彼氏でいてね! 八杉っち」


 俺の耳元で小声で囁く優里。その声は、どこか切実で、でも明るさを装っている。俺は思わず耳を抑える。優里の吐息が、耳にかかって、少しくすぐったい。


 そして、俺と優里は二人並んで教室へと向かった。教室に向かうまでの道中で、周りの視線がやはり俺たちに集まる。廊下を歩く生徒たちが、俺たちを見て小声で囁き合っている。


「あれ、川瀬さんじゃない?」


「隣にいるの、誰?」


「八杉? って誰だよ」


「まさか、付き合ってるの?」


 そんな囁き声が、廊下に響く。


 なんせ、四皇の一人の女子と見ず知らずの凡夫の俺が並び立っているのだから。まさに月とすっぽんだ。天と地の差があるほどに俺の存在感が薄まる。いや、薄まるというより、逆に目立ってしまっている。悪い意味で。


「なぁ、お前を付け回してる奴って、誰なんだよ」


 ふと、疑問に思ったことを聞くと、優里はどこか暗い顔をした。その表情は、一瞬だけ見せた不安そうな顔で、すぐに笑顔に戻る。そして、小さな声で言った。


「その話は放課後でいいかな?」


「ま、まぁ。いいけど」


 優里の表情が曇ったのを見て、俺は少しだけ心配になる。相当、深刻な状況なのかもしれない。


 そんな話をしていると、一年棟の教室に着いた。そして、俺と優里はそのまま教室に入った。その瞬間、教室中の生徒たちの目線が俺たちに四方八方から刺さる。


 マズイ。これは本当にまずいな。その視線の中には足立さん、銀咲、神行もいた。三人とも、俺たちを見て、明らかに驚いた表情を浮かべている。


 足立さんは、優しい笑顔を浮かべているが、その目は少し曇っている。銀咲は、眉をひそめて、俺たちを見つめている。神行は、完全に固まっている。


 ――さて、どう言い訳しようか。今この状況は優里が俺の腕を絡ませていて、明らかに他者から見ればカップルにしか見えない。


 俺は、優里から腕を離そうとするが、優里は離してくれない。その力は、思ったよりも強い。


「おっはー! 足立っち、明日香っち、晄っち!」


 優里はいつも通りのテンションで、四皇の内の三人に歩み寄る。俺も強引に連れていかれるように三人の前に立つ。――いや、教室全員の前に立つに近いかもしれない。


 教室中の視線が、俺たちに集中している。その視線は、もはや刺さるような痛みを感じる。


「お、おはよう。優里ちゃん。なんか八杉くんとカップルみたいな感じだね……」


 足立さんが、少し困惑したような表情で言う。その顔が少し曇ったようなモノになっている。いつもの穏やかな笑顔ではなく、どこか無理をして笑っているような表情だ。


 銀咲も神行も同じだ。銀咲は、腕を組んで、じっと俺たちを見つめている。その視線は、鋭くて、まるで俺の心を見透かしているようだ。


 神行は、完全に固まっている。口を半開きにして、俺たちを見つめている。その表情は、驚きと、そして何か別の感情が混ざっている。


 そして、優里がふと口を開いた。


「あ! そうそう! 私と八杉っち付き合うことになったんだー! ね! 八杉っち!」


 優里は、満面の笑みで言う。その声は、教室中に響く。


 俺は、一瞬言葉に詰まる。ここで否定するべきか? それとも、演技を続けるべきか?


 優里は、俺の方を見て、小さく頷く。その瞳は、「お願い」と訴えている。


 俺は、小さく息を吐いて、答える。


「――あ、ああ。まぁそうなる……な」


 その瞬間、空気が完全に止まった。


 教室中が、静まり返る。誰一人として、声を出さない。ただ、俺たちを見つめている。


 足立さんは硬直して動かない。その表情は、完全に驚きで固まっている。口を少し開けて、俺たちを見つめている。


 神行はまだどこか受け入れきれてないようで、目を大きく見開いて、俺を見つめている。その瞳には、涙が浮かんでいる。


 銀咲も神行と同じような反応をしている。でも、銀咲の表情は、驚きだけでなく、どこか怒りも混ざっているように見える。


 そして、数秒の沈黙の後、教室中がざわめき始める。


「え、マジで?」


「川瀬さんが八杉と?」


「あの八杉って誰だよ」


「うそだろ……」


 様々な声が、教室に響く。その声は、驚き、嫉妬、困惑、様々な感情が混ざっている。


 特に男子生徒からの視線は、もはや殺意そのものだ。俺は、思わず身構える。


 柊は、俺の席の前で、呆然としている。その表情は、「お前、何やってんだよ」と言っているようだ。


「裕一……お前、マジかよ……」


 柊が、小声で言う。その声は、驚きと、そして少しの羨望が混ざっている。


「あ、ああ……まぁ、色々あって……」


 俺は、曖昧に答える。柊には、後で本当のことを話さなければならないだろう。


 そして、神行が動いた。


 神行は、俺たちの方に歩み寄ってくる。その表情は、どこまでも真剣で、そして悲しそうだ。


「八杉くん……本当なの?」


 神行の声は、震えている。その瞳には、涙が溢れそうになっている。


 俺は、言葉に詰まる。神行のこんな表情、見たことがない。いつも明るくて、元気な神行が、こんなに悲しそうな顔をしている。


「あ、ああ……本当だ」


 俺は、小さく答える。その言葉は、まるで嘘をついているような、罪悪感に満ちている。


 神行は、少しの間俺を見つめた後、小さく頷く。


「そっか……」


 その声は、どこまでも小さくて、悲しそうだ。


 そして、神行は自分の席に戻っていく。その背中は、どこか寂しそうで、俺は少しだけ胸が痛んだ。


 足立さんも、複雑な表情で俺たちを見ている。


「そうなんだ……おめでとう、八杉くん、優里ちゃん」


 足立さんは、そう言って笑顔を作る。でも、その笑顔は、どこか無理をしているように見える。


 銀咲は、じっと俺を見つめている。その視線は、鋭くて、まるで「後で話がある」と言っているようだ。


 俺は、小さく息を吐く。


 最悪だ。本当に、最悪だ。


 偽の恋人関係を公にしてしまった。これから、どうなるんだ。


 優里は、相変わらず明るい笑顔を浮かべている。でも、その手は、俺の腕を強く握っている。その力は、どこか不安を隠しているようだ。


 俺は、優里の方を見る。優里は、小さく「ありがとう」と口を動かす。


 俺は、小さく頷く。


 これから、どうなるかわからない。


 でも、優里を助けるためなら、この演技を続けるしかない。


 たとえ、それが神行や足立さん、銀咲を傷つけることになっても。


 俺は、そう覚悟を決めた。


 教室のざわめきは、まだ続いている。


 俺の学校生活は、完全に変わってしまった。


 そして、四皇の三人との関係も、もう元には戻れないかもしれない。


 俺は、その事実を受け入れながら、自分の席に座った。


 柊は、隣で呆れたような顔をしている。


「お前、本当にすごいな……」


「うるさい」


 俺は、柊の言葉を無視して、机に突っ伏した。


 今日一日が、どうなるのか。


 想像したくもなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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