それぞれの皇帝からのSSS級の声援
昼休みに神行と川瀬に巻き込まれたあとは、特に何も無かった。ただひとつだけ言えることがあるとしたなら、柊にはめちゃくちゃからかわられたりした。こいつは俺の身になったことがないから、俺にあんなニヤニヤしながら毒を吐けるんだ。
「なぁ裕一、お前屋上で二人の美少女に挟まれてお昼食べてたらしいな。羨ましすぎるだろ」
「うるさい。俺だって好きでそうなったわけじゃねぇよ」
「でも、嫌そうには見えなかったぞ?」
「見てたのかよ!」
柊は、ニヤニヤしながら俺をからかう。その表情が、どこまでも楽しそうで、俺は少しイラッとする。
きっと柊には人の心とかない。その後の午後の授業は案外何事もなく終わって行った。数学、英語、と淡々と授業が進む。俺は、ノートを取りながら、明日のことを考えていた。
神行と川瀬と三人でアニメイト。想像しただけで、疲れる。でも、どこか楽しみな気持ちもある。いや、楽しみじゃない。ただ、面倒くさいだけだ。
そして、六限目。科目は体育だった。男女で教室に別れて、体操着に着替える。俺と柊はアニメの話でもしながら、体操着に着替え終える。
「なぁ、昨日のアニメ見た?」
「見た見た。やっぱり面白いよな」
「だろ? 次回も楽しみだわ」
そんな会話をしながら、俺たちは体育館に向かう。廊下には、既に体操着に着替えた生徒たちが歩いている。
そして、体育館に集合した俺たち男子は、バスケをすることになった。女子はと言うと別コートでバドミントンだ。あの四人の皇帝とは物理的に分かれることはできたが、どうにも俺への視線が集まる。しかも、女子がいる方から。
ふと、視線をそちらへ向けると、そこには大きなネット越しに俺を見つめる神行がいた。その目力は凄まじく、美少女じゃなければただの"ヤバいやつ"認定されてもおかしくない。いやおかしい奴だ。
神行は、バドミントンのラケットを持ったまま、じっと俺を見つめている。その視線は、どこまでも真剣で、まるで獲物を狙う猫のようだ。
「おい裕一、神行さんに見られてるぞ」
「わかってるよ……」
柊が、ニヤニヤしながら言う。その表情が、どこまでも楽しそうで、俺は少しムッとする。
「お前、楽しんでるだろ」
「当たり前だろ。お前のこういう状況、見てて面白いもん」
柊は、笑いながら言う。その言葉に、俺は小さく舌打ちする。
そして、バスケが始まる。俺は、柊と同じチームで、他のクラスメイトと一緒にプレイする。ドリブル、パス、シュート。久しぶりのバスケは、意外と楽しい。
でも、時折、女子コートからの視線を感じる。神行だけじゃなく、他の女子たちも、こちらを見ているようだ。
そして、一旦バスケをし終えたあと、休憩の時間が挟まれた。大きなネットの向こう側では、女子たちがまだバドミントンをしている。
そんな時、男子たちは歓喜の眼差しと黄色い声援を女子たちに向けていた。――特に四皇の四人に。
「うわ、神行さんめっちゃ可愛い……」
「銀咲さんのフォーム、マジで綺麗すぎる……」
「足立さん、天使かよ……」
「川瀬さん、スタイル良すぎだろ……」
男子たちの声が、体育館に響く。その声は、どこまでも羨望に満ちていて、俺は少し呆れる。
確かに、四人とも可愛い。それは認める。でも、こんなに騒ぐ必要はないだろ。
ふと、俺は女子コートに視線を向ける。すると、そこには四皇の四人が、それぞれバドミントンをしている姿があった。
神行は、元気にシャトルを打ち返していて、その動きは軽やかだ。金髪がポニーテールで揺れていて、どこか活発な印象を与える。
銀咲は、完璧なフォームでシャトルを打っていて、その姿は優雅だ。銀髪が風になびいて、まるで絵画のように美しい。
足立さんは、おっとりとした動きでバドミントンをしていて、その姿はどこか癒される。穏やかな笑顔を浮かべながら、楽しそうにプレイしている。
川瀬は、ギャルらしい派手な動きでシャトルを打っていて、その姿はエネルギッシュだ。オレンジ色の金髪が揺れていて、どこまでも元気な印象を与える。
四人とも、それぞれ違う魅力があって、見ているだけで飽きない。
いや、見てる場合じゃない。俺は、視線を戻そうとした。
でも、その時、神行と目が合った。
神行は、俺に気づくと、満面の笑みを浮かべて、手を振ってくる。その笑顔は、どこまでも眩しくて、俺は思わず目を細める。
そして、神行は何かを叫んでいる。声は聞こえないが、口の動きから「がんばって!」と言っているのがわかる。
俺は、少し照れくさくなって、小さく手を振り返す。
すると、神行の隣にいた川瀬も俺に気づいて、同じように手を振ってくる。
「八杉っち、ファイトー!」
川瀬の声が、体育館に響く。その声は、どこまでも元気で、周囲の視線が一斉に俺に向けられる。
やめてくれ、川瀬。周りの男子からの殺気が、もはや刃物のように鋭い。
そして、足立さんも俺に気づいて、優しく微笑みながら、小さく手を振ってくる。その仕草は、どこまでも優雅で、女神のようだ。
「八杉くん、頑張ってね」
足立さんの声は、小さくて聞こえないはずなのに、何故か俺の耳にははっきりと届いた気がした。その優しい笑顔を見て、俺の心は少しだけ温かくなる。
そして、銀咲も俺の方を見ている。銀咲は、他の三人のように派手に手を振ることはしないが、じっと俺を見つめて、小さく頷く。その仕草は、どこか「しっかりやりなさい」と言っているようで、俺は少し背筋が伸びる。
四皇全員から応援されている。この状況、完全に異常だ。
「おい裕一、お前……四皇全員から応援されてるぞ」
「わかってるよ……」
柊が、呆れたように言う。その声には、羨望と同情が入り混じっている。
「お前、マジですごいな。っていうか、もう学校中の男子から恨まれてるだろ」
「やめてくれ、それ……」
俺は、小さく息を吐く。周囲からの視線が、もはや殺気に近い。特に、四皇のファンと思われる男子たちからの視線は、完全に殺意を帯びている。
でも、四人から応援されて、嬉しくないと言えば嘘になる。
いや、嬉しくない。ただ、応援されてるのが励みになるだけだ。恋愛感情とかじゃない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、再びバスケに集中する。
休憩が終わり、バスケが再開される。俺は、さっきよりも気合を入れてプレイする。ドリブル、パス、シュート。身体を動かしていると、余計なことを考えずに済む。
そして、俺がシュートを決めた瞬間、女子コートから歓声が聞こえた。
「やったー! 八杉くん、すごい!」
神行の声だ。
「八杉っち、かっこいいー!」
川瀬の声も聞こえる。
ふと女子コートを見ると、四人が揃って俺を見ていた。
神行は、満面の笑みで拍手している。川瀬も、嬉しそうに飛び跳ねながら拍手している。足立さんは、優しく微笑みながら、静かに拍手している。銀咲は、少しだけ頬を赤らめながら、小さく拍手している。
四皇全員から拍手されている。この状況、本当に異常だ。
周囲の男子たちからの視線が、更に鋭くなる。もはや、殺意しか感じない。
「裕一……お前、帰り道気をつけろよ」
「マジでやめてくれ……」
柊の言葉に、俺は頭を抱える。
でも、四人から応援されて、少しだけ嬉しかった。
いや、嬉しくない。ただ、励みになるだけだ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、バスケを続けた。
そして、体育の授業が終わる。俺たちは、汗をかきながら、更衣室に戻る。
「お疲れ、裕一。今日も四皇全員から応援されまくってたな」
「うるさい」
柊は、相変わらずニヤニヤしている。その表情が、どこまでも楽しそうで、俺は少し呆れる。
「でも、お前も嬉しそうだったぞ」
「嬉しそうじゃねぇよ」
「いや、絶対嬉しそうだった。顔に出てたぞ」
柊の言葉に、俺は少しムッとする。でも、否定する言葉が見つからない。
確かに、四人から応援されて、少しだけ嬉しかった。でも、それは友達として当たり前の感情だ。恋愛感情じゃない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、制服に着替えた。
更衣室を出ると、廊下には既に制服に着替えた女子たちがいた。その中に、四皇の四人もいる。
神行は、俺に気づくと、すぐに駆け寄ってくる。
「八杉くん! お疲れ様! バスケ、めっちゃかっこよかったよ!」
「あ、ああ……ありがとう」
神行は、満面の笑みを浮かべる。その笑顔を見て、俺は少しだけ照れくさくなった。
そして、川瀬も駆け寄ってくる。
「八杉っち、マジでかっこよかった! あのシュート、決まった時、私も嬉しくなっちゃった!」
「お、おう……」
川瀬は、キラキラとした瞳で俺を見つめる。その視線に、俺は少しドキッとする。
足立さんも、優しく微笑みながら近づいてくる。
「八杉くん、お疲れ様。すごく頑張ってたね」
「あ、ありがとうございます……」
足立さんの優しい笑顔を見て、俺の心は少しだけ温かくなる。
そして、銀咲も、少し離れた場所から俺を見ている。銀咲は、他の三人のように駆け寄ってくることはしないが、じっと俺を見つめて、小さく頷く。
「……悪くなかったわよ」
銀咲の声は、小さくて、でもはっきりと聞こえた。その言葉に、俺は少しだけ嬉しくなる。
「明日、楽しみにしてるからね!」
神行が、嬉しそうに言う。
「私も!」
川瀬も、同意するように言う。
「あ、ああ……わかってる」
俺は、少し照れくさそうに答える。
四人は、それぞれ嬉しそうに笑って、自分のクラスに戻っていく。その後ろ姿を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。
「……明日、どうなるんだろうな」
俺は、小さく呟いた。
柊は、隣でまたニヤニヤしている。
「楽しみだな、裕一」
「うるさい」
俺は、柊の言葉を無視して、教室に戻った。
放課後まで、あと少し。
そして、明日は、神行と川瀬と三人でアニメイト。
想像しただけで、疲れる。でも、どこか楽しみな気持ちもある。
いや、楽しみじゃない。ただ、面倒くさいだけだ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、最後の授業を受けた。
でも、心の奥底では、明日が楽しみな自分がいた。
そして、四人から応援されたことが、少しだけ嬉しかった自分もいた。
その事実に、俺はまだ気づかないふりをしていた。
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