創設者の真実 エメトとセナ
リサは中央に立ち、静かに、だが曇りのない声で語り始めた。
「──まず最初に訂正しておくわ。
1000年程前、勇者エメトとセナは“処分”されたんじゃない。彼らは、生き延びた。」
幹部たちが小さくざわつく。
「魔王討伐の最中、エメトは真実に気づいた。
魔王神話は政府が作り上げた“支配の物語”だと。だから彼は名前を捨て、セナとともにレジスタンスを立ち上げたの。同時に、その隠れ蓑として宗教団体──“希望の光”の原型を作った。」
リサはゆっくりと視線を巡らせ、言葉を続ける。
「表向きの教えは“魔王のいる世界でも光を見失うな”。でも裏では、魔王神話を否定する証拠を集めて、いつか“真実を告げられる時”が来るまで、静かに力を蓄える場所だった。」
ひと呼吸置く。
「エメトとセナの思想は、時代とともに地下へ潜り、形を変えた。それが──私たちレムナント。そして、表向きには民衆教育システムとして整備され、国家にすら利用され続けたものが“希望の光”という宗教よ。」
リサの声がすっと落ちる。
「表と裏。
どちらもエメトが遺した“戦うための仕組み”。
私たちはただ、その続きを担っているだけ。」
「……まさか、根は同じだったというのか?」
「そう。
ただし政府は気づいていない。
“両組織の創設者が同一”だなんて、知れば即粛清。
だから数百年、誰も繋げなかった。
私が二つの顔を持ち続けたのも、そのため。」
リサは悠を見る。
「そしてここに、エメトの“真実”に触れた少年が現れた。
偶然じゃない──世界が動く合図よ。」
悠は小刻みに震え、しかし逃げず、彼女の視線に応えた。
(……なんかとんでもないことに巻き込まれてしまったな……)




