第4章:急襲と本部へ
瓦礫と粉塵が舞い散る非常階段を駆け下りながら、悠は何度も振り返った。追ってくる掃除屋の影が、揺らぐ光の中でぼやけて見える。耳鳴りが続き、呼吸が痛い。
「まだ来てる……っ!」
「大丈夫、撒く。下に行けばレムナントの回収班が──」
スカーレットが言いかけた瞬間、無線がノイズまじりに割り込んだ。
《……回収班、壊滅。掃除屋の増援……前倒しされた。》
「くそっ……スパイの情報が漏れたわね」
スカーレットは舌打ちし、悠の腕をさらに強引に引いた。
階段を降り切った先、ビル裏手の路地に黒い装甲バンが滑り込むように停まる。ドアが開き、中からレムナントの隊員たちが叫んだ。
「スカーレット! 早く!」
二人が飛び乗った瞬間、後ろで爆発が起きた。ビルの上階が崩れ、炎が夜空を赤く染める。
「発進ッ!」
装甲バンが急発進し、暗い裏路地を抜けていく。悠はシートにしがみつきながら、急速に壊れていく自分の日常を、ただ呆然と見送るしかなかった。
(もう……戻れないんだ)
その感覚が、腹の底で重苦しく広がった。
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◆レムナント本部──黒鉄の聖堂
都市の外れ、工業地帯の廃工場群。そのひとつに、廃墟とは思えないほど厳重な地下施設が隠されていた。
金属扉が重く開き、内部の白い光が二人を迎える。
レムナントの象徴──“黒鉄の牙”の紋章が壁に刻まれていた。
悠は息を呑む。
(ここが……レジスタンスの本部……)
スカーレットは表情を引き締めたまま、悠を連れて奥へ進む。その途中、隊員たちの視線が刺さる。
「あれが……例の一般人か」
「スカーレットは何を考えてる」
「スパイじゃないのか?」
陰口が聞こえる。そのすべてが悠の胸を刺した。
だがスカーレットは一切怯まない。
「この子はエメトの真実に触れた。
──その価値を理解できないなら、あなたたちの方が危険よ」
その一言で空気が凍りつく。
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◆“三人の顔”の暴露
本部最奥、会議室。
レムナント幹部が数名、険しい表情で待っていた。
「スカーレット。説明してもらうぞ。」
銀髪の男──レムナント副司令イグナーツが低い声で告げる。
「一般人を勝手に保護し、しかも本部へ連れ込むなど前代未聞だ」
「前代未聞だからこそ連れてきたのよ。彼が持つ情報は──」
そのとき。
――パァンッ!!
乾いた音が会議室に響いた。
アスナの顔を模したホログラムが突然空中に投影され、希望の光の団員が緊急通信を叫んでいる。
《総師アスナ!! 神殿が襲撃されています!! 内部の長老派が──裏切……っ!》
通信はそこで途切れた。
レムナント側がざわつく。
「アスナ? どこかで聞いた名だな……」
そのとき、イグナーツがゆっくりとスカーレットを見た。
「……まさか、“おまえ”じゃあるまいな」
沈黙。
悠の視線はスカーレットに向いた。
彼女は、逃げず、隠さず……ただ静かに肯定した。
「ええ。アスナもスカーレットも──リサも。
全部、私よ。」
会議室が爆ぜるように騒然となる。
「は!? 何を……ッ!」
「希望の光の総師と、レムナントのリーダー……? 両方を同一人物が?」
「どうやって隠し通していた……!」
悠は言葉を失った。
(スカーレット……いや、リサさんは……
宗教団体のトップで、レジスタンスのリーダーでもあったのか……)




