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学校の彼女を存在をスルーしたい男

 早朝、俺ーー仲田健吾は朝の準備に追われていた。 朝飯と昼の弁当を用意しないといけない、それも二人分だ。 さて、用意も終わった所だしそろそろ、アイツを起こしに行くかーー。


 俺は家を出て、すぐ近くの家に入る。 カギはこの家の許可を得て合鍵をもらっている。 


 「おーい、朝だぞ!」と玄関先で声を出すが返答がないーー 俺は小さくため息を吐きながら閉ざされた、ドアの前に立った。 ドアをノックするが反応はない。 中に入るのは、嫌だが仕方ない、俺はドアを開けた。


 「おい! えり! 朝だぞ、起きろ!」

 「無理⋯⋯後三時間寝かせて~」

 「遅刻するぞ! ⋯⋯ご飯いらないのか? せっかくハンバーグ作ったのにな⋯⋯」

 「え~行く! すぐ行く」


 そう言うと寝巻き姿のままで、部屋を飛び出す彼女。 ーーおい、そのままの格好で外に出るのかよ。 いくら近くても外だぞ。 俺は今度は大きくため息をついた。


 彼女ーー三浦英里は俺の幼馴染だ。 俺と彼女の両親は、俺たちが生まれる前から仲がよく、休日にはよく遊びに行くが、今は平日は共働きのため彼女の世話は俺がすることになったのだがーー。

 

 「健吾、ハンバーグおかわり!」

 「ハンバーグのおかわりはないぞ」

 「えぇ! ⋯⋯でもそこにあるじゃん」

 「これは、弁当用だ!」

 「なにさ、ケチ! ⋯⋯あぁ! こっちにあるじゃん、いただきます~」


 そう言うと彼女は、俺の食べかけのハンバーグを奪って口に入れるーー 俺はなんとも言えない表情でそれを見つめるしかなかった。


 やがて、食べ終わった彼女は支度をしに家に帰って行った。 帰る時に変なことするなとクギを刺したが、あの様子だとまったく気にしてないだろうなーー


 「おい! 支度はまだか? 学校に行くぞ!」 


 登校前、俺はまた、彼女の部屋の前まで来ていた。 いつも彼女は支度が遅いーーアイツ二度寝しているじゃないだろうな?。 俺の声に応じたのか彼女が出てくるが、ーー学生服の上から黒い包帯が体に巻かれていた。


 「ククク、すまない、力を抑えるための外装を着用するのに時を有したか⋯⋯」

 「⋯⋯俺は一人で行くから。 じゃあな、元気で」


 俺は、そう言うと彼女の家を出て、道を歩き出した。


 「ちょっと待ってよ~。 急がないで! 走ると胸焼けがするじゃあない⋯⋯。 ククク、暫し猶予があるだろう⋯⋯我と戯れようぞ!」

 「胸焼けがするのは、お前の食い過ぎだろ! このハンバーグ泥棒」

 「ククク、ただ我は己の心に従っただけ、故に問題はない! ⋯⋯あれ? 気持ち悪くなって来たわ⋯⋯」

 

 俺はそんな彼女を無視して学校へ向かった。 まあ、この時間なら遅刻はしないだろうーー



 「おっす、仲田、あれ ? お前の彼女は?」

 「⋯⋯えりは彼女じゃあないぞ、久保」

 「久保の急所はここかな? それともここ? 難しいわね⋯⋯」

 「⋯⋯なんだよ、お前たち幼馴染なんだろ?」

 「幼馴染だからって彼女とは限らないさ」

 「むぅ、やっぱり実践は難しいわね⋯⋯夢の中なら100回も久保を気絶させたのに」

 「まあ、たしかにそうかもな。 ⋯⋯所でさっきから痛いぞ!山本!」


 俺は二人を呆れた目で見る。 コイツら毎日イチャイチャしてるな⋯⋯ その時チャイムが鳴り、先生がやって来た。 先生はクラスメイトが座るのを待ち、朝の挨拶をしようと声を出そうとするーーその時。


 「暫しまたれよ、轟、漆黒の包帯少女ここに見参!」

 「⋯⋯はい、三浦さん遅刻ですね」

 「⋯⋯ククク。 物語の主人公は遅れて登場するものだ!」

 「早く席に着いてください。 ホームルーム始めますよ」

 

 むしろ、ダークサイド側じゃないか? 俺は頭が痛くなった、この幼馴染の彼女の存在にーー


 

 「漆黒の包帯少女さん、大変です! 貴方に教えてもらった技が久保に通用しません」

 「ククク、慌てるな同志、山本よ。 ⋯⋯我が貴様の修行の成果を見てやろう、来るがよい!」

 

 昼休み時間、えりと山本さんが戯れあっていた。 山本さんは転校生だ。 クールキャラデビューをするために自己紹介をスルーして席に座る。 しかし、それが休みの奴の席だったため、久保に指摘された。 彼女は、顔を真っ赤にしながら、自分の席に移動すると言う失態をおかしたのだった。 そこから、彼女はクラスの人気者になったのだがーー


 その最初の原因である休みの奴が、えりだったのだ。 アイツは朝から「あれれ、健吾、おかしいわ? ご飯のおかわりが出来ない⋯⋯風邪かも?」とか言い出し、その後「私、今日休むね。 そうだ!⋯⋯健吾も一緒に休も?」とか言って来たが、聞こえないふりをして学校へ向かった。 「もう! かわいい幼馴染を置いて、いくなんて、健吾の意地悪!」とか、言っていたが、気にしない。 そして、病み上がりの学校でーー


 「ククク、我此処に生還! 同志よご機嫌様!」

 「あ、おはよう、三浦さん! 風邪大丈夫だった?」

 「ククク、季節の病などに我は屈せぬ⋯⋯む? 貴様何奴!」

 「山本沙織⋯⋯クールで寡黙な転校生よ」

 「転校生! 噂には聞いておるぞ! 確か⋯⋯」

 「ウケる! 自分でクールとか、寡黙とか言っ⋯⋯あぶな! いきなり手刀とか危ないだろ山本」

 「うるさい久保!。 貴方はここで潰す! 覚悟!」

 「ククク、なんと愉快な同志よ!」

 「⋯⋯みなさん、ホームルーム始めるから席に着いてください⋯⋯」


 なんだ、このクラスはーーと当時の俺は頭を抱えたのであった。

 

 「⋯⋯ククク、合格だ、其方に教えることはもうない、免許皆伝だ!」

 「ありがとうございます、漆黒の包帯少女さん!」

 「うむ、皆伝の証として其方もこの包帯を⋯⋯」

 「ごめんね山本さん。 ちょっと、えりと話すから」

 

 あぶね! コイツ山本さんも包帯巻きにするつもりだったな! 俺は彼女の方を見つめた。


 「⋯⋯ちょっと健吾どうしたの? そんな突然、積極的になっちゃって! ついに私の魅力に気づいたの?  ⋯⋯いつもは学校で話し掛けてもくれないのに⋯⋯」

 「話し掛けないのはお前のせいだろ! なんだよ、包帯に眼帯までして」

 「ククク、これは我の内なる混沌を制御する為の器具だ⋯⋯ね、格好よくない?」

 「⋯⋯俺はお前の幼馴染だ、俺とお前の親にもよろしくって言われているからな。 ⋯⋯それでも、お互いプライベートがあるだろう? だからあまり、踏みこまないようにしてたんだ」


 俺がそう言うと彼女は潤んだ目でこちらを見て来る⋯⋯? 俺、なにかコイツを感動させることを言ったか?


 「そうだったんだね、健吾⋯⋯私、間違っていたよ! これから、なおすから学校でも一緒にいようよ⋯⋯」

 

 そう言うと彼女は俺に抱きついて来た⋯⋯よくわからないがこれで一件落着だな!



 「今日こそは⋯⋯久保覚悟! 喰らえ免許皆伝の急所攻撃!」

 「はいよっと⋯⋯所で、もうすぐホームルームが始まるけどあのカップルは休み?」

 「免許皆伝の急所攻撃がかわされた! ⋯⋯そうですね、どうしたんでしょうね」

 「先生も来たし、今回も勝ちだぜ、山本!⋯⋯何だあれ? あいつら何やってるんだ?」

 「どうしたんですか? 久保さん?⋯⋯まあ凄い! 包帯カップルですね!」


 なんでこうなったんだ? 俺の横には誇らしげな顔の彼女がいた。 俺を見ながら彼女は言う。


 「もう、健吾ったら~。 毎日一緒なんだからもっと早く言えばいいのに⋯⋯じゃあ行くよ~」


 彼女の合図で俺たちは教室の中に入って行くーー目の前には先生と着席したクラスメイトがいた。 この状況、もう開きなおるしかないなーー


 「ククク、朝の光に照らされし、漆黒の闇がここに降臨する!」

 「ハハハ、アビスよ! カオスよ! 此処に集え!」

 「⋯⋯はい、三浦さんと仲田さん遅刻ですね。 ⋯⋯早く席に着いてください」

 「主人公は遅れてやって来る者」

 「ダークサイドも遅れてやって来たぞ」

 『我らこそが、漆黒の包帯を纏いし闇夜の使者なり!』

 「⋯⋯二人とも後で職員室に来るように!」

 『はい、すみませんでした』

 

 朝の校庭をカラスたちが鳴き声を上げながら旋回しているのであった。




 

 


 

 

 

 

 



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