#60 再燃 急「中部藩校合同林間合宿」
時は2031年。
第22代江戸幕府将軍の治める太陽の国、日本。
此処はその天領、甲斐国・甲府藩。
甲府藩を守る「甲府御庭番衆」に入隊し、御家人研修を経て、正式に侍として認められた竜の少年・硯桜華。
悲劇の傷が癒える暇さえ許さぬかの如く、次なる試練が桜華に襲い来る。
中部地方の藩校同士が激突する、全国最大規模の合同強化訓練…「中部藩校合同林間合宿」である。
舞台は信濃。
いざ、混沌極まる激戦の渦中へ!
急 ~中部藩校合同林間合宿~
─2031年4月14日 17:55頃─
〔甲府藩 甲府市 伊勢 荒川緑地(千秋橋上流左岸)〕
剣に手は掛けている。
でも相手の得物は警棒だけ。
こちらが抜くのはどうなのか。
それにしてもこの人…さっきから、魔力の気配を全く感じない。
この世の生物は大なり小なり必ず魔力を持ち、体外に発している。
そして戦闘においては、魔力は体の動きと連動して揺らぐので、魔力の動きからある程度は体の動きを一瞬先に読むことができる。
でもこの人の場合…
ヒュッ
真冬先輩は5m近い間合いを一瞬で詰めると、右手に持った警棒を勢いよく正面に突き出してくる。
やっぱりだ…
魔力が無いから、動きが読めない!
反射で左に躱すと、真冬先輩はすかさず突き出した警棒を横に振り、脇腹を打ってきた。
「うぐっ…!?」
お、重い…!細い体と動きの軽やかさからは考えられないくらい、一撃が物凄く重い!
「んっ、手応えが悪いな?剛躰を使ったか…十合技はちゃんと習得してるんだね。」
歯を食い縛って即座に身を翻し、にやける真冬先輩の顔目がけて、左脚でハイキックを打ち込む…はずが、簡単に足を掴まれてしまった。
「わっ、わわっ!」
いくら脚を振ってもびくともしない。
それどころか、真冬先輩が掴む手を前後させるだけで、全身の重心があっちこっちに行って、ヤジロベエのようにクラクラと振れてしまう。
体術だけじゃ勝ち目が無い…でも僕にはまだ手数がある。
「『水龍奏術』」
一個、二個…全部で二十個。
水鞠を一気に作り、一個を右手の指先に乗せ、真冬先輩の顔面に向けて炸裂させる。
「『水鞠・波繁吹』!」
パァン!
真冬先輩の手が離れた隙に、僕は急いで脱け出し、再度距離を取る。
ひとまずわかっていることを整理する。
まず、真冬先輩はどういうわけか、生物なら誰しもがわずかにでも発するはずの魔力を発さない。
僕は集中すれば微弱な魔力の匂いも感知できるけど、その気配すら全く無い。
俄には信じがたいけど、おそらく真冬先輩には魔力が無いんだろう。
おかげで攻撃動作が非常に読みづらく、速度も極端に速いためほぼ反射で避けるしかない。
次に、真冬先輩はソウル能力すら全く使う気配を見せない。
魂由来の微弱な魔力の匂いすら感じない辺り、そもそもソウル能力も持っていない可能性がある。
そして、少し戦っただけでわかったけど、真冬先輩の身体能力は異常だ。
高い動体視力を持つ風雲竜の眼ですら捉えられない高速移動、竜化させた脚による全力の蹴りでも一切ブレない体幹、自由自在な重心移動。
「思いっきり頭狙ってきやがったな…よしよし、ヤル気があるのは俺だけじゃなくて良かったよ。」
あれ、びちょびちょになっただけで、思ったよりけろっとしてる…
ゼロ距離の波繁吹が効いてない…もしかしてあの距離で弾き落としたの!?
ぐっしょりと濡れた前髪の隙間から、真冬先輩の鋭い視線が突き刺さってくる。
「何してんの、抜きなよ。」
「えっ…」
「抜けってば、その剣を。」
「し、しかし…犯罪者や妖魔相手でもないのに真剣は…」
「敵かどうかよりも重要なことがあるだろ、曲がりなりにも…」
真冬先輩は警棒を強く振って水を切り、正眼に構えてこちらをキッと睨み付けてくる。
「侍同士の勝負だぞ。」
できれば敵でもない相手に剣なんて抜きたくない。
僕は人を守るために剣を抜いてきた。
でも僕は今、ただの剣士じゃない。
「『鏡花水月・流れよ“水桜”』」
決断を賭けた決闘には正々堂々と臨む。
仁を以て義を通す。
僕は侍だ。
ヒュッ…ガンッ!
僕が聖剣を起動した途端、真冬先輩がまた一瞬で距離を詰め、警棒で殴りかかってくる。
やっぱり速すぎる!
反射的に剣を横に構えて、どうにか受け止めて鍔迫り合いに持ち込む…けど、真冬先輩のパワーは尋常ではなく、ギリギリと音を立てながら徐々にこちらに迫ってくる。
このままだと押し切られる…そう思って重心を動かそうにも上手く動かせない。
バランス感覚も尋常じゃない…でもどうにかしないと…!
ググッ…
一か八か、押される勢いを散力で殺しつつ…
「『海嘯撃』!」
左脚を軸に、海嘯撃の蹴りを撃ち込む!
バスッ…
真冬先輩の脇腹に蹴り込んだ足から感じたのは、まるで紙袋から空気が抜けたかのような軽い手応え。
明らかに攻撃が入ってない…ミートはズレていないのに、どういうこと…?
「もーらいっ♡」
真冬先輩はジト目で悪戯っぽい笑みを浮かべると、蹴り込んだ脚を左手で掴んで引っ張り…
ドムッ
その勢いのまま、警棒を持った手を振り抜いて腹に撃ち込んできた。
「がっ…は…!?」
視界がチカチカと明滅し、ガクンと全身の力が抜ける。
剛躰、しようとしたのに…間に合わなかった…
僕が紙切れようにぐしゃっと地面に突っ伏すと、真冬先輩はその横に座り込んできた。
「じゃあこの勝負、俺の勝ちってことでいいかな?」
力が思うように入らず、顔を上げて首を動かすことすらままならない。
手加減されたとはいえ、しっかり胃と肝臓を叩かれた…指先がまだピリピリと痺れている。
「ま、まだ…ま…だ…」
整わない息でもなんとか言葉を紡ぐ。
きっとグロブ先輩は、僕にこんな無理をさせるつもりでお願いをしてきたわけじゃないだろう。
でも、ここで何も進展しないのは、僕自身が許せない。
僕は今、前に進まなくちゃいけない。
「凄い根性だな…そこまでして俺を連れ出そうとしてくる奴は初めてだよ。」
真冬先輩は目を細め、大きくため息を吐く。
「そうだな…桜華君、俺には戦う理由が無いというか、誰かの為に戦う資格が無いんだよ。」
「戦う…資格…?」
僕が問い返すと、真冬先輩はまた短くため息を吐き、ゆっくり話し始めた。
「勝負は俺の勝ちだけど、頑張ったご褒美に教えてやるよ…」
真冬先輩が語り出したのは…
──────
〜〜〜〜〜〜
─14年前─
「とあーっ!」
「きゃああっ!若様、おやめください!」
「うるせー!そんじゃあアサのこと悪く言うんじゃねぇ!」
柳沢家の嫡男にして、次期甲府藩主候補…目一杯の羨望と寵愛を受けるはずだった存在は、生まれつき魔力を持たない「忌子」としてこの世に生を受けた。
家内での風当たりはキツかった…両親は「こんな子を産むはずじゃなかった」と毎日のように宣い続け、祖父母は両親に子の産み直しを求め続け、使用人たちからはあんな子が居てはこの家の存続も危ぶまれると日々聴こえるように陰口を叩かれ続けた。
幼いながらに大人の汚い面ばかり見せつけられてきた俺は、大人は誰も信じなくなった…なんてことはなくて、両親や祖父母とは違ってずっと俺のことを可愛がってくれる乳母のアサによく懐いてた。
アサは俺の母が育児を拒否したことで、急遽呼ばれた乳母だった。
生まれたばかりの子とともに自分以外の家族全員を火事で亡くしたばかりで、自らも半身に重い火傷の痕を負い、茫然自失の状態で家に来たという。
でもアサがお乳をくれた頃のことなんて当然覚えてなくて、俺の知ってるアサは俺にいつも笑顔を向けてくれる綺麗な人だった。
火傷の痕や身分のせいで、家内でのアサへの風当たりは本当に酷いものだった。
それでもアサは、どんな時でも俺を庇って、俺を叱って、俺を愛してくれた。
アサは俺にとっての世界の全てだった。
柳沢家は江戸と甲府を行き来する家で、俺が初めて甲府に来たのは今から14年前…4歳の頃だった。
そして初めて会ったのが、自分を子供として可愛がってくれるアサ以外の大人だったんだ。
「いけませんよ、人をぶつのに力を使っては。」
その名を硯菫。
桜華君、君のお母様だよ。
この頃からアサは病気がちで、俺の相手をできる時間も減ってきていた。
そんな時、代わりに相手をしてくれたのが菫さんだった。
菫さんは凄い人だった。
反幕府組織の令嬢でありながら、1人脱け出して甲府藩の筆頭家老と結婚したという。
しかもそれらを、一時は立つことすらままならなかった病弱な身でやってのけたというのだから、驚くべきことだ。
この頃、アサは乳母として仕事ができる時間も減ってきて、周囲からの陰口や嫌がらせはますます酷くなっていた。
箪笥に虫を入れられたり、食事をわざと溢されたりしていたと聞く。
いよいよ我慢の限界を迎えた俺は、使用人たちに暴力を振るうようになり始めた。
そんな時に俺を止めたのが菫さんだった。
「ダメ、あなたまで“傷付ける人”になってしまっては。」
菫さんは、アサを取り巻く現状について、俺と一緒に夕斎様の元まで訴えに行ってくれた。
気付けば家内でのアサへの酷い扱いはパッタリと消えてなくなっていた…
菫さんが俺に教えてくれたのは、力の正しい使い方だった。
程なくして菫さんはしばらく姿を消し、また会えるようになった頃にはお腹が大きくなっていた。
「愛する旦那様との間に授かった、奇跡のようなこの子が…どうか元気に生まれてきてくれるように、私は全力を尽くしてこの子を守ります。」
「旦那様の子ですもの、きっと強い子に生まれるでしょう…そしたらいつかはこの子にも、人の痛みを知って、人を守るために力を使える、優しい子に育ってほしいのです。」
菫さんはたいそう幸せそうに、俺にそう語ってくれた。
人の痛みを知った上で、人を守るために力を使う。
俺は、使用人に暴力を振るうことで、アサの心が痛むことを考えてなかった。
柳沢家はそれからすぐにまた江戸へ戻り、俺が菫さんの子に会うことは無かった。
病に苛まれるアサに育てられ、俺もまたアサを力の限り守り支える生活が始まった。
痛みを知ること…
痛いって何だろう…
俺は人一倍痛みに強かった。
転んで擦りむいてもべそ一つかかず、何事もなかったかのように起き上がる。
足の骨が折れようと走り続けるし、指がちぎれかけてもただそれをぼーっと眺めるだけだった。
痛みは確かにある。
でもそれを苦しいと思う感覚は、他の人に比べるとかなり鈍かった。
子供ながらに大人一人余裕で持ち上げられる異常な怪力も相まって、家内では化け物呼ばわりされて不気味がられた。
アサは「若様は化け物などではございません」と、そう否定し続けてくれたけど。
なんとなく痛いと苦しいんだろうな、その程度しか他人の苦痛を想像できなかった。
─2年前─
しばらく経って、あの甲州事変で菫さんも亡くなって、さらにしばらく経って…
「甲府の未来を担う期待の一番星!柳沢真冬!」
鳴り止まぬ歓声と大きな期待を寄せられて、俺は甲府のヒーローになっていた。
赤ん坊の頃から心配しながら面倒を見ていた子が、誰からも認められるヒーローになったんだ。
アサはいたく喜んでくれた。
俺はもうそれだけで胸がいっぱいだった。
俺は必死に戦った。
アサをこれ以上苦しませないために、アサを傷付ける人から守るために。
その矢先のことだった。
アサは再び病に倒れた。
ステージ4の子宮頸癌。
今度は取り返しのつかない病だった。
抗癌剤はわりと早い段階でやめた。
鎮痛剤はたくさん使った。
そこで俺は察した。
アサは早く楽になりたいのだと。
俺はアサに少しでも長く生きてほしかった。
でもそれは、アサにとって辛い治療をより長く続けることに繋がる。
それを俺はわかってなかった。
抗癌剤をやめるという話し合いになった時、アサは一言俺に「お許しください」とだけ伝えてきた。
俺は黙って頷くしかなかった。
「俺のために生きてくれないの?」
そんな最低な言葉を、必死に喉元で押し留めた。
アサはその翌月には呆気なく逝った。
闘病中も俺はずっと、自分の戦績をアサに伝え続けていた。
甲府では最強の藩校生と称されるようになったことや、それでも勝てない強豪が加賀にいること、伝える度に嬉しそうな顔で聞いてくれたから…
でも今思い返せば、アサはそんなことよりも俺に側に居てほしかったのかもしれない。
俺は昔から何も変わってない。
アサの痛みも理解できず、ただ自己満足で力を振るって戦い続け、それをアサのためだと宣い続けた。
自分にも大切な人にも嘘吐いて暴れてただけなのに。
アサの居ない今、俺に戦う理由は無い。
アサの痛みを理解できなかった俺に、力を振るう資格は無い。
だからといって、アサの分まで生きるなんて、そんなこともできなくて。
ただのうのうと時間を貪って…何が甲府最強の藩校生だって話だよ。
〜〜〜〜〜〜
結局何も守れずに俺だけが残った。
菫さんにも合わせる顔が無い。
桜華君は眉を下げ、悲しそうな顔で見つめてくる。
「真冬先輩…」
「だから俺はもう、誰かのためには戦う資格は無い…残念だけど、人員不足なら他を当たって…」
「真冬先輩、お言葉ですが…」
桜華君は少し身を乗り出して、語気を強めて語り掛けてくる。
「亡くなった人の分まで生きようとするのは、きっととても辛いし苦しいです。」
「桜華君、それは…」
俺はアサを守れなかった。
だからせめて、その人生を抱えて生きようと思った。
でも、周囲からあれ程恐れられた怪力を以てしても、他人の人生は背負い歩けない程に重かった。
桜華君の言葉はまだ続いた。
「僕もつい最近、親友を亡くしたんです。」
「悔やみきれないほど過去を悔やんで、責めきれないほど自分を責めて、それでも戻ってくることのない彼女の面影を少しでも側に掴んでおきたくて…彼女の送れなかった人生を、自分の人生の中に抱え込もうと考えました。でも、それを望まずに持ち去ったのは、他でもない彼女でした…おかしいですよね、どんな魔法を弄しても、亡くなった人とお話するなんて普通はできないはずなのに。」
「背負う必要なんて無かったんです。喪って、打ちのめされて、癒えない傷を抱えて生きる。僕は残すことにしました…思い出の形をしたこの傷を。僕が彼女を忘れない限り、彼女は僕の中でずっと生きていける。」
「抱え込まなくても、わずかな思い出の欠片さえ残っていれば、人はそれだけで…」
どこか懐かしそうな目で遠くを見つめる桜華君を、俺はぽかんと見つめていた。
4つも下の中学生が、そんな立派なことをよく言えたものだなと感心したというか…なんというか…
「真冬先輩の思い出に、僕は同じ“におい”を感じました…それだけです。」
桜華君の話で俺は悟った。
そっか…
俺が本当に守りたかったのは…
アサと一緒にいるあの日常だったんだ。
消えない傷の痛みとその苦しみを、俺はずっと弱さとばかり捉えてきた。
だから、ひたすら塞ぐことを考えてきた。
でもその傷こそが、アサとの思い出…俺が本当に守りたかったもの…
「僕にはまだ時間がたくさん残ってる…だから僕は前に進もうと思います。彼女の居ない世界で、命ある限り、僕が彼女を生かし続ける。」
「真冬先輩も、アサさんと一緒に前に進んでみませんか?その方が…アサさんもきっと喜ぶと思いますよ、だって真冬先輩のことを一番に愛してくれたのでしょう?」
本当にそっくりだなぁ…声も、言葉も、面影も。
きっと菫さんも、同じ顔で同じことを言っただろう。
亡くした命と一緒に、前へ進んで生きていく。
そんな大それたこと、俺にできるんだろうか。
「はぁ…やってみるか!」
ズイッと立ち上がると、桜華君はビックリした顔で見上げてきた。
「ま、真冬先輩…それって…」
「お望み通り、対抗戦に出てやるよ…まあ今更俺の役割分担なんて決める暇無いから、せいぜい突撃兵扱いが関の山だろうけど。」
「あ…それは僕もだいたい同じです…」
「え、そうなの?」
アサ、俺はまだ生きるよ。
──────
─2031年4月22日 9:00頃─
〔松代藩 上田市 菅平高原〕
「これより中部藩校合同林間合宿・対抗戦第1戦のルール説明を行います!参加者一同に配布した端末からも確認できるのでよく把握しておくこと!」
真冬先輩の説得に成功してからはや一週間。
ここは松代藩の菅平高原。
標高1200~1600mはある高原地帯…春も中頃を過ぎたというのに、朝方の空気はまだひんやりとしている。
林間合宿の開催地には毎年中部地方のいずれかの山野が選ばれることになっていて、今年は松代藩の番らしい。
ちなみに我らが甲府藩は、怪魔の活動が活発なことからかれこれ十年近くは開催地に選ばれていないらしい…仕方ないと思うけど。
話は戻って対抗戦。
参加人数は藩校の規模によってまちまちだけど、それでも総勢五千人以上。
加賀藩の加賀梅鉢、尾張藩の尾州中納言葵、松代藩の真田六文銭…名だたる雄藩を始めに、三十以上の藩旗があちこちから上がり、まさに合戦場の様相を呈している。
第一戦の種目はランダム…それでも皆んなと過去に実施された競技を確認して、できる限りの対策は立ててきた。
注意深く、ルール説明に聞き耳を立てる。
「まずはくじ引きを行います。」
「くじ引きの結果に応じてランダムに、2校あるいは3校で3人1組を作り、チーム戦を行います。」
えっ…他藩校生と混合チームを作るってこと!?
ざわつく藩校生たち。
過去にこんな競技があったなんて聞いてない…つまり早速の新競技ということだ。
どうしよう…せっかく皆んなで立てた作戦が…
嘆く暇も無く、次々にくじを引かされ、同じ番号が出た者同士でチームを作っていく。
そして僕と一緒のチームになったのは…
「へぇ…今日の俺たちは随分ラッキーみてぇだな、愛しのハニーに硯家の御坊ちゃまがセットとは。」
【成瀬 狛虎】
~明倫堂(尾張藩校) 高等部12年生 / 尾張藩両家年寄・成瀬家の長男~
ピアスに指輪にネックレス…金物の装飾をジャラジャラと身に付けた、金髪のツーブロックナチュラルヘアーに、浅黒い肌とかなり高い背丈の、いかにもチャラチャラした感じの男の人。
「やぁ〜だぁ〜!ウチと一緒でラッキーなんて照れちゃうじゃん狛ちゃ〜ん♡初めまして桜華くん、ウチらが可愛がってあげっからね♡」
【織田 弾姫】
~明倫堂(尾張藩校) 高等部10年生 / 尾張藩家老・織田家の長女~
ピアスとキラキラした長いネイルに、夕焼け空のような白と橙の混じった髪で頭のてっぺんに大きなお団子を作った、ギャルっぽい雰囲気の女の人。
こ、この人たちって…
よく思い出せないけど、昔使用人の方に教えられた記憶だけはある…
俗に言う「不良」では…!?
これから僕を待ち受けているのは、未体験の波乱と熱狂、そして混沌。
とうとう始まる…これは口火の第一戦!
〔つづく〕
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〈tips:人物〉
【柳沢 真冬】
元甲府城代・柳沢家の長男で、徽典館の高等部12年生。
18歳で、段位は乙位。
飯石蜜柑に次ぐ甲府藩主継承順位第2位で、生まれつき魔力を持たず、非常に高い身体能力を誇る特異体質の持ち主。
武術の実力は極めて高く、以前は徽典館弓剣道部の主将を務め、かの加賀藩の前田利雅とも肩を並べて「甲府最強の藩校生」と呼ばれていた。
その特異体質から家内では密かに冷遇されてきた経緯があり、自分を我が子のように可愛がってくれた乳母のアサに報いることを生き甲斐としてきたが、アサの病死後は闘志を喪失して武術をやめてしまう。
以後2年間は全武大や対抗戦に姿を見せることは無かったが、グロブの無理強いで説得に寄越された桜華との対話を経て、アサとの記憶を連れて前進することを決意した。
柳沢家は江戸と甲府を頻繁に行き来していたため、桜華の母・硯菫との交流はあったものの、その後生まれた桜華との面識は無い。
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