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甲州御庭番劇帖  作者: 蕃石榴
壱ノ巻-第二章『黄泉竈食ひ』
40/57

#40 冥途 序「招請」

時は2031年。

第22代江戸幕府将軍の治める太陽の国、日本。

此処はその天領、甲斐国・甲府藩。


豊かな水と緑を湛えるこの地は今…


その一割を「彼岸」に蝕まれている。

 第二章『黄泉竈食ひ(よもつへぐい)


 序 ~招請(しょうせい)~


 僕は硯桜華。

 甲府御庭番衆隊員で、藩校に通う中等部七年生。


 昨日はしばらくぶりに慌ただしい一日だった。


 大きな筵を展開しない怪魔、しかもその核は術巻じゃなくて箏のパーツ。

 異例ずくめな上に手強い敵だったけど、満を持して参戦した国音さんの手によって撃破。

 捕らわれていた箏弾きの天音さんも、無事助け出すことができた。


 怪魔の核である箏の柱は、虹牙に持って行かれちゃったけど…


 事件は一応の解決を見せたけど、まだ気になることもある。


 一つ。

 天音さんのしてくれた不思議な話。

 居ない筈のお父さんが夢に現れ、それに導かれて石見家から逃げ果せたというもの。

 僕の個人的な考察だけど…天音さんのした体験、それは星辰潜行だと思う。

 星辰潜行は特殊な訓練を行わずとも偶然発生することがあると聞いたけど、天音さんもその一例なのだろう。

 僕がお母様と会えたことといい、まるで死した魂の側から働きかけて、星辰潜行が起きているようにも見える。


 もう一つ。

 昨日から僕は、何故か本来匂いなど無いはずの「事件」や「嘘」といった抽象的なものに、「におい」を覚えるようになった。

 まだ感覚が掴みきれていないから、使いこなせてはいないのだけど…「事件のにおい」も「嘘のにおい」も、実際に的中した。

 直前に何か変わったことがあったかといえば、やはり星辰潜行。

 星辰潜行をしたことで、僕の感覚に変化が起きている…なんてことはあるのかな?


 星辰潜行についてはまだ謎も多いけど…

 小笠原様によると星辰潜行は己のソウルとの対話であり、極ノ番の習得には避けて通れぬ道だという。

 できればまた星辰潜行に遭遇できたらいいな…早く強くなりたい、そして、お母様にもう一度会いたい。


 ──────


 ─2031年3月29日 16:00頃─


 〔甲府藩 甲府市 JL金手駅前〕


 印を結び、呪文を唱える。

「『夜を照らして夜より聡く 可惜夜の宿す霽月よ 穢れを映し隔て給え』」

「『閨』」


《敵は合計6体!ちょっぱやで片付けちゃうわよ〜ん!》


 金手駅前に発生したのは、大名飛蝗の分体「大名飛蝗・兇群態・浪」六匹。

 小笠原様が大群を一網打尽にしたのが印象に残っているけど、実はその後も小さな群れの出現事案が散発している。

 どうやら石見家は、筵を展開しない代わりに、量産可能な雑兵として大名飛蝗を運用しているらしい。

 この大名飛蝗たちはオリジナルに比べて等級も低いけど、浄化瘴気で周囲を汚染するという性質に変わりはない。

 むしろ「筵の展開」というわかりやすい合図が無くなったことで、発生の把握が遅れやすいという厄介な点が生まれた。


「『鏡花水月・流れよ“水桜”』!」

「『疾風怒濤・風巻けよ“神威”』!」


 討伐任務に充てられたのは僕と恋雪。

 閨を展開したらすぐ聖鎧に武装し、聖剣を起動して結界内に飛び込む。


 狭い路地の低空を飛び交う大名飛蝗たち。

 僕はさっそく花咲老師の術巻を起動し、“あること”を試してみることにした。

「『急急如律令』!」

 呪文を唱えた途端、路面から家屋の屋根まで青々と草が生い茂る。


「ほぇ?桜華先輩、これは何ッスか?」

 目を点にして首を傾げる恋雪。

「餌ですよ、大名飛蝗たちの。」

 僕がそう言って微笑んで見せると、恋雪は驚き慌てる。

「えええ餌ぁ!?そんなのやっちゃダメッスよ!敵を元気にしてどうするんスか!?」


「ウオォ〜!草ダ!草ダ〜!」

 大名飛蝗たちは喜んで翅を閉じて屋根に降りると、ムシャムシャと草を貪り食べ始めた。


「あわわわ…いっぱい食べてるッス…これじゃサラダバイキング…」

 両頬を抱え口を開けて青ざめる恋雪の頭を、僕はぽんぽんと優しく撫でる。

「これでいいんですよ、見ていてください。」


 少しすると一匹、また一匹と、大名飛蝗の動きがおかしくなっていく。

「ウギッ…!?ク、苦シイ…」

「ギャッ…!?イ、痛イゾ…」


「あ、あれ?なんで弱っていってるんスか…?」

 恋雪が混乱しているようなので、ここでタネを明かしてあげよう。

「僕が生やしたのはタバコの草です。」

「タバコの葉っぱには、害虫を防ぐためにニコチンという毒が含まれています。」

「ニコチンは大量に摂取すると神経が過剰に興奮して、臓器の働きに異常を起こすことで、殺虫作用を示すんですよ。」

「相手は丁種とはいえ、集団である上、動き回られると浄化瘴気の汚染が広がって厄介です。」

「予め弱らせておけば、より安全に対処できるのではないかと考えました。」


「すご〜い!桜華先輩ってやっぱ物知りッスね〜!」

「あ、いやその、これは…」

「賢くて強くて、頼りになる先輩ッス〜♫」

 恋雪はそう言うと、僕の両手を握ってぴょんぴょん跳ねた。

「あ、あはは…」

 タバコの件は全部八戒さんの受け売りだ。

 八戒さん、ケガはまだ完治していないものの、それ以外はもうすっかり元気そのもの。

 一刻も早く御庭番の仕事に復帰したいと意欲は抜群で、大名飛蝗にタバコの葉を食べさせるというアイデアも、この前お見舞いに行った時に伝授されたものだ。


「とはいえこの毒餌作戦、どれ程効果があるかはわかりません…恋雪、油断せずにいきましょう。」

「はいッス!じゃあさっそく〜…行ってきまーすっ!」

 恋雪は町屋の上に飛び乗ると、屋根の上を駆け出し、屋根の端々を蹴ってくるくる回りながら飛び跳ね、徐々に回転数を上げながら、たむろしている大名飛蝗へ向かっていく。


 一方、大名飛蝗のうち二匹はこちらの存在に気付き、屋根から壁を伝ってこちらに近付いてくる。

「御庭番…御庭番ダナお前…!」

「食ッタラ強クナレルノカァ?」


「味わってみますか?」

「鶴の織物返し」と書かれた青い術巻を、磊盤の右から二番目のスロットに入れ、

 抜刀する。

〈水桜快刀!二巻!煌めく魔法の織り糸が、水と交わり山河を描く!〉


《おぉーっと!ここで桜華くんの連装、実戦初披露だ〜!》

 虹牙や墺而から入手した術巻の数々の中には、僕と相性の良い術巻もいくつか見つかった。

 鶴の織物返しの術巻もその一本で、虹牙が置いて行ったものだ。


 飛び掛かってくる大名飛蝗たちの前に、剣を振ってバツ印を描く。

 すると幾重にも折り重なった水の織物が、両側の町屋の壁に跨るように張られ、ぐにょんと弾んで大名飛蝗たちを跳ね返した。


 折り重なって仰向けに倒れる大名飛蝗。

 僕は壁を蹴って跳び上がり、急降下しながら上の方の大名飛蝗の顎下に鋒を突き立て、そのまま下の方の大名飛蝗ごと串刺しにした。

 …と思いきや、突き刺しが甘かったようで、下の方の大名飛蝗は翅を開いて地面に背を擦りながら飛び立ってしまった。


 空中で旋回し、再びこちらに向かって突進してくる大名飛蝗。

 僕はその場に立ったまま、剣を何回も素振りする。

 そして大名飛蝗がこっちに迫ってくると…


 ギギッ…


 大名飛蝗は急減速し、空中で固まった。

「ナ、ナンダコレ…?」

 困惑する大名飛蝗。


「あなたが突進してくる軌道を読んで、肉眼で視認できない細さの糸を大量に張らせてもらいました。」

「翅を激しく羽ばたかせたから、よく絡まったと思います。」

 鶴の織物返し、妨害だけでもここまで応用が利くなんて…まだまだ使い道の幅が広がりそうだ。


「『二巻読了』…『水月・靡柳三段(びりゅうさんだん)』」


 ザシュシュシュッ…


 身動きを取れずに瞳孔だけを向けてくる大名飛蝗を、僕はそのまま四枚に下ろす。

 これまでは力いっぱい圧し斬っていたけど、貼靠を習得してからは狙った部分に最小限の力を込めるだけで断ち斬れるようになった。


 残る大名飛蝗はあと四匹。

 恋雪は大丈夫かな?

 町屋を登って様子を見に行ってみると…


「ひゃっほー!捕まえてみろ〜っ!」

 横に回転しながら、壁を跳ね、空を蹴り、町屋から町屋へと飛び回る恋雪の姿が見えた。

 恋雪はケガから復帰して間もないけど、十合技の特訓に途中参加するとたった一日で龍翔ノ舞を習得してしまった。

 風属性ということもあって、感覚が掴みやすかったんだろうか?

 療養期間中はろくに稽古もできず鬱憤が溜まっていたようで、復帰前よりも何だかテンションが高い気がする。


〈神威疾走!一巻増巻・小やぎ七兄弟!〉


「ニンニンッ、あははっ♫」

 上機嫌な笑い声とともに、七人に分身する恋雪。

 分身たちは空中でコマのようにクルクルと回転しながら、縦横斜へ散り散りに飛び出し、さらに大名飛蝗たちの中央に陣取った本体の周りをグルグルと回り出した。


「『二巻読了』!」

「『烈風剣舞・円盤』!」

 回転はみるみるうちに加速していき、残像が巨大な円盤を描く。

 円盤は時々傾いて狙いを変えながら、大名飛蝗たちを次々に上下に真っ二つに切り裂いていった。


「ひゃっほーっ!分身の術サイコー!」

 キャッキャと笑いながら両手を上げて落っこちてくる恋雪を、僕はお姫様抱っこの形で受け止める。


「桜華先輩!ナイスキャッチッス!」

「まったくもう…仲間がいるからって安全着地を怠るのはどうかと思いますよ、恋雪。」

「そんなこと言っちゃって〜…ボクがどこに落ちても来てくれるんスよね?」

「それはそうですが…」

「わーい!じゃあ安心ッスね!」

「もうっ、恋雪ったら…」

 出会った当初はあんなにツンケンした態度を取ってきていた恋雪も、今ではすっかりこの通り懐いてくれている。

 でも懐いてくれてからの方が無茶振りが多い気がする…後輩のやんちゃっぷりは可愛いけど、危なっかしい行動も多くて、何かと心配になる。

 一緒にはしゃいでいる蜜柑はともかく、目白の気苦労が理解できた気がしてきた。


 残党や逃げ遅れが居ないか、恋雪と二手に分かれて確認していると、いきなり水桜が話しかけてきた。

〈桜華…あの狗神恋雪という小娘、妾はやはり気に食わぬぞ。〉

「急にそんなこと…どうしたんですか、水桜?」

 極度の人間嫌いの水桜が、人の好き嫌いについて言及してくるのは珍しい。


〈身勝手で、無茶で、無知で、素朴…そういう頭の弱い餓鬼は妾の最も嫌うところだ。〉

「そこまで言う程でしょうか?」

〈あれ程しつこく付き纏われていた身でよくそんなことが申せるな…其方は人に甘過ぎる。〉

「そういう水桜こそ、人に厳しすぎます…僕は世の中には良い人がいっぱい居ると思ってます。だからそれを信じて、仲良くなりたいって思うんです。」

〈フッ…世の人間など殆どが悪性なものよ、故に法や規律で縛るのだ。妾は其方より遥かに長い歳月を経てそう考えている。〉

 水桜はとても頑固な性格だ。

 でも僕より遥かに長い時間を生きてきた中で、人は信用できないと強く思うような経験をしてたのかもしれない。

 そこは僕の責められるところじゃない。


 でも…

「僕は水桜のこと、信じてますよ。」

〈妾を…何故だ?〉

「うーん…それは…最近急に飛んで来なくなったから、でしょうか。」

〈…次は首を狙ってやろうか?〉

「や、やめてください!でもどうして最近は大人しいんですか?」

〈お前が肌身離さず妾を持っているから、物理的に飛んで来れないのだ、あとは…〉

「あとは?」

〈その時の気分次第…だ。〉

 そんな会話をしながら閨の北側を歩き回っていると、神社の鳥居に手をつけてよろめきながら歩いている男の人を見つけた。


「蜜樹さん、逃げ遅れた方がいます。」

 怪魔は倒しても、浄化瘴気の除染作業が終わらない限り、閨は解放できないのが決まりだ。

《ん〜?避難誘導に応じられなかった感じかな?でもなんか違和感…》

「とりあえず声をかけてきます。」


 男の人はしきりに咳込んでいて、肌も青白い…とても体調が悪そうだ。

「あの…すみません、大丈夫ですか?一人で立てないなら…」


 僕が男の人の肩を支えると、男の人は俯いたまま、いきなり腰に提げている水桜の柄を握ってきた。

「ちょ、ちょっと!?危険です!今すぐ手を離してくだ…」

 すると男の人は、ニヤつきながらゆっくりと顔を上げ…その顔はグニャグニャと歪んで狐面へと変化していく。


「駄目ではないですかぁ…そんな簡単に食らいついては…」

「毒があるかもしれませんよぉ…!?フフフフフフフフフッ…」


 この狐面…もしかして、僕が前に長禅寺で見た…そしてこの前に目白が遭遇した…

《氿㞑よ〜ん!桜華くん、一刻も早く退避して!》

 魔神・氿㞑だ…!


 体がまるで金縛りのように動かない。

 氿㞑は水桜の柄を握ったまま、何か詠唱を始める。

「『鬼術・二十九番』」

「『見渡せよ 沸き立つ荒海 渡る道なし』」

「『籠鳥檻猿(ろうちょうかんえん)八方塞(はっぽうふさがり)』」


 ガチガチガチイィッ!


 直後、水桜は鞘ごと、無数の黒いムカデのようなものに包まれ、ムカデはすぐに固まり…黒くゴツゴツとした錆がまとわり付いた棒のような姿に変わってしまった。


「水桜…っ!」

 呼びかけても返事が無い。

 それどころか、水桜の気配すらも感じられない。

「い、いや…水桜、水桜…っ!返事をして!」


「桜華先輩に〜…何してるんスかっ!」

 突然真上から恋雪が降ってきて、氿㞑目がけて神威を投げつける。

 氿㞑は僕と水桜から手を離し、後ろに飛び退いた。


「何を、ですかぁ…?そうですねぇ…まあ端的に言えば、聖剣をただの棒きれに変えてやったというところでしょうか。」

《ぼ、棒きれ…適合者以外からの魔力干渉を強く拒絶できる聖剣だよ…?》

「その拒絶を突破できるよう上手く細工をするのが魔術でしょう。」

 氿㞑はいつの間にか元の袈裟姿に戻り、僕が瞬きすると鳥居の上に移動していた。


「よくも桜華先輩の聖剣を…!許さない!」

 鳥居を見上げて睨み付ける恋雪に、氿㞑は呆れたような声とともに片掌を出して静止する。

「ああ、はいはい、殺したわけではありませんよ…それは一種の封印術です。」


「ふ、封印っていうんならっ…!解く方法を教えろッス…!」

《恋雪ちゃん、その要求は流石に通らないんじゃ…》

 蜜樹さんがそう言いかけたところで、氿㞑から返ってきたのは意外な答えだった。


「いいですよ、教えて差し上げましょう。」

「此岸と彼岸を繋ぐ坂…今宵その先にある山の上にて、神名を授かりし桃の実を食む。」

「それが解呪の条件です。」


「そ、そんな簡単に教えてくれ…って、信じられるわけないッス!ただの口約束なんて、嘘ついてるかも…」

 僕も恋雪と同意見だ。

 すると氿㞑は呆れたように首を回し、斜め上を見てため息を吐く。


「魔術における口約束を甘く見てはいけませんよ。」

「これは単なる宣言ではなく、謂わば誓約であり制約…魔術のトレードオフの原則はご存知でしょう?敢えてこちらに不利な条件を提示することで、聖剣の封印という困難な術式の成立を達成しているのですが…わかりませんか?」

 氿㞑はツンと顎を上げる。


「硯桜華…良い判断を期待していますよ。」

 その言葉とともに、僕が次に瞬きすると、氿㞑の姿は消えていた。


 ──────


 ─2031年3月29日 19:00頃─


 〔甲府城 天守閣 天守広間〕


 天守広間に、御庭番衆が一堂に会する。

 療養中の八戒さんだけリモートでの参加だ。


 殿と御庭番衆により天守閣で実施される「天守会議」。

 月に二回の定例会議に加え、藩政に重大な影響を及ぼす事態が発生した際に、臨時会議が開催される。


 今回は臨時会議。

 開催理由は言うまでもなく、水桜の封印に関することだ。


「すまない桜華…できる限りを尽くしたのだが、やはりダメだった。」

 国音さんは、真っ黒になってしまった水桜を布で包み、悲しそうな面持ちで僕に差し出してきた。

「…いいんです、国音さんが全力を尽くしてもダメというなら、それはもう仕方がありません。」


 氿㞑に提示された解呪条件。

「此岸と彼岸を繋ぐ坂…今宵その先にある山の上にて、神名を授かりし桃の実を食む。」

 蜜樹さんを通して、既に夕斎様には報告してある。


 僕はもちろん御庭番衆の誰もが理解できなかったけど、夕斎様からは会議前に「解呪条件について話がある」とも伝えられた。

 何か心当たりがあるのかな?


 僕が水桜を受け取ると、夕斎様が口を開いた。

「桜華よ、提示された解呪の方法に関することだが…心当たりがある。」

「儂ではなく、アズマにだ。」


 えっ?

 夕斎様じゃなくて…

「あっ、アズマ様に…ですか…!?」

 アズマ様は、でんと厚畳に鎮座したまま喉を鳴らす。

「ゲコッ(そうだよ〜。)」


 夕斎様は続ける。

「そしてアズマから話を聞き…この者を本会議に呼ぶに至った。」

 この者…?誰のことだろう?


「入れ。」


 夕斎様がそう呼び掛けると、後ろの襖が開き、そこに居たのは…


「失礼仕ります…」


 甲斐三曲団の箏の奏者・天音さんだった。


「此岸と彼岸を繋ぐ坂…その場所への行き方について、私から話が御座います。」


 天音さんが…何かを知ってる…?


 〔つづく〕


 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

〈tips:人物〉

【アズマ】

 甲府藩主・飯石夕斎の式神。

 アズマヒキガエルの姿をしている。

 体高1.5m程の巨躯を誇り、普段は夕斎の隣で置物のように座っている。

 何事にも寛容なおっとりした性格で、藩民や城詰めたちからはマスコット的存在として親しまれている。

 通常式神は本体としか直接意思疎通できないが、アズマは例外的に他者が言葉として認識できる特殊な鳴き声を発する。

 穏やかな性格の一方、「アズマが傍に居る限り飯石夕斎に凶刃が届くことはない」といわれており、その実力は計り知れない。

 好物は鶏肉。

 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


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