#29 疎影 破「毒の聖剣と山伏の八戒」
時は2031年。
第22代江戸幕府将軍の治める太陽の国、日本。
此処はその天領、甲斐国・甲府藩。
豊かな水と緑を湛えるこの地は今…
その一割を「彼岸」に蝕まれている。
破 ~毒の聖剣と山伏の八戒~
─2031年3月15日 09:40頃─
〔甲府藩 甲府市 切差 帯那山山頂〕
「そろそろだよ〜。」
ワンタイさんがそう告げると、猛スピードだったギッシャーはだんだんと減速していく。
車内に居るのは七人。
僕と、蜜柑と、桃山組の二人と、管狐兄妹と…
「えへへ…すみません、ハッチさんとソウカさんに誘われて、ついて来ちゃいました。」
廿華だ。
経緯はこう。
廿華は僕と一緒に甲府城に来ていて、本丸の広場で待っていた。
そこに管狐兄妹がやって来て、僕と蜜柑を連れ去るべく天守台の石垣に張り付いて待機していた桃山組専用ギッシャーを見つけ、一緒に乗り込もうと提案した。
好奇心旺盛な管狐兄妹によって、廿華は半ば流される形で荷車の屋根の隙間へ忍び込んだのだった。
「ハッチ、ソウカ…感心しませんよ。」
僕が目を細めると、兄妹は互い違いに顔を逸らした。
「お、おれが言い出したんじゃない…そ、ソウカがどうしても気になるって…」
「Σ(゜ω゜ノ)ノ → ε٩(๑> <)۶з」
なすり付け合ってる…
「まあまあ桜華くん、今回は任務に巻き込むわけではないのですから、許してあげませんか?」
蜜柑は僕の肩をトントンと叩いて宥めてくる。
「それはそうですが…いくら能力があるからといっても、本来乗れない場所に乗るのは危ないですよ。」
別にそんなに強く責め立てるつもりはないけど、好奇心が強すぎると心配なこともある…僕もあまり人のことを言えた立場ではないけど。
車窓に目をやると、前方に木造の大きな四脚門が見えてきた。
門はあちこちが大量の髑髏の模型で派手に装飾され、扁額には「蠆盆街」と書かれている。
たいぼん…って読むのかな?
ギッシャーは門前で一度止まってまた動き出す。
門の先には小さな集落が広がっていて、通りの脇にはいくつも屋台が並んでいる。
一つ一つをよく見てみると、カエルの開き干し、串に刺さって焼かれたムカデ、バームクーヘンを縦にしたような形の蜂の巣、水槽に入った大量の白い袋のような生き物、大きな瓶いっぱいに入った酒の中で暴れる蛇、その他にも見たことのない動物の肉が捌かれていたり…
「す、すごいなここ…見たことないもんだらけだ…」
「(((o(*゜▽゜*)o)))」
興味津々に外を眺めるハッチとソウカ。
「あっ…師匠…南無…」
屋台の軒先に吊るされたヤモリを見て、手を合わせて祈る廿華。
僕もちょっと気になったけど、やらなかったのに…
「ここが桃…」
「ここが桃山組の本拠地…薬問屋街の蠆盆街です!見たことないものがいっぱい並んでるでしょう!他国から海外のものまで色々仕入れてるんですよ!楽しいですよねっ!」
蜜柑は元気よく、ショッカイさんの言葉を遮る。
蜜柑たち御庭番はこの場所を定期的に訪れているらしく、その度にさっきのようにわざわざ組員が誘拐しに来るそうだ。
「もしかして…悪ふざけか何かですか?」
僕がため息を吐くと、蜜柑はニコッと笑って返してくる。
「“実家のような安心感”ってやつです!」
なんかそれはちょっとズレてる気が…
ギッシャーから降りると、ショッカイさんが傘を渡してくれた。
通りの突き当たりには何十段もの石階段が続き、その先には権現造の社が建ち、さらにその後ろには空を覆わんばかりの大樹が生えている。
「我らがカシラはあの社にいらっしゃる。桜華、あんたが来るのを首を長〜くして待ってるよ。」
ワンタイさんはそう言うと、尻尾を揺らしながら僕らの先を歩き出した。
「((((;゜Д゜)))))))」
「ソウカさん、首を長くして…というのは、それだけ楽しみだということの喩えです。決してろくろ首ではありませんよ。」
廿華は怯えるソウカを宥めていた。
そういえばちょっと気になったこと。
さっきからワンタイさんは、左手に何かが入った風呂敷を提げている。
「ワンタイさん、それは…何ですか?」
「ん、これか?これはな…彼岸花の球根だよ。」
「彼岸花…どうしてですか?」
「あぁ…彼岸花ってのは、此岸と彼岸を隔てる場所によく咲くんだ。不思議な魔力を宿してるらしくてな…こいつらが咲く場所では、筵の拡大が邪魔されるってのがわかってるのさ。」
甲府藩の軍事科学研究を実施している桃山組は、そんな彼岸花の特殊な魔力に目をつけて、筵対策に有効な品種開発を進めているらしい。
今回は面白い形質を示す株があったので、その球根の一部をカシラに見せたいとのこと。
石階段を真ん中まで登ったところ、急に社の屋上から人影がこちらに飛んできた。
「わわっ!?」
ビックリして階段から転げ落ちた…と思ったら、突然背後に大きな黒い網が現れて、僕はそこに引っかかった。
気付くとポニーテールの若い女の人が、僕の背中を抱き止めていた。
「あははー…ごめんよー御客人様、ウチのカシラが驚かしちゃって。」
僕らの目の前に降ってきたのは、背丈177cm程ある若い男の人。
黒髪に六文銭と花菱紋のついた鉢巻を着け、頸には真っ白なファーを巻き、迷彩色のハンティングウェアの上に、蹄鉄のようなものが何個も連なったジャケットを着ている。
目付きは厳つく、ニィッと笑った口からは鋭い牙が見えた。
「おぉっと!誰か誰かと聞かれちまったら、答えてやるのが世の情けってやつかぁ!?」
上機嫌に名乗りを上げようとするこの人が、ショッカイさんの言ってた“カシラ”…?
「誰もまだ聞いてませんよ、カシラ。」
後ろから来たボブヘアにマスクをつけた女性が、呆れた口調でツッコむ。
カシラと呼ばれるその人は、僕にしっかり目を合わせ、仁王立ちして腕を組む。
「聞いて驚け!硯の長男坊!」
「俺は八戒!帯那山の主・八戒様だ!」
【山伏の八戒】
~甲府御庭番衆 参謀~
この人からはなんだか危ない“匂い”がする…あとかなり酒臭い…
警戒心を隠せない僕の後ろで、廿華は目を輝かせていた。
「はわわ…イケメンですぅ…」
──────
─2031年3月15日 10:00頃─
〔帯那山山頂 桃山組本社殿〕
外からは大きな神社のように見えたけど…
中に入ると一転、所々にガラスのフラスコや管が繋がった装置があり、コトコトと何かが煮込まれている。
大きな機械も随所に置かれ、棚にはびっしり何かが入った瓶が並べられている。
そしてあちこちで、白衣を着た人たちが何やら作業をしている…
僕らが連れられたのは、そのさらに奥の奥にある応接間。
パチパチと鳴る囲炉裏を囲み、たぶん絹製であろう派手な柄の座布団に座らされた。
「改めてようこそ硯桜華!そしてその妹君とお連れの方!もてなすぜ!」
「そして姫様は暫くぶりだな、元気にしてたか?」
胡座をかき、大きな盃に入った日本酒をグイッと飲む八戒さん。
歓迎の言葉とともに差し出されたのは、土のような香りのするお茶と、イナゴの串焼き。
「すんすん…塩焼きの香りがします…!」
涎を垂らす廿華。
管狐兄妹も同じ反応だ。
「街だと甘露煮が多いですが、八戒さんの調理法だとこうなるんですよ。」
そう言いながら手を合わせ、早速イナゴに齧り付く蜜柑。
ちょうどこういうものに抵抗感のない面子が揃ってるんだ…きっと目白なら嫌がったことだろう。
「どうした硯の坊ちゃん、イナゴはお嫌いだったかい?」
「兄様、イナゴは苦手ではなかったですよね?」
一向にイナゴに手を伸ばさない僕に、八戒さんと廿華が首を傾げる。
「あ…いや、その…」
イナゴに罪はない、罪はないけど…一昨日の大名飛蝗のせいで、しばらくバッタは見たくないと思っていたところだった。
「カシラはすぐゲテモノ食わそうとするからねぇ…苦手だったら無理して食べなくてもいいのよ。」
クールに優しく声を掛けてくれるのは、先程のボブヘアの女の人…名前はナントンさんというらしい。
「ゲテモノって言い方はないぜナントンちゃ〜ん…」
八戒さんがそう言うと…
「滋養豊富!」
「風味絶佳!」
ショッカイさんと、先程のポニーテールの女の人・ベニガオさんが、互い違いに声を張り…
「我ら桃山組名物・蠆盆焼きだぜ!」
八戒さんが締め、ナントンさんが無表情で拍手を送る。
焼肉屋さんみたいなテンションだなぁ…
結局イナゴは食べました。
塩味が絶妙に効いていて美味しかったです。
囲炉裏にはイナゴの他にも、青っぽい甲虫を通した串も刺さっている。
不思議に思って見つめていると、八戒さんに気付かれた。
「おーっと硯の坊ちゃん、そいつは食べちゃダメだぜ。」
「それ…何ですか?」
「土斑蝥…噛むとたちまち口の中が焼け爛れて、燃え上がるように痛むんだぜ?」
本当に食べちゃダメなやつだ…と思ったら、八戒さんは土斑蝥をパッと手に取りムシャムシャと頬張り始めた。
「えぇっ!?八戒さん…今毒があるって…」
驚きふためく僕に対して、八戒さんは一瞬キョトンとした後、ゴクッと飲み込んだ。
「おぉ、そっかそっか…ビックリさせて悪い悪い…俺は好きなのよ、こういう“毒”がさ。」
「それで、えーと何だっけ…俺に何の用があって来たんだっけ…」
後ろ頭を掻きながら、串を囲炉裏に戻す八戒さん。
急に連れ去られたのは僕らの方なのに…全く用が無いと言えば嘘になるけど…
するとワンタイさんが呆れたように首を横に振る。
「二日酔い引き摺ってんなぁカシラ…まだ俺たち桃山組の紹介も済んでねぇだろ?」
すると八戒さんは、ハッとした顔でポンと手を打つ。
「そうだった!色々説明すべきは俺の方だったか〜!」
そう言いながら指をクニャクニャと動かしてナントンさんに近付き、引っ叩かれる八戒さん。
この人大丈夫かな…御庭番衆の参謀ですよね…?
八戒さんは立ち上がると、咳払いして話し始めた。
「俺たち桃山組は、ここ帯那山を拠点とする元・大盗賊団だ!」
えっ…盗賊団!?
「設立は四百年前!現在の構成員数2561人!俺は32代目の棟梁だ!」
かなりの大所帯だ。
「元々は甲府藩すら相手に盗みを働く俺たちだったが、十年前の甲州事変で先代も殺されてボロボロになっちまってなぁ…」
「そんな時、傷付いた甲府を共に建て直そうと手を差し伸べてくれたのが、甲府藩主の飯石夕斎様!これまで悪事を働いた分、汗水流して働けばよい…とな!」
「それから俺たちは甲府藩士として、得意の諜報・建築・科学研究で甲府を陰から支える猟兵団になったのさ!」
「俺たちの誓い…それは、賊の身の上から俺たちを武士として拾ってくれた夕斎様に、末代まで忠義を果たすこと!」
部屋の中を歩き回りながら、演説するように大声で話す八戒さん。
「ちょっとダメ人間かも…とか思っちゃったでしょ?」
真横まで寄ってきて耳打ちしてくるナントンさん。
「でもね、ああ見えて器はデカくて面倒見も悪くないんだよ…飲んだくれで女好きだけど、そんなダメなとこもアイツの魅力なのかもね。」
組員の皆んなも呆れた様子を見せながら、気良く合いの手を打っていく。
主従でありながら、互いに心を開ける家族みたいな関係なんだろう。
ダメっぽさも愛嬌ということなのか。
蜜柑が補足する。
「ちなみに桃山組の組員さんたちは、甲府藩の至る所に潜んでいます。藩境で不審な越境者が居ないか監視したり、各地で事件・事故の発生を探知・迅速に報告したりしていただいてます。」
蜜樹さんとも緊密に連携して、甲府藩全域をカバーする情報網を構築しているらしい。
でも元盗賊団という手前、あまり出しゃ張りたがらないのか、民間の知名度はそこそこらしい…八戒さんも御庭番としてあまり顔を出さないから尚更。
僕も今までちゃんと聞いたことがなかった。
「八戒さん、質問です。」
僕が手を挙げると、八戒さんはイナバウアーして答える。
「はいそこ!硯の坊ちゃん!」
いちいちリアクションが大きいなぁ…
それは置いておいて、今一番気になることを訊いておこう。
「夕斎様から、八戒さんのところで困ったことが起きていると伺っているのですが…どうされたのですか?」
すると八戒さんは突然部屋の奥へと走り出し、壁にある窪みに手を掛ける。
「帯那山には、我ら桃山組が神と崇める御神木『オビナ様』が居る…だから俺たちは居場所がバレようと此処を離れる訳にはいかない。」
「だが今そのオビナ様に、“憑き物”が付いちまってるんだ…」
「憑き物…って、なんだよそれ?」
ハッチが口を尖らせると、八戒さんは勢いよくガラッと窪みを横に引っ張った。
すると壁が引き戸のように大きく開き、その先にあったのは…
「見せよう!俺たちの困り事ってのは…コイツのことだ!」
折り重なった、赤黒いミミズのような大量の触手。
あちこちから伸びる、風車と壺をくっつけたような紫色の花と、その真ん中についた鈴状の瞳孔の青い眼球。
さらに所々に大きな裂け目があり、鋭い牙がびっしりと生えている。
そんな異様な植物が…巨木の周りに締め付けるように生えているのである。
~乙種怪魔~
【我樹木子】
これって…怪魔…!?
慄然とする僕たちに、八戒さんは続ける。
「もう2ヶ月になる…コイツは突然オビナ様に巻き付くように現れて、それから徐々に成長していってる。」
「コイツ自身が強固な閨のような結界を身に纏っていて、押しても引いてもまるでビクともしねぇ。」
「雁金の姐御に必殺不可避の極ノ番を頼もうかとも思ったが、それじゃあオビナ様までブッタ斬られちまう…そういう訳で手出しができないまま、時間だけが過ぎてるんだ…」
状況は想像以上に深刻だった。
目黒さんの思い出話なんて聞いてる場合じゃない。
それにしても、その赤黒い触手…どこかで見た気がするけど…
「もしかして、太良峠で出会した木の妖魔…この怪魔と何か関係があるのではないでしょうか?」
僕の発言に、ショッカイさんも頷く。
「はい、俺もそれが気になりました…初めて見たんですが、外見もよく似ていて…」
「なんだそりゃ!もっと詳しく聞かせろ!」
ショッカイさんの発言、そして慌て出す八戒さんの反応に、僕や蜜柑は首を傾げる。
ワンタイさんは「また現れた」と言っていたから、桃山組で周知されていたことだと思っていたけど…
すると八戒さんは、突然ワンタイさんの手元を睨みつける。
「おいワンタイ…何だその“手”は?」
ワンタイさんは食事中で、蚕の唐揚げに箸を伸ばしているけど…その手に何かあるのかな?
「お前、そんなに箸を短く持つヤツだったか?」
「そんな前のめりになって、おかずを取りに行くようなヤツだったっけか?」
「か、カシラ…急に何言って…」
八戒さんは、たじろぐワンタイさんの手を掴み、グイッと顔を近付ける。
「ナメんじゃねぇぞ…俺は覚えてんだよ…組員の顔・声・一挙手一投足の癖まで全部…!」
「特に癖!癖ってのはソイツの魂にまで染みついたもんだ…完璧に真似できるわけねぇんだよ!」
「本物のワンタイはどこへやった…!?」
「わ、ワンタイ…どういうことですか!?」
ショッカイさんもあからさまに狼狽えている。
するとワンタイさんはニヤリとほくそ笑み、陽炎のように揺れながら黒い衣装へ姿を変える…黒装束、石見家の剣客隊だ!
「今頃どっかの井戸の底だよ…くそっ、予定より早くバレてしまったが仕方ない!」
黒装束が傍に置いていた風呂敷を開け放つと、そこから出てきたのは、太良峠でも遭遇した赤黒い木の怪物。
彼岸花の球根なんかじゃなかった…黒装束が持ち込んだのは、怪魔の分体だったんだ!
「『結び開いて 羅刹と骸 囲め 絡めよ 四百を一手に』…『開』!」
黒装束が急いで唱えると、激しい地鳴りとともに部屋の出入り口や窓に半透明の壁が現れる。
「うわぁ!?なんだなんだ!?」
「(゜O゜;」
慌てふためくハッチとソウカ。
「こ、これは…」
「廿華ちゃん、私の後ろに!」
近くに居た廿華を咄嗟に庇う蜜柑。
これは小型の筵…!?
でも今は驚いてる場合じゃない…僕はすぐに囲炉裏を跨いで飛び出し、黒装束の顎に蹴り込む。
「ごぁっ!」
黒装束は倒した、でも怪魔をどうにかしないと…
そう思って怪魔の方へ振り返ると…
「オロ…ロロロ…」
炎のように波立った刃が、怪魔の眉間を貫いていた。
剣を持っていたのは八戒さん…その刀剣は、毒蛇を模した鍔に、持ち手がスポイト球のようになっている。
「毒の聖剣、名は『毒髏』…一舐めすれば死出の味!」
八戒さんは声を張ると、持ち手のスロットに「蠱毒のエボシ」と書かれた紫色の術巻を入れる。
「『忍風』!」
八戒さんの全身に紫色の液体が飛び散り、グチョグチョと音を立てながら広がっていき…手足や背骨に沿って鋭利な棘の生えた、紫・青・緑の混じったサイケデリックな風合いの西洋鎧に変化した。
「『宴安鴆毒・酔い痴れ“毒髏”』…!」
八戒さんが詠唱とともに持ち手のスポイト球を握り込むと、毒髏の刀身の付け根が膨らむ。
〈毒髏献杯!蛟竜毒蛇の凶刃が、烈火の如く身体髪膚を蝕み冒す!〉
~蛇桃剣~
【毒髏】
膨らみは紫色の光を放ちながら、鋒へ、そして怪魔へと移動していき…
「『熟爛魔術』…『鳳仙花』!」
八戒さんがパチンと指を鳴らすと、怪魔はその場で木っ端微塵に弾け飛んだ。
──────
─2031年3月15日 10:30頃─
〔甲府藩 甲府市 切差 帯那山山頂付近〕
ザク、ザク、ザク…
揺れる山の木々の間を、西洋鎧を着込んだ鎧武者が、一人山頂を目指して歩いていく。
目元は暗く、兜の中は窺えない…
しかしその瞳はしっかりと、桜華たちのいる社殿を捉えていた。
〔つづく〕
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〈tips:人物〉
【山伏の八戒】
甲府御庭番衆参謀で、甲府藩の猟兵団「桃山組」の棟梁。
21歳・チンパンジーの獣人で、段位は乙位。
桃山組は元々盗賊団であったが、十年前の甲州事変で棟梁を失い危機に瀕していたところを飯石夕斎に拾われたことから、以降は甲府藩に忠誠を誓い猟兵団として活躍している。
大好きなものは酒と女と毒のある食べ物で、四六時中酔っ払いながら毒虫を咥えて美女を追っ掛けるダメ人間。
一方で部下への愛情は強く、2000人を超える組員の顔・声・仕草に至るまで全て記憶している。
毒の聖剣は、14年前に自身が甲府城から盗み出したところ、偶然適合した。
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