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甲州御庭番劇帖  作者: 蕃石榴
壱ノ巻-第一章『竜驤戴天』
26/57

#26 戮力 破「雷の聖剣と新閃目白」

時は2031年。

第22代江戸幕府将軍の治める太陽の国、日本。

此処はその天領、甲斐国・甲府藩。


豊かな水と緑を湛えるこの地は今…


その一割を「彼岸」に蝕まれている。

 破 ~雷の聖剣と新閃目白~


 ─2031年3月13日 17:30頃─


 〔甲府藩 甲府市 酒折町 シャトー酒折ワイナリー〕


 ガチンッ!ガチンッ!ガチンッ!


 上下左右に素早く首を動かし、その大顎で恋雪さんを捕らえようとする大名飛蝗。


 ポンッ!ポンッ!ポンッ!


 恋雪さんはその度に小鼓のような音と煙を立て、大名飛蝗の攻撃とは反対の方向へ瞬間移動する。


「くそっ!捕まえらんねぇ!この子鼠がぁ〜…!」

 攻撃を続けながら悪態を吐く大名飛蝗に、恋雪さんはケラケラと笑う。

「小鼠じゃなくて小狸ッスよ〜♫こんなのにもついて来れないの〜?」

「スピン!スピン!スピン!ほ〜らいくッスよぉ〜!」

 恋雪さんは声を張り上げると、空中で乾坤圏を持つ両手を横に伸ばし、自身の体を軸に独楽のようにクルクルと回転し始める。

 そして真横に接地すると、車輪のように地面を転がり、ドリフトしながら大名飛蝗の大顎をさらに避け…


 ザシュッ!


 下から上へ、大名飛蝗の胴を大きく斬り刻んだ。


「つ、強い…」

《恋雪ちゃんのソウル能力はその名も「ツイスター」。内容はカンタン!回れば回るほど強い風を巻き起こすのよ〜ん!》


「命令をいいことに一人で勝手に突っ走りやがって…もうこうなったら仕方ない…桜華、俺たちで要救助者を回収するぞ。」

「はい!」

 僕は目白の提案に乗り、戦闘は恋雪さんに任せて、筵に閉じ込められた人たちの居る建物の方へ駆け出す。


「おいお前ら…どこへ行く気だよ?こっちは人間は逃すなって言われてるんだぞぉ〜!」

 大名飛蝗は建物へ向かう僕たちに気付くと大顎を開き、こちらに向かって先端にさらに口のついた吻を長く伸ばしてくる。

「恋雪!俺たちは建物内の一般人を救助しに行く!そいつの相手は任せたぞ!」

 目白が建物へ駆けながらそう言った途端、伸びてきた吻は途中で寸断された。

 やっぱり速い…!そして強い!

「おおお…!目白先輩がボクを頼りにしてくれてる〜!がんばるぞ〜!」


 ─2031年3月13日 17:40頃─


 〔甲府藩 甲府市 酒折町 シャトー酒折ワイナリー〕


 建物内の人たちは全員大きなケガはなく、逃げ遅れも無かった。

 建物に横付けしたギッシャー三台に急いで避難者たちを乗せ、僕と目白も緊急輸送用ギッシャーに乗り、ワイナリーを後にする。

 ワイナリーの駐車場を出る時、ミラーにこちらに向かって手を振る恋雪さんの姿が見えた。

「行ってらっしゃい目白先輩〜!がんばれ〜!」

「そして硯桜華〜!ボクとの勝負忘れないでくださいよ〜!」


 第二の筵の壁を出ようとした時、あることが気になった。

「目白、なんだか…虫が多くありませんか?」

「…なんだ?虫?」

 筵の壁際に並ぶようにして集まっている、大量の緑色の虫…僕と目白が屈んでよく見てみると、虫の正体はバッタだった。

《う〜ん?もしかして普通のトノサマバッタかしら〜?浄化瘴気の濃度は薄いわ〜ん。》

 バッタたちはムシャムシャと音を立てながら、筵の壁に張り付いている。

 何をしているんだろう?


「浄化瘴気の影響かもな…山岳地帯の筵内で、浄化瘴気を浴びた鹿や猪がその場でひっくり返ったり筵の壁に頭を打ちつけたりしてるのを見たことがある。」

「筵内に居る動物たちは、浄化瘴気を浴びることで異常行動を起こすことがあるっていう話だ。」

 確かにそれなら、本来餌のない場所で顎を動かすだけしているバッタが大量に居るのも、納得はできる。


 ところが…


 ──────


 ─2031年3月13日 17:50頃─


 〔甲府藩 甲府市 東光寺二丁目 甲府市立東尋常中学校 校庭〕


 シャク、シャク、シャク、シャク…


 東光寺二丁目の中学校にある第一の筵…

 大量のバッタたちはそこにも居た。

 筵内に入るなり、あちこちからザワザワと湧き立つ咀嚼音。

 かなり異様な状況だ。


「ねえ目白、さっきも気になったのですが…バッタって今の時期…」

 僕が尋ねると、目白はバッタの群れを怪訝な顔で見つめながら返答した。

「ああ、おかしいんだよな…バッタは初夏に出てくる昆虫だ。ましてや成虫だぞ…この時期に、こんな大量の成虫を自然に見つけられるはずはねぇ。」


 でもそれ以外、筵内に特段異常はみられない。

 ひとまず、僕と目白は校舎内を見て回ることにした。


 ──────


 ─2031年3月13日 17:50頃─


 〔甲府藩 甲府市 東光寺二丁目 甲府市立東尋常中学校 校舎内〕


 校舎内もしーんと静まりかえっていて、やはり特に何の気配もない。

 僕と目白は、はぐれないよう二人一組で校舎内を探索する。


 ここは、つい先々週まで僕の通っていた尋常中学校。

 藩校に編入してまだ一週間ちょっとしか経っていないのに、だいぶ懐かしい感じがする。

 僕は目白と話しながら、廊下を進む。

「桜華はつい前までここに通ってたのか。」

「はい、まさかすぐにまた来ることになるとは…」

「…俺たちはお前の編入を歓迎してるけど、こっちはどうだったんだ?」

「反対はされませんでしたよ、思ったより皆んなすぐ理解してくれましたし、『そうなんだ、行ってらっしゃい』という感じですんなりと送り出してくれましたよ。」

「そんなもんなのか?」

「そんなものだったみたいです…別に仲が悪かったわけではありませんよ?」

「そうか…」

 尋常中学校の人々の対応は、目白からすると薄情に思えるのかもしれないけど…

 僕が居なくなることを寂しがって、また会いに来てねと言ってくれる人もそれなりに居た。

 それでも「思ったより」なんて考えてしまうのは、あそこで泣いて僕を引き止めてくれる人が居てほしかったのかもしれない。


「はぁ…バッタの件、確証はないが嫌な予感がする…別件の妖魔なだけとかだったら良いんだが…」

 藩校の皆んなの前で甘いマスクの王子様として振る舞っている時に比べ、僕や蜜柑と一緒に居る時の目白は笑顔が少なくため息が多い。

 何を隠そう、実はこっちが素の目白。

 あんなに引っ込み思案だった目白が、藩校のアイドルになっていると知った時にはとてもビックリしたけど…目白は昔から他人の気持ちを大事にする、優しく真面目な性格の持ち主。

 周囲からの期待を裏切れなかった結果が今の「王子様」なのだとしたら、十分納得がいく。


 特にこれといった手がかりも掴めない中、電灯の点いた廊下を二人で歩いていると、ふと目白が僕に切り出してきた。

「桜華…改めて言うが、恋雪の言ってることは真に受けなくていいからな。」

 もう何回目かになる、目白の忠告。

「えっと…僕、本当にそれでいいんでしょうか?」

 僕がそう答えると、目白は立ち止まって振り返りため息を吐く。


「いいに決まってんだろ、お前が何したっていうんだよ。」

「だって僕…いきなり御庭番衆に入ったんですよ?昔から僕のことを知ってる蜜柑や目白たちが受け入れてくれるのはわかりますが…恋雪さんのように僕のことを全く知らない隊員からすれば、僕はただの余所者に過ぎません。」

「だからって、城内で果たし状を突き付けたり、任務中に勝負をしかけたりしていいわけじゃない。」

「それはわかっています…でも僕は、恋雪さんと向き合わずに、このまま逃げていていいとも思えません。」

「桜華…そうだとしても、これだけは言っておく…お前は何も悪くない。」

「っ…!」

「お前は十年前、理不尽と呼ぶにも余りある仕打ちを受けた…そして十年間、お前は記憶を失いながら生きてきたんだ。」

「そうですよ、僕はそうやってのうのうと…」

「桜華…」


 すると目白は、僕の右肩をガシッと掴み、真剣な目で僕を真っ直ぐ見つめてきた。

「二つ言っておく。」

「一つ…過去に自分が何もできなかったという事実は、ただそういう事実でしかない。お前はその事実を、何でもかんでも引っ括めて『自分が悪い』って結論に落とし込もうとするな。」

「二つ…これは俺の我儘だし、今さっきの発言とも矛盾するが…俺は十年前、何もできずにお前を失った。だから桜華…今度こそ、お前のことは俺が守る。」

「何があっても俺はお前の味方だし、十年前のことを理由にお前が不利益を被ることを、俺は許したくない。」


 目白、僕のことをそんな風に思っていたんだ…だから事あるごとに、何の躊躇いもなく僕を助けたり庇ったりしてくれたんだ。

 恋雪さんのことはやっぱりモヤモヤするけど…必ず味方でいてくれると言ってもらえるのは、今の僕にとっては何より心強い。

《おばちゃんも桜華くんの味方だからね〜ん♡いつでも頼るのよ〜ん♫》

「はいはい、御袋はむしろもう少しベタベタするのを控えろよな…蜜柑はともかく、俺も桜華ももう14なんだが。」

《えぇ〜?つれないこと言わないでよ〜ん…》


「ありがとう、目白、蜜樹さん。」

「でも僕やっぱり…恋雪さんとは、どこかでちゃんと向き合いたいです。」

「皆んなが僕の気持ちを大事にしてくれるように、僕も恋雪さんの気持ちを大事にしたいから。」


 僕の台詞に、目白はまたやれやれとため息を吐いたけど、その顔には優しい笑みがあった。

「まったく…お前は優し過ぎるんだよ…まあそこまで言うなら、俺も文句は言わないでおいてやる。」

「別に恋雪にだって、(わだかま)りをずっと抱えていてほしいわけじゃないからな。」

「ただし、事は穏便に運べよな…桜華はケンカが嫌いだから、お前の方から荒っぽいことにはしないと思うが…」

「あんまり恋雪に流されるなよ、あいつはやんちゃだからな。」

 仲間のことを日頃からよく見ている、目白らしい発言だ。


《も〜、目白も大概心配性よ〜ん?もっと桜華くんたちのこと信じてあげても…って、二人とも!九時の方向から何か接近してるわ!》

 突然の警告に教室側の窓を向くと、向こう側から巨大な虫のような影がこちら目がけて、大きな翅を開いて突進してくる。


「構えろ桜華!突き破ってくるぞ!」

「はいっ!」

 目白は「Lightning(ライトニング) Venus(ヴィーナス)」と書かれた黄色の術巻を取り出すと、左腕の磊盤の右から二番目のスロットに入れる。

 磊盤には、金色に緑色の紋様が刻まれた八方型の手裏剣がついている。

「『忍風』!」

 目白がそう唱えて素早く抜刀すると、磊盤の手裏剣が稲光を発してグルグルと回り、目白の背後にスズメバチの姿をした金色の巨大なからくり人形が飛んできて腹を前に向ける。

 スズメバチの腹からは黒い布と黄色の鎧が吐き出され、次々に目白の体に装着されていった。


 黒い下地に、黄色と白色を基調とした、所々金色の混じった装甲。

 金色に光り輝く髪。

 これが目白の聖鎧…その見た目は僕や蜜柑の聖鎧と概ね変わらない。


「『忍風』!」

 僕も続いて聖鎧に武装する。


 バリイィン!ドゴッ!ガシャンッ!


 目白の言った通り、影は僕ら目がけて窓ガラスを突き破って突進してくる…

 近付いてきて見えたのは、第二の筵にいた大名飛蝗そっくりの、大きなバッタの怪物の姿だった。


 バッタの怪物は目白に向かって大顎を開けて飛び掛かるも…目白はすんでのところで身体を右に倒して躱すと、そのまま体を一回転させ、右手に持った聖剣で怪物を廊下へ打っ飛ばした。

 その間わずか一秒未満。


「ぐおぉ…速いし痛いし、何なんだお前…」

《おぉ〜?ワイナリーの怪魔とそっくりね〜?違うのは体が茶色いことくらいかしら〜ん?》


~丁種怪魔~

大名飛蝗(だいみょうばった)(かつ)


「バッタ型の怪魔…嫌な予感は当たったな、同時発生した二つの筵には何か関連があると見た。」

 目白はそう言って聖剣をクルクルと回し、霞に構える。

 梔子色の刃には杉の木のようにギザギザとした紋様が描かれていて、黄緑色の火花が表面でパチパチと散っている。


「斬れば(たちま)ち稲妻走り、空は裂かれて悲鳴を上げる。」

「そのところから、この剣を人呼んで『霆喘(ていぜん)』。」

「『紫電清霜(しでんせいそう)・叫べよ“霆喘”』!」


 ゴロオォーン!


 目白が詠唱して聖剣を真上に向けると、天井から青白い稲光が落ちてきて、聖剣の刀身に降りかかる。

 聖剣の刀身も激しく青白く光り輝き、周囲に火花が散り、建物内も一瞬激しく明滅した。

 これが目白の、雷の聖剣…


~雷絨剣(らいじゅうけん)~

霆喘(ていぜん)


〈霆喘快刀!紫電の天女が雷絨剣に宿りし時、金色の刃が魑魅魍魎(ちみもうりょう)を貫き穿つ!〉


「か、雷の聖剣…!お前、何者だぁ!?」

 喚く大名飛蝗に、目白はニヤッと不敵な笑みを浮かべる。

「新閃目白…ビリッと来るぜ、俺との出会いは。」


 直後、大名飛蝗の吻が目白の顔に向かって伸びてくる。

「やってくることも同じか、芸が無いな。」

 目白は寸前で首を傾けて躱して地面を蹴り、剣をクルクルと回しながら真横を駆け抜ける。

 すると吻には根元まで螺旋の切れ込みが描かれ、紐のように三本に裂けてしまった。

「ぐわぉ…っ!?痛あっ…!?」

 大名飛蝗はたまらず両手で大顎を押さえようとするが、その両腕すらも一瞬で切り落とされる。

「ぎゃあぁっ!」

 悲鳴を上げながら仰け反る大名飛蝗。

 目白はクルッと剣を持ち直すと、左手の親指と人差し指で丸を作って照準をつけるように構え…

 激しい雷撃を刀身に纏わせ、目にも留まらぬ速度の刺突で、ガラ空きになった大名飛蝗の胴を撃ち抜いた。

「…『雷槍(ブリッツ・ランツェ)』」


「ぐふおぉ〜っ!?」

 大名飛蝗の背後にまで伸びる稲光。

 大名飛蝗は勢いよく吹っ飛ばされ、廊下の突き当たりの壁に激突する。


 目白は四歳の時点で既に、刀を持たせるとすぐに大人顔負けの剣技を使いこなす程の、天才の片鱗を見せていた。

 今の丙位の段位も、御庭番任命後一回目の段位査定で決まったらしい…当時の目白はまだ七歳で、丙位認定の最年少記録を更新した天才と大騒ぎになったそうだ。


 今の戦いを見ていればわかる。

 速度・技術・火力…どれを取っても、僕や蜜柑より一枚上手だ。


《チョベリグよ〜ん!目白〜♡》


 大名飛蝗は壁にめり込んだまま動かなくなった。

「呆気ねぇな…シビれ過ぎてヤキが回っちまったか?」

「本当に強いんですね、目白…カッコよかったですよ。」

「当然だろ?これくらいさっさと片付けられなきゃ、新閃家の次期当主なんて恥ずかしくて名乗れねぇよ。」

 口ではそう言いながらも、耳や尻尾は素直に飛び出る目白。

 僕に褒められて照れているのが丸分かりだ。


 動かなくなった大名飛蝗に対し、目白もまたその場に立って動かない。

「止めは刺さないんですか?」

「今考えてるとこだ…俺はあいつが気絶したという確証を得ていない。」

「気絶したフリをしているかもしれない、ということですか?」

「そういうことだ…相手は普通のバッタじゃねぇ。恋雪や俺に出してきた吻以外にも、何か隠し玉がある可能性は捨てきれない。」


 そんな話をしていると、突然建物がガタガタと激しく揺れ始めた。

「なっ…急に地震が…?」

 窓の外を見ると、筵の壁の表面がジワジワと紫色に染まっていき、歪んでいくのがわかった。

《二人とも!緊急事態よ!今になって筵の範囲が急速に拡大してるわ!》

《衛星画像を確認してるんだけど…第一の筵は東方向に、第二の筵は西方向に、それぞれ伸びていってるのよ〜ん!》

 蜜樹さんからの緊急の報告に、目白も冷や汗を垂らす。

「拡大だと…?しかも東西方向に…?」

「目白…外を見てください!」


 窓の外に見えるのは、東側の筵の壁へと飛んでいく大量のバッタの群れ。

 その数は夥しく、幾つもの黒い雲が湧き出しているかのようだ。

 地震はどんどん強まっていき、終いにはドーン!と激しい縦揺れを起こして…そこでピタリと止んでしまった。


 すると通信機から、蜜樹さんの震える声が聴こえてきた。

《お、落ち着いて聞いてね二人とも…今リアタイで衛星画像を観てるんだけどね…その…》

《二つの筵…つ、繋がっちゃったわ〜ん!》


「「えぇっ!?」」

 僕と目白が声を揃えて驚きを口にした次の瞬間、太く長く尖った何かが突然伸びてきて、僕と目白の頬を掠めた。

 急いで振り向くと、そこにはさっきまで動かなくなっていた大名飛蝗の姿があった。


「フゥー…フゥー…」

 大名飛蝗の様子がおかしい。

 息を荒く切らし、体の各部はグニグニと歪んで蠢いている。

 そして大きな雄叫びを上げると、自身の体を脱ぎ捨てるように引き裂いた。


 ブチブチブチィッ!


「ぐおォ〜!おオォ〜ッ!」


 顕になったのは、先程よりも一回り大きな、真っ黒に染まった姿。

 六本の脚にはノコギリのような棘が生え、翅はより長く幅広く伸びている。


「どういうことだ…何が起きてる!?」


 真っ黒になった大名飛蝗は、雄叫びを上げながら駆け出すと、翅を開いて再び僕ら目がけて飛んでくる。


 突然の事態に頭が追いつかず、狼狽える僕と目白。


 そんな僕らの背後には、黒い骸骨の影が忍び寄っていた。


「ヘヘッ…今度のご馳走は雷の聖剣か…唆るねぇ…」


 〔つづく〕


 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

〈tips:聖剣〉

 聖剣No.19

雷絨剣(らいじゅうけん)・『霆喘(ていぜん)』】

 世界の楔となる20本の聖剣の一振で、雷の聖剣。

 現在の所持者は新閃目白。

 始令は「紫電清霜・叫べよ〜」。

 刃渡60cm程の打刀の外観で、刀身の紋様は三本杉。

 目白の発する電気を蓄電・放電する能力があり、刀身の導電性は自在に操作できるほか、生物が発する微弱電気を感知する機能も持つ。

 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

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― 新着の感想 ―
目白君の聖剣かっこいい!!!! 雷属性はやっぱりかっこいいですね!友達想いな所もかっこいいぞぉ…! そして大名飛蝗がフォームチェンジ…もう出てきた時から嫌な予感がしてましたからね…怖いけど次が楽しみ……
目白くんかっこよくて頼りになるお兄ちゃんだ…! 恋雪ちゃんのツイスターかっこいい、やっぱり風って勢いがあって俊敏でかっこいいですね…子供らしくて可愛い子だ… 飛蝗って名前かっこいいけどちょっと蠢く想像…
ぎゃーヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。 Gですやん!! 怖すぎる〜!!サブイボたっちゃいましたよ(それくらい表現が上手いってコトです) ちょっと癒されに24話に戻ってきますw 恋雪ちゃんを吸わねば!!
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