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海賊船クイーン•フウェイル

またちょっと間が空いてしまって申し訳ないです。

まだまだ続きます。

「キャルを返してくれないか?」

 高々にに叫ぶと、海賊たちの間から、一際目立つ容貌の背の高い男が現れた。

「あんたがあのお嬢さんの連れかい?」

「•••君は?」

「俺はこいつの持ち主だが?」

 睨み付けるセインをものともせずに、男は自分の足元、すなわち船を親指で指し示す。

「そうですか。僕はセイン。キャルを返して下さいませんか」

 あくまでもキャルの安全を確保したいセインの視線は、鋭く、用心深く少女の姿を探している。

「そんなに気になるのか?」

「人を一人、攫っておいて言う事はそれか」

 船上を彷徨っていた視線が、再び自分に向けられた事に満足したように笑うと、男はセインの肩を抱く。

「俺が気になっているのはアンタだ。アンタの出方次第だな」

「出方とは?」

 肩を抱く手を払いのけて、セインは一歩半、左足を下げて身を引いた。

 いつでも動けるようにするためだ。

「セインっていったよな、アンタ。そう、アンタが持っている剣。良い剣なんだろ?なんせ聖剣だ。それを俺にくれないか?」

「あれを聖剣と確信しての交換条件ですか」

「そういう事だな。お嬢さんに聞いたんだから、誤魔化そうったって無駄だぜ」

 セインはズレてもいない眼鏡のズレを直す。

 眼光が鋭くなったのを、男は見逃さなかった。

「正直アンタごと欲しいんだがね。無理強いは宜しくない。だから、まずは剣だけでどうだ?」

「•••正気か?」

 無理強いも何も、最初から今の今まで無理強いしかしていない海賊が、何を言い出すのかと思えば、セインの耳元に囁く。

「それともやっぱり、アンタがこっちに来てくれるかい?でなきゃ、あのお嬢さんはサメの餌にでもするとしようか」

 すう、と、セインの眼光が冷えて行くのを、間近で見ながら男は満足げに笑った。

「•••僕を、怒らせない方がいい」

 その言葉に、男以外の海賊たちは一斉に笑い声を上げた。

 色素が薄く色白で、背は高いが線の細いセインが、自分たちをどうこうできるなどとは思えない。

 一瞬。

 セインが身を低くした。

「来た!」

 嬉しそうに、緊張した面持ちで男が呟く。

 ドン!

 まずは一撃を寸でで躱す。

「ッチ!」

「ひゅう!あっぶね!」

 セインの舌打ちにニヤリと笑って返すが、パッと、セインの姿が消えた。

「ぎゃ!」

 彼が立っていたすぐ右横から悲鳴が上がる。

 キイン!

 続いて先ほど悲鳴を上げた男が倒れ込む前方から、短剣が弾け飛んで高い金属音を響かせた。

 丸腰でいたはずのセインの手には、いつの間にか剣が握られていた。

「野郎!」

 気づいた一人が切り掛かるが、あえなく躱され、代わりに柄で頭部を殴られて昏倒。

 今度は立て続けに二人がかりで右と上部から切り付けるが、セインは長身をひらりと舞い上がらせると、剣を軸に体を回転させて一人を蹴り飛ばし、着地ざまにもう一人の短剣を器用に剣先で弾き飛ばして、勢いのまま肘鉄を腹に喰らわせた。

 次々と倒れ始めた仲間に、海賊たちは殺気立った。

「お嬢さんが剣の使い手だとは聞いていたが、まさか自身が凄腕だとはね」

 楽しそうに、船の持ち主は呟く。

「そこまで!」

 響き渡った一括に、全員が声の主を振り返った。

「キャル!無事だったんだね!」

 そこにいたのは、小さな手足を踏ん張らせて立つ、ふわふわの金髪の少女だった。

 セインは周りの海賊たちを押し退けて駆け寄ると、彼女をぎゅっと抱きしめた。

 ボカ!

「あ痛!」

 セインに抱えられたまま、ちょうど彼の頭に手が届くのを良いことに、キャルは思い切りセインの頭を殴った。

「あたしを一人にするなんて!」

 ぽかぽかと、小さな拳で何度も殴られて、セインの眼鏡はどんどんズレていく。

「ごめんよキャル。だからこうして来たじゃないか」

「遅いのよ!」

「小舟を出すのに手間取っちゃって、甲板によじ登るのも大変だったんだ」

 セインはキャルの小さな頭や頬を、何度も撫でる。

「もう!本当に来てくれないかもって思ったんだから!」

「ごめん、ごめんってばキャル」

 ぐしぐしと、涙を溜めて、今にも溢しそうな少女を一生懸命宥める青年に、海賊たちは呆気に取られた。

「は!はははははは!」

 大きな、まさに大笑といった笑い声に、一同は振り返った。

「キャ、キャプテン?」

「は!こりゃあまいった!」

 さも面白いと言わんばかりの、自分たちの船の主に、海賊たちも戸惑い気味だ。

「気に入った!」

「は?」

 男は二人をビシッと指差した。

「キャルだっけ?お嬢さん、エルグランド島に連れて行ってやろうじゃないか」

「は?!」

 この発言に、海賊たちは顎が外れそうな勢いで、ぽかんと口を開けた。

「俺様はギャンガルド。この船のキャプテンだ。海賊王と呼ばれているらしいから、ちったぁ、知られた名だと思うが?」

 男は自分の胸元と、船上にはためく船旗とを、交互に示した。

 キャルは慌てて男の顔と、旗とを、何度も確かめる。

「あー!」

 今度は大声をあげて、キャルが男を指さした。

 旗に描かれるは黄金のマーメイド。

 三叉の槍を携え、王冠を手にした、海の女王。

 この旗を持ち、大帆船クイーン•フウェイル号を駆る、海賊王の異名を持つキャプテン•ギャンガルドといえば、泣く子も黙る海賊の中の海賊だ。

 しかし、キャルの口から出た呼び名は違っていた。

「賞金首一千万ゴールド!」

「え?そうなの?」

 海賊といえば大概国境を関係なく走り回る上に、それなりに海の治安も管理してくれるので、取り締まりなどの対象にはなれど、賞金クビにされてしまうような事はないのだが。

 力を持ち過ぎて、各国から嫌われて賞金を掛けられてしまった。

 ギャンガルドはそういう、唯一の海賊だ。

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