三十二話 三つ巴の攻防
廃工場では連と真也が戦っているせいか、廃工場内からは激しい物音がとどめなく流れている
廃工場内で戦っているのは連で、真也は廃工場外で戦っているようだ
「アイスウルフ!!」
「効かねぇよ」
連が放つアイスウルフを全て拳と蹴りで粉砕し、地面を強く蹴り、連との距離を一気に詰める
距離を詰められた連は、素早くフックを繰り出すが、相手は身を屈めフックをかわす
そして懐に入り込みラッシュを打ち込み、最後に前蹴りで連との距離をとる
(ちっ、速い………秀の韋駄天と張り合えるぞあれ)
「おいおい、つまんねーぞ氷男」
「へんなアダ名付けんな、俺は夜坂 連ってんだよ」
「俺だって奥山 文って名前があるんだよ」
お互いに名前を知ったところで一旦動きを止めた二人だが、互いににらみ合い戦闘が再開する
「ああそうかい、じゃあ行くぜ!!」
「来な!!アイスウルフ、アイスドラゴン!!」
数多の狼と一匹の龍が襲うが、アイスドラゴンをかわし、アイスウルフを全て破壊した。
そして破壊したと同時にまたもや同じような攻撃で連を攻撃する
「くっ、なら………これでどうだ」
連が造り出したのは巨大な鎌で、それをなぎはらうように振る
「当たらねぇよ!!」
ジャンプで鎌をかわすが連の狙いはジャンプさせることだった
「飛んだな、氷槍・包」
「げっ、まずった!!」
公園の時のように両手を合わせるようにして閉じ、奥村に氷の槍が襲いかかる
「ちっ、仕方ねぇな…………スパーク!!」
「な、電気だと!?」
体から放出した電気が氷の槍を全て破壊した
「それがお前の能力か」
「ああそうだ、俺の能力は魔力を電気に変える、それが俺の能力さ」
「氷槍・包は破られたけど、お前の能力が分かっただけでもよしとするか」
「能力が分かっても、無駄なんだよ、疾風迅雷!!」
奥村の足に電気が流れ、流れると同時にさっきのスピードで動きだす
(ちっ、さっきのスピードはこれかよ!!)
飛んできた奥村は素早くハイキックを繰り出す
それをガードするが、奥村の休みなく繰り出される攻撃に防戦一方にになる
「おらおら、守ってるばっかじゃ勝てねぇぞ」
「くっ…………なめんなぁ!!」
「っ!!!!」
奥山が驚いたのも無理もない、なぜなら連の体から氷の槍が飛び出したからだ
「氷槍・鎧………これならお前の攻撃は通じない」
「氷の槍の鎧が着たくらいで調子に乗るなよ、しかも俺の攻撃が肉弾戦だと思うな」
疾風迅雷で動き出す奥山だが、連は動こうとせず、じっくりと息を整える
奥山はぐるぐると連の周りを回り、攻め込むタイミングをうかがい、そして飛び出す
「雷電掌波!!」
掌手から打ち出された雷電が連を襲う
「これならお前の氷の鎧など関係ない!!」
「さあ、それはどうかな」
笑みを浮かべた連は奥山の雷を全身に浴びたが、連は倒れることなく、当然のように立っていた
威風堂々に氷の鎧を着たまま、奥山を見ていた
「バカな、雷電掌波を受けて無事だと………」
「驚いている暇はないぜ、アイス……ウルフ、ドラゴン、タイガー、ホーク」
地上からは狼と虎、空中からは数多の鷹と龍が奥山向かって襲いかかる
「おいおい、ここは動物園かよ、雷電爪刃」
手を熊手に構え目の前の空気を切り裂くように手を振ると、秀の風刃の雷バージョンがアイスウルフを破壊するがまだ鷹、虎、龍が残っていて、奥山は疾風迅雷で大きく距離をとるが、連が造形した氷は追尾性を持っていた
「ちっ、しつけぇなぁ…仕方ねぇ」
ある程度の距離をとった奥山は目を閉じて何やら呪文のようにぶつぶつと呟いている
そして連の攻撃が当たるというところで、奥山は目を開た
「麒麟!!」
奥山の前に現れたのは、鹿のような姿をしていて、尻尾は猛猛しさを感じる牛の尻尾で、蹄は荒々しさを感じさせる馬の蹄
そして何よりも竜のように生えた角が印象的だった
麒麟がまるで首の柔軟のように首を振ると、アイスドラゴン、タイガー、ホークに的確に雷落ち、全てが粉々に砕けた
「ははは、洒落になってねーぞ、それ」
「はぁ、はぁ、はぁ、当たり前だ、これはかなりの魔力をつぎ込まなきゃならない技だからな、行け麒麟!!」
猛スピードで走ってくる麒麟の体は帯電しているようで、あの様子では技を出しても砕けるのがオチだ
「アイスフロア!!」
廃工場の床全面を凍らせ、その上を滑るようにして麒麟の猛追をかわす
「なるほど、スケートか」
すいすいと滑って行くものの、麒麟の猛追に追いつかれつつあった
一歩一歩が力強く、麒麟が走った後の氷は砕けていた
これでは麒麟に捕まるのは時間の問題だと思った連は逃げつつも、奥山に向かって滑る
「アイスニードル」
「動く力ぐらいは残ってんだよ、疾風迅雷!!」
簡単にアイスニードルをかわし、連との距離をとる
どうやら自分は戦うつもりはなく麒麟に任せるつもりらしい
その麒麟は止まることなく、相変わらす連を追っている
(逃げてばっかりじゃダメか………)
そう思った連は高く跳び両手を上に上げた
そして上げた両手には巨大なハンマーを造形し、麒麟に向かって振り下ろした
「アイスメイス!!」
アイスメイスは連の技の中ではインパクトNo.1の技だ
がしかし
アイスメイスは麒麟に当たったとたん麒麟の体に帯電している電気で砕け散ったしまった。
「アイスメイスが……」
「おいおい、驚いてる暇あんのかよ」
「っ!!」
連は気付いた………自分が今空中いることを
空中で動ける筈もなく、麒麟の突進は連に直撃した。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」