二十九話 家族で買い物
男達を一蹴してから時は過ぎ、三人は駅から少し歩いた大型のショッピングモールに来ていた
「ねぇ秀これなんてどうかな?」
ひらひらと服を自分に服を当てる母
「似合うけど、少し派手かな」
「えー、じゃあこれは?」
「それは地味かな……………こんなんもんどうかな?」
「………うん♪いいねこれ」
服をあてながら鏡の前でくるりと一周する
「あ、秀は咲恵の所に行ってきたら」
「今日の主役が何でコキ使わされてんだよ………」
「昼食後はあなたが主役だからね♪」
「へいへい」
とぼとぼと歩いて婦人服コーナーを出た秀は、咲恵の所に行った。
―三F―
女性服コーナーで服を選ぶ咲恵に店員に少し押されて気味のようだ
「えっと少し派手かと思います……」
「最近は少し派手が流行りなんですよ」
「えーと………」
押され気味の咲恵に見かねた秀は
「やっぱ派手かな〜、これくらいのがいいんじゃないのかな?」
パッと服を見せる秀に店員は手を口にあてながら微笑む
「うふふ、彼氏さん待ちでしたか、これはこれは失礼しました」
「か、か、彼氏///」
顔を真っ赤にした姉は、服選びどころじゃなくなっていた
そしてそれにもちろん悪ノリする秀
「咲恵、こんな服なんてどうかな」
秀の悪ノリに人間ではできないほどの色をしていた姉を見て止めることにし、耳元でごめんっ囁くと、姉の腕を引っ張り店の外に出し、出ると同時に姉に腕を思いっきしつねられた
「っ!!!!」
「ったく、いきなり何てこと言うのよ!!」
「何だよ、なくもねぇ顔してたくせに」
「…………///」
姉が再び黙った所で、ポケットに入った携帯が震え、取り出すと、4Fに集合と母からメールが届いていた
―4F―
「よし、全員集まったわね」
「全員集まったっつったって三人だろ」
「まあ気にしない気にしない、さあ秀、昼食は何がいい?」
「フランス料理のフルコース………」
「チェストォォ!!」
母は掛け声と同時に腹部を殴ると、顔をひねり顔をファミレスの方向に向け
「どこがいい?」
「ファミレスがいいです……」
「もう秀ったら、謙虚ね」
結局その日の後半も秀が主役となることはなかった
そして時は過ぎ夕方、一通りの買い物が終わった後、家に前まで着いたところで母と姉が秀の前に行き、秀を止める
「どうしたんだよ?」
「秀は10秒数えてから入って」
「は?」
意味が分からず呆然と立ち尽くす秀は仕方なく10秒数えてやることにした
「1、2、3、…………………10!!」
10秒数えた秀は一度深呼吸した秀は家の扉に手をかけ扉を開けた。
「「誕生日おめでとーう!!」」
玄関に入ると同時に祝い言葉とクラッカーの糸屑が飛ぶ
「浅村くん、誕生日おめでとう♪」
「泉さん、石月、新藤、西脇!?」
「誕生日おめでとう秀(浅っち)」
「連に真也に蒼士!!」
「…………なるほど、そういうことだったのか」
何故わざわざ朝早くから出されたのか、ずっと疑問に思ってたことが解決された
初めっから自分を外に出し、自分の知人を家に呼んで誕生日パーティーを開こうというわけか
まったく………
最高の家族だよ
「ありがとう皆、最高の誕生日だよ」
それから出てきたケーキにはご丁寧にロウソクが17本刺さっていた
そして一気に息で吹き消した
消すと同時に、拍手が起きると同時に、プレゼントを渡されるが、さすがに今来ている人数分をもらうのはキツいのでとりあえず適当な所に置く
「ありがとう皆、皆も俺ばっかり気にしないでケーキを食べよ」
その場で人数分に切り分けたケーキと、買って来ていたお菓子を広げる
「「いただきまーす」」
ケーキやお菓子をなどを食べながら談笑をする、久しぶりの大人数での食事のせいか、あっという間に時間が過ぎていった
そして時は夜
「お邪魔しました、それじゃあ浅村くん」
「じゃあな秀」
「おう、またな皆」
玄関で別れた後、家に入り、片付けを手伝おうとするが、もう大分終わっていた
「何か手伝うことある?」
「気にしないでいいわよ、今日はあなたが主役なんだから」
「あれ?どうしてだろう、主役になった気がしないな」
「まあ気にしないで、それより咲恵がさっき探してたわよ?」
「ん?それなら会いに行くわ」
階段を上り姉の部屋に行こうとしたが、偶然姉から部屋から出てきた
「あ、秀よかった、探していたんだから」
「どうしたの?」
「久しぶりに秀の誕生日を祝おうとしてね、はい、誕生日プレゼント」
姉が出したのは手作りのミサンガで、姉は秀の腕にミサンガを結ぶ
「ありがとう姉さん」
「あ、うん///そのミサンガにはいちよ健康運上昇の願いが入ってるの」
「ん?ミサンガってそういう物だったっけ」
「編み方や使う色で色々と変わってくるのよ」
「なるほど、まあなんにしろありがとう」
「ねえ秀、少し外に出ない?」
「いいよ、行こうか」
二人が来たの近くの公園で、この時間帯には二人しかいなかった
夜の冷たい空気が頬につたようで、とても心地よい
そして何より、今日の夜空はとてもきれいだった。
「あいわらず空を見上げるのが好きなのね」
「きれいだと思うし、気持が落ち着くんだ………昔から」
「そうね、初めて秀と出会った時も秀は空を見上げてたもんね」
「もう12年も前の話だろ」
「だね、12年前、私達が出会ったんだね」
「懐かしいな……懐かしすぎてあんまり覚えてないや」
「……私は覚えてるよ」
「へぇ、どんな?」
「あの時の秀のふてくされた顔や、私達に対するとてつもない警戒心の強い眼」
「最悪の第一印象だな……」
「でも空を見上げる秀の顔はとても優しい顔で、希望に満ち溢れてたよ」
「希望ね……」
「ははは、ちょっとくさかったかな」
「いいんじゃないのか、誕生日の日………いや俺が初めて家族になった日だしね」
「そうだね……………秀、あのさ」
「何だよ、いきなり暗い顔して」
顔を下に伏せたままの咲恵はゆっくりと口を開いた
「………これからも私達は家族だよね」
「はぁ?当たり前だろ」
「それが聞けて良かったよ」
「何か姉さん変だよ」
「いいの、いいの、じゃあ帰ろ」
夜風が吹く公園を姉に続いて秀も出て、二人揃って家に帰って行った