二十八話 誕生日
次の日の朝、携帯のアラーム通りの時間に起きた秀は顔を洗おうと部屋を出た時、どこからか鼻歌のような音が聞こえてくる。
どうやら音の発生源は姉の部屋らしく、近づいて耳をすませれば、何やら嬉しそうな鼻歌が聞こえてくる
「ふん♪ふふ〜ん♪」
(三人で出かけるのが楽しみなのかな?)
音をたてずに洗面所に向かうと、そこにはすでに母がいた
「あら早いわね♪」
「まあね、出かける予定がある日に遅刻はできないよ」
洗顔フォームを取り顔にぬり洗い流す
「何気にみんな今日が楽しみなのね」
「本当に久しぶりだもんな三人で遠出は」
「咲恵も嬉しそうだったしね」
「あ〜あそういや鼻歌っぽいの歌ってたな……そんなに嬉しいのかな遠出が」
「んもう、秀ったら分かってないわね」
大阪のオバチャンのテンションでどついてくる母
正直いろんな意味で痛い……
「ああそれと秀と私達は待ち合わせまで別行動」
「待ち合わせ?」
「その女の子には準備がかかるものよ、だから先に行ってて、それに待つのは男の仕事よ」
「どうせ会うなら三人一緒に行ったらいいのに………ってもしかしたら朝飯って………」
「うん、現地調達♪」
「はぁ、了解、んで場所と時間は?」
「11時に改札口前でね」
それを聞いてから洗面所を後にした秀は私服に着替えてから家を後にした
―駅前―
二人より早く駅前に着いた秀は、どこで朝食を済ませるかを考え、とりあえずはコンビニ入る
おにぎりやサンドイッチを見るが、どうもしっくりこない
(うーん、わざわざ駅前まで来ての朝食がこれはないな…………)
結局コンビニを出て、考ええる秀に聞き覚えのある声がかかる
「おーい浅っち」
「お、蒼士久しぶりだな、どうしてこんな所に?」
「浅っちを探してたんだよ、家に行ったらここにいるって聞いてさ」
「電話かメールすればいいのに」
「まさかこんな朝早くに外出してるとは思ってなかったし、直接会って話したいと思ってな」
時間あるかと聞いた蒼士に首を縦に降った秀は、近くにあった喫茶店に入っていった
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
「モーニングセット二つください」
「かしこまりました♪」
営業スマイルをとった定員は、厨房へ入り、注文をっった紙を貼り付ける
「んで、話は何だ?」
「ああそうだったな、えーと………」
口ごもる蒼士は、もぞもぞしながらも見覚えのある紙を出した
「俺もKK部に入らせてもらういたいんだけど」
「何だってー!!!!」
「バカ、声がでけぇよ」
蒼士の言う通り、他の客が全員こちらを見ていた
「す、すまん……」
顔を伏せて蒼士に謝る
「まあいいや、これは受理させてもらうよ」
「え!?理由とかなんやら聞かないのか」
「別に、むしろ陸上部の方が心配だ」
「ああさいですか……」
「まあ何はともあれ蒼士が入ってくれたおかげで後一人だよ」
「そうか、だんだん希望が見えてきたな」
話に一段落がついたところで、モーニングセットがきた
「んで浅っちはこんな朝早くからどうしたんだ?」
「今日が俺の誕生日でな、家族三人で遠出なんだけど、母さんが先に行って待ってろだってさ」
「はぁーんなるほどな、とりあえず、おめでとう、でも浅っちも自分の誕生日なんだから少しぐらいテンション上げようぜ」
「三人遠出するんだから、三人一緒に出たらいいのにいちいち先に出させるし、朝飯こうして外で金払って食うはめになるしでテンション低いんだよ」
「まあいいじゃねぇか、誕生日を祝ってもらうなんて優しい家族じゃねぇか」
「まあそういう見解もあるな」
それから雑談をすること一時間、いい頃合いになって喫茶店を出た
「じゃあな浅っち、誕生日を満喫しろよ」
「ああ………」
蒼士と別れた後時計を確認すると集合時間の15分前になっていた
〈何か秀、テンション低くない、理由があるにしろ低すぎるよ〉
「しゃあねーだろ、今日俺の誕生日じゃねーもん」
〈…………〉
少しの間と沈黙を挟み、シルフィーが叫ぶ
〈えええぇぇぇぇ!!何で何で意味わかんないし、どういうこと?騙したの?〉
「まあそれはおいおい説明するよ、どうやらメンツが揃ったみたいだし」
「おーい秀、待った?」
「大丈夫だよ、俺も今来たようなもんだし」
「あらデートの決まり文句ね♪」
「今日はデートじゃねぇだろ、てか姉さんは?」
「ああ咲恵なら……あそこの柱でナンパされてる」
「……めんどくせー、連れてくるわ」
すたすたと歩いてくるのに気付いたのか、ナンパしている二人組の男は秀を睨み付ける
「何だよガキ」
「姉さん、ささっと行こうぜ、母さんも待ってんだからさ」
二人組の男達を無視して、姉の腕をとって連れていこうとしたが、男達が見逃すはずがなく
「ふざけんなよてめぇ!!」
秀の胸ぐらを掴み上げようとするが、秀はその腕を掴み、ぐっと力を入れると男は悲痛な声を上げ、たまらず膝をついた
「あああぁぁぁぁ!!」
それを見たもう一人の男は秀に殴りかかるが、秀は膝をついた男を持ち上げ、もう一人の男の拳をもう一人の男の顔面に当てる
そして殴られた男の背後から回り込んでもう一人の男の袖と奥襟を掴み背負い投げを決めた
倒れてる男達に秀はニコッと笑いかけ一言だけ男達に言った。
「まだやる?」
今の男達にはそれだけで十分だった