九話 夢集め再び
「あんたはあの時の」
「ええ、夢集めです」
やっぱりか……
昨日会ったにも関わらず久しい感じがした秀は夢集めを質問責めにしていた
「何でまた現れたんだ昨日の今日だろ」
「簡単ですよ、あなたの夢をお手伝いをさせていただくために来たんですよ」
「一時的に記憶が混乱してたんだけど、これはあんなのせいなの?」
「ええ、あまり目立ちたくないのでね、悪いことをしました」
その言葉には悪びれる様子は感じ取れない。
等々いろいろな質問をしていたが、夢集めの方が切り、話の主導権を取り返す。
「あなたはどうしても叶えたい夢があると言いましたね」
「ああ、そういや言ってたなそんなこと」
「では、あなたの夢を叶える為に行きましょうか」
「行きましょうかって、一体何処に?」
秀に質問された夢集めは口元に笑みを浮かべながらこう答えた。
「異世界にですよ」
そう言って指を鳴らすと辺り一面が光に包まれて、秀が次に目を開けたのは、のどかな公園ではなく、周りが色と色が混ざり合った風景でぐにゃぐにゃと曲がっていて、要るだけで平衡感覚を失いそうな場所だった。
「・・・何処だここ?」
「世界と世界の間と言っておきましょうか」
後ろから夢集め声がして振り向くと、そこには夢集めとドアがあった。
「何だそのドアは?」
「どうしても夢を叶えたいならドアを開けてください、皆さん待っていらっしゃいます」
(皆さん?)
自分の他に誰かいるのだろうか……
夢集めに言われた通りドアを開けるとそこには意外な人物達がいた。
「連!蒼士!それに石月に西脇と新藤!」
「おお、秀じゃねぇか」
「最後の一人って浅村君だったんですね!」
まるで久しぶりに会ったかのように話す6人だったが夢集めが咳払いをすると、6人全員が黙り夢集めの話に聞き入る。
「では、今から説明に入らせていただきます、皆さんカードはお持ちですね」
夢集めに所持の確認されそれぞれの所からカードを取り出すと、6枚のカードには同じ数字の20という数字が浮かび上がっていた。
「な、何だこれ?」
「その数字はあなた達が異世界に旅立つまでのタイムリミットですよ」
「じゃあ、私達が異世界に行くまであと20分ってことですか?」
「これはあくまでも説明ですから、例を上げたまでですから、その数字は何の意味もなさないですよ」
「じゃあ、何でこんな数字を出したんですか?」
新藤の言う通り、意味がちんぷんかんぷんだ。
「それは、あなた達がいくつもの異世界に行く必要があるかもしれないんです」
夢集めがそう言うと、全員の頭に?が浮かび上がっていたのを見て、夢集めは捕捉説明をする。
「ですから、一つの異世界に行っても、夢がかなうかはどうか分からないんですよ、例えばあなた達の中の一人が夢を叶えたとしても他の方が叶えられるとは限らないんですよ」
「つまり人によってはいくつもの異世界に行かなければいけないってことか……ってまてよ」
察しのいい蒼士は説明を聞くと何かに気付いた。
「いくつもの異世界に行くってことと異世界に行くまでのタイムリミットがあるってことは、俺達は異世界からもとの世界に戻るってことか?」
「ええそうです、しかし異世界からもとの世界に戻るには条件があります」
「条件?」
「あなた達が行く異世界には必ず大きな闇を抱えています、あなた達にはその闇から世界を救ってください、そうすればもとの世界に戻ることが出来るでしょう」
「・・・はあ!?」
「世界を救うなんて無理だって、俺達はただの学生だぞ」
世界を救うなど、ゲームの世界だけだ。
「大丈夫です、あなた達ならきっと出来ますよ、それに夢を叶えたいなら有無を言わず頑張って下さい」
やればできるみたいなことを言う夢集め。
そう言って、夢集めがある方向に指を指すと、指を指された所にはまたもやドアが存在していた。
「さあ、いまこそ旅立つ時です、ドアに集まってドアの前でカードを掲げて下さい」
夢集めに言われた通りにカードを掲げると、いきなりカード光り、それぞれの腕のサイズにピッタリの腕輪に変形し始めた。
「ええ!!」
「驚くことありませんよもともとそういう形でしたから、それとその腕輪はいろいろと役にたつと思います」
もはやファンタジーの世界だ。
今まで生きてきてこんなこと見たことがない。
「異世界に行く前に、浅村君ちょっといいかな?」
夢集めに呼ばれた秀は仲間と少し離れた所に移動した。
「何ですか?」
「みんなに私これから長い間現れないと伝えておいてください」
「それだけですか?」
「ええ・・・それだけなんですけど・・・」
どこか、歯切れが悪い。
「・・・じゃあ俺は行きますね」
ドアの前で待っているみんなのもとへ向かおうとした時、秀は立ち止まり夢集めの方を向いて一つ質問をした。
「俺達昔で会いませんでしたか?」
「ほう、何故ですか」
「いや、ただなんとなくですけど」
そうただ何となく懐かしい感じがしただけだ。
「そうですか、でも気のせいでしょうね」
「そうですか、じゃあ行ってきますね」
秀が仲間の待つ方に向かって行く姿を見て、夢集めは誰にも聞こえない声でこう呟いた。
「浅村君、後は頼みましたよ」