十七話 ゆめゆめランド
ゆめゆめランドの中に入ったはいいものの、中は人でごった返していて、アトラクションがどこにあるのかさえ分からなかった
「さてとまずはどこに行く?」
「そうですね、人気のジェットコースターに行きませんか?」
「人気ジェットコースターっていっても、どこも変わらないと思うけどな?」
「はいはい、つべこべ言わずいきましょう」
乗り気はしないものの、西脇に引っ張られては仕方がない
込み合う人を掻き分けて、やっとのおもいでついたジェットコースターは待ち時間に二時間と書かれていた
「まあこんなもんか」
最後列と書かれた紙に向かって歩こうとした秀だが、またも西脇に腕を引っ張られていく
「ちょ、西脇、どこに行くんだよ、最後列はこっちだぞ!?」
「私達はこっちです♪」
引っ張っていく西脇の顔も声もとても明るいものだった
引っ張っていくままに着いた場所は待っていたジェットコースターの入り口に繋がっていた
「いったいここはどこなんだ?」
辺りをキョロキョロと見渡せば、周りにいるのは男女のカップルばかりで、家族らしき人影は見当たらない
「ようこそカップルゲートへ、カップルはそちらの方とそちらの方でよろしいですね♪」
「か、カップルだとぉ…」
「はい♪」
満面の笑みを浮かべる西脇にすべてを言い終わる前に口をふさがれ、前へと進んでいった
「どういうことか説明してくれるよなぁ」
「えーと、今ゆめゆめランドはカップルキャンペーンっていうのをやっていて、カップルは早くアトラクションに入ったり、特別な物がもらえたりするんですよ」
「なるほど、確かに二時間待つよりは効率があ!!」
悲鳴を上げた理由、それは西脇が腕を絡めるようにしてきたからであった
絡めたことにより、密着する体は秀の腕に、西脇の柔らかいものがあたっていたからで
その柔らかいものに秀の物は刺激されていた
「お客様どうかされました?」
「あ…いや…その///」
「私の彼、意外にうぶなんです♪」
「に、西脇……お前〜」
まともにしゃべれず顔を真っ赤にしてただただ首を縦にふり、その場をやり過ごしジェットコースターに乗った
「きゃあー!!」
「うおおおおお!!」
さすが人気ジェットコースターというだけあってか、かなりのクオリティーをほこっていた
「なかなかのもんだったねこのジェットコースター」
「そうですね、私怖くて目を開けられなかったです」
「だな、女の子にはちょっとキツいかもな、それで次のアトラクションといいたいところなんだけど、先に昼飯にしないか?」
「それならあそこのテーブル行きましょう椅子もありますし」
向かい合うように座った後西脇はリュックから大きめの箱とマイボトルを取り出した
「これもしかして……」
「はい♪作ってきました、こういうところは値段が高いですから」
開けられた蓋の中にはぎっしりと入ったサンドイッチだった
種類もタマゴサンドやハムサンドなど多く入っていて、正直言って早く食いたい
「食べていいかな?」
「どうぞ召し上がってください」
さっそくサンドイッチを一つ取りぱくりとかぶりつく
そしてそれをまじまじと見つける西脇
「ど、どうですか?」
「………美味しい」
「ほ、ほんとですか?」
「うん、ほんと、ほんと、いやぁー美味い」
秀の感想に顔がぱぁと明るくなる西脇
はたから見れば完全にラブラブなカップルだ、そう思うだけでよかったものの、西脇はわざわざ爆弾を落とした
「何かこうしてると、本当のカップルみたいですね」
「……何か似たようなことを泉さんに言われた気がする」
「えっ!?い、泉さん私達のことカップルって思ってるの!?」
「泉さんに言われた時は俺と石月が付き合ってるかどうかを聞かれたな」
「なるほど、そうなんですか」
ガッカリしたようなため息付く
「でも浅村君と石月さん、確かに仲がとてもいいからはたから見たらそう見えるかもしれませんね」
「まあ基本連が来ないかぎり石月と話してるからか、そう見えるかもしれないけど」
「浅村君自身は石月さんのことをどう思ってるんですか?」
「…………分からない、前にシルフィーに俺が恋してるかどうかみたいなことを話したことがあるけど、俺はどれくらいが異性として好きになっているかが分からないんだ」
「難しいことですねそれは……」
「ま、悩むだけ無駄だ、さて暗い話しはこれで終わりだ」
サンドイッチをすべて食べ終わり、立ち上がろうとした秀に西脇は最後に質問をした
「浅村君って、誰かを本気で好きになったことはありますか?」
秀は西脇の言葉に少し間をおいてから答えた
「好きにか……なったことはある……でも俺はその子を好きになる資格がないんだ…………」
「えっ!?それってどういう………」
「さあ、昼食タイム終了だ、さあ次はどのアトラクションに行きたい?」
先に歩いていく秀の後ろ姿が西脇にはとても遠くに見えた