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十六話 大敗の味

「……う、うーん」



「やっと目が覚めたか」



「真也……ここは?」



「学校の保健室さ」



「保健室!?秋山はどうしたんだ?」



「秋山はあの後、帰って行ったよ、理由は分からねぇがな」






「そっか、俺負けたんだったな」



「気にするな、相手が強すぎたんだ」



「強すぎた……か」



「おいおい、そんなしけた面すんな、せっかく傷を治してもらった子が悲しむぜ」




頭で指した方向にはパイプ椅子に座ったまま寝ている泉


恐らく自分の傷を治すために相当な魔力を使ったのだろう



「また迷惑かけちまったな……」



「そう思うなら、泉を家まで運ぶ仕事、秀がやれよ」



「怪我人になんてことさせてんだよ」



「もう怪我人じゃあないだろ」




屁理屈みたいに聞こえるが、真也の言ってることはもっともだ


ベットから起き上がった秀は傷口をあらためて触る、そして触った後泉に対して深々と礼をした


パイプ椅子から背中に泉を乗せて、三人は学校を後にした










―浅村家―



「ただいまぁ」



「おかえり………ってなんて格好してんのよ秀!?」



「ああちょっと雷にうたれちゃってね」



「ちょっと、雷にうたれて頭までおかしくなっちゃったんじゃないの?」



秀が大丈夫かが心配になった咲恵が秀の頭に手をやろうとしたがその手は払いのけられた



「悪い姉さん、ちょっと疲れたからもう寝るわ」



「…………うん」




姉と別れた後、秀は自分の部屋に入った後、自分のベットにダイブした



「……………」




今日の戦いを回想する、大敗したあの戦いを


どれだけ自分が弱いのかを思い知らされた


どれだけ自分が口だけなのかを思い知らされた


どれだけ自分がちっぽけな存在なのかを思い知らされた


たった一回戦っただけで全てをひっくり返された、あの男に、今一番負けたくない男に自分は負けたんだ


込み上げてくるのは間違いなく悔しさと自分の弱さに対する憎しみとそして涙


この涙が具体的にどの涙なのかは分からないが、この涙はとどめなく流れた



「くそったれ………」










―泉家―




朝食をとる二人の間に会話はとても少ない



「ということは浅村君はもう回復できたということだな」



「まだ戦わせるの……」



「こればっかりは仕方ないんだ」



「まだ浅村君は私達のチームには入っていないよ、だから浅村君が戦いに参戦する意味はないよ」



「確かにあれは沙耶香が一人で行ったからこそ起こったこと、しかし逆に浅村君は自ら敵に挑んだ、俺達の敵にな、つまりこれは利害が一致していることになる、あの誘いはYESととっていいだろう、だから怪我したかもしれんがそれは自己責任だ」




無情とも思われる兄の言葉に沙耶香は食べ掛けのままの朝食を残したまま、家を出た



「………少し言い過ぎたかな」






家を出た泉は目的地に向かってただもくもくと歩いていった










―浅村家―




「……きて…ください」




誰かが自分の体を揺さぶる、まあ誰かと言うまでもなく母だろう



「今日は休みなんだよ母さん」




反対方向に寝返りうち、二撃目に備えて布団を深々とかぶるが、いつもくるはずの二撃目がこず、不思議に思って横目で誰かを見た




横目で見た先には顔を赤らめた西脇がいた



「私がお母さんって、そんな浅村君///」




「……………」






あれ?なんで西脇いるの?ここは確かに俺の家だったはずだ


うん、一度聞いてみよう、うん



「西脇、ここって俺の家で俺の部屋だよな」



「ええ、そうですよ」



「だったら何でいるのかをレポート二枚にまとめて明日また持ってこい、お休みなさい」



「ちょ、ちょっと待ってよ寝ないで〜」



「何だ何か用か?」



「昨日のことなんだけどね」



「……今度は誰から聞いたんだ」



「聞いたわけじゃないんだ、少し前に泉さんから電話があって浅村君の住所を教えてって言ったから、それを深く突っ込んだの」



「俺の個人情報は法で守られてないみたいだな…」




そう言ってまた布団を深々とかぶろうとするがすばやく西脇が布団を取り上げる



「だぁーもう何なんだよ!!今日は休日だろ」



「休日だからこそです、寝てばっかりいないで起きて有意義にすごしましょう」



「俺の辞書では休日は寝て過ごす日と書かれてる」



「もう、屁理屈こねないでください」




肩をつかんでゆっさゆっさと揺さぶる西脇に観念した秀は嫌々ながらも体を起こした



「起きたわいいけど、どっか行く場所でもあるの?」



「えーと……とりあえず駅まで行きませんか?」



「了解…………」



無言のまま西脇見る



「そんなに見つめないでください///」




どうやら西脇は分かってないらしい



「いや、着替えたいだけなんだけど……見たいって言うなら別に気にしないけど」



「…………///」




顔がみるみるゆでダコのようになる西脇






「きゃあー!!」









ビンタされた……










―駅前―




一悶着後にやっと駅に着いた、西脇と頬を抑える秀



「さてとどこに行くとしますかね」



「じゃあここにしませんか?」



財布から取り出したのは最近オープンした遊園地のペアチケット


チケットには大きくゆめゆめランドとセンスのかけらすら感じない文字が書かれていた




(何で持ってんだ?)




西脇の不思議をあらためて認識した秀は、その遊園地がある駅まで西脇と移動した










―ゆめゆめランド―



「…………」



「…………」




二人が無言の理由、それは目の前にそびえつでかい数多のアトラクション


そしてそれに比例する人の多さである



「なんというか……流石だな」



「ですね、まあとりあえず行きましょう」




秀の腕を握り引っ張っていき、ゆめゆめランドへと入場していった











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