八話 カードを持つ者達
自分が持つものと全くおなじ物を持っていた新藤に問いただす。
「おい新藤その透明なカード、いつ何処で手に入れた?」
「ええ?こ、これは実は私もよく分からないの」
俺の勢いに新藤は焦って後ろに後退する。
「そうか新藤もなのか」
ポケットから財布を出し、透明なカードを新藤に見せる。
「浅村君も、持っていたのこのカード」
「うん、いつ何処で手に入れたのかも分からない、気付いた時はもう財布の中に入ってたんだ」
「何なんだろうねこのカード」
新藤のカードを見たことに、だいぶ驚いた秀だったがさらに驚いたのはこの日の部活の時だった。
部室に着くと、連と西脇が珍しく何か考え事をしていた。
「一体二人とも何やってるんだ?」
「こんにちは浅村君、突然ですみませんけど、これに見覚えは有りませんか?」
そう言って西脇が見せたのは今度は2枚の透明のカードであった。
「そのカードは!」
二人が持っていたことに驚き、秀は自分の財布からカードを取り出した。
「一体何処でこのカードを手に入れたの?」
質問をするが返ってくる言葉は決まって
「それが不思議なことに気付いた時にはもう手元にあったんです」
西脇が答える。
2枚の内、一枚は連のもので連も西脇や新藤と同じく、気付いた時にあったと話す。
自分は自分も同じということと、新藤が持っていたことを二人に話した。
「今、透明のカードの枚数は4枚ってことか」
「いえ、6枚です」
「え、何言ってんだ俺、連、西脇さんと新藤で四人だろ」
「実は、私達の他に陸上部の石月さんと新山君が持ってるんですよ」
西脇の言葉にもはや言葉が出なかった。
石月と一緒のクラスの自分が知らなくて、違うクラスの西脇が知ってることに疑問に思う。
「石月さんは昨日の帰りしに会ってその時にカードの話をしたんです、新山君は連さんが自動販売機でジュースを買うときに財布に入ってたのを見たんです」
「そうだったのか」
よくそんな偶然が重なったものだ。
「そうですか?普通こんな不思議なカードがでたら何に使うか気になりませんか?」
「いや、俺が言いたいのはカードもいいけど廃部のことについての話だよ」
廃部まであと6日、6日などすぐに過ぎてしまうのでいろんなと対策を立てるものだが、西脇と連はカードが気になってしょうがないようだ。
「確かにそうですね、でもそれはいい案がなければいけません、かといってまた話合いを開いても、また同じ結論にいたるのが見えてますからね・・・それに、するならこのカードが一体何なのかについて話合いをしたら面白いと思いますけど」
面白いをモットーにはしていないのだが……
西脇の言葉を聞いた秀はもう何を言っても無駄だと感じる。
「そうだな、あと6日しかないじゃなくて、まだ6日あると、今は考えときますか」と開き直ることした。
そしてその日のKK部の活動は終わった。
これから長い間KK部に行けなくなることも知るはずもなく・・・
その日の帰り道、公園の横を通り過ぎるとき、公園で少年が泣いていた。
体が無意識に反応して少年の元に向かおうとした時、すでに少年の横には少女がいて、少年を慰めていた。
あの子のお姉ちゃんだろうか、少し背が高い気がする。
その光景を見た秀は一瞬、自分の過去と照らし合わせている自分がいることに気が付く。
(何やってんだよ俺は……)
首を横振り再び家に帰ろうとした時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「懐かしいですか」
「っ!」
足を止めてゆっくりと後ろを振り向くと、そこには昨日の夜に会ったフードの男が立っていた。
そのフードの男を見た瞬間、頭の中の欠落していた部分の記憶の欠片が次々と繋がり、昨日の夜に夢集めに会ったことも、透明のカードをいつ何処で手に入れたかも全て思い出した。
「あの時の・・・」
「どうもこんにちは浅村さん、あなたの夢を手伝いに来ました」