十話 遅刻
「…………眠い」
昨日の一件があったため、あまり睡眠時間がとれていない結果だった
まだ完全に開けていない目を冷たい水でこじ開け、現在の時刻を確認した
8時20分……
「はぁ…………」
「遅刻だぁーー!!!!!!」
勢いよく家を出たものの間違いなく間に合わないのを確信した秀は最後の手段に出た。
「い、韋駄天!!」
結果………
「間に合わなかった…」
目の前にはすでにしまっている校門
そしてその前で自分と同じくがっかりしている人がもう一人
「ああ〜やっぱりしまちゃてる、遅刻なんかするもんじゃないな」
その女の人の服装は高校の制服ではなかった
(制服をきてないとすると………先生かよ!?)
「あ、そこの君、遅刻しちゃダメだぞ」
「どの口で言うか…」
「私はべ、別に遅刻したわけじゃないよ」
(さっき、もろ遅刻したって言ってたろ)
「そうですよね、まさか先生!!とあろう人が遅刻!!なんかするわけないですよね」
先生と遅刻をわざと強調すると…
「う、ううぅぅぅ」
「わー泣かないで!!頼むから泣かないで!!先生はほんと立派な先生ですから」
「ほ、ホント?じゃあ私の立派な所を三つ言って」
(彼女か!!)
心の中でそう突っ込むものの、実際この先生がなんという名前なのか、何の科目を教えているのかすら分からない
「ううぅぅぅ、やっぱり私なんて立派な」
(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ何か気のきいた言葉をかけなければっていうか、早く学校に入れろよ!!)
自分のボキャブラリーをひっかきまわしてでた言葉は
「めちゃくちゃ美人で可愛いし、包容力がありそうだし、小動物タイプで俺好みですよ」
「う、嬉しい…」
顔を赤らめるところを見ると、おそらく成功と見ていいだろう
「先生、とりあえず学校に入りましょう」
「はっ!!そうだね」
遠回りをして学校に入り、遅刻届を書くために職員室に向かってる途中、くしくもバーバリアンに出会ってしまった
「や、山本先生…」
「保坂先生、また遅刻ですか?困るんですよ〜先生とあろう人が遅刻しちゃあ、職員会議には出てもらわないとね〜、給料もらってんだったら、教師をちゃんとまっとうしてもらわなきゃね」
バーバリアンお得意の嫌味口撃に泣きそうな顔をする保坂Tを見て秀は
「違うんですよ先生、実は俺が学校の門を乗り越えたところを保坂先生に見つかって説教喰らってたんですよ」
「ふん、では保坂先生は職員会議を軽いものと考えていると思っていいんだな」
「じゃあ先生は生徒なんかより会議が大事なんですね、腐った教師魂ですね」
「何だと、浅村ぁ!!もう一ぺん言ってみろ!!」
「何度でも言いますよ、先生の教師魂は腐ってるんですよ」
「貴様………来い!!」
ものすごい力で引っ張られ、生徒指導室まで連れていかれた秀は口元を人差し指を当て保坂Tに見せ、生徒指導室に入っていった
「浅村君………」
結局バーバリアンから解放されたのは10分後のことだった
結局一時間目は受けれず二時間目から受けるハメになった
「一時間目に間に合わないってどうしたんですか?」
「バーバリアンに捕まってた」
「………なるほど」
休み時間はまだ終わってないが二時間目の教師が入ってきた
「…………」
「…………」
教壇で目が合って固まる秀と保坂T
「こ、こんにちわ」
「え、ええこんにちわ」
席から立ち上がり、教壇にいた保坂Tに囁いた
「大丈夫でした?」
「はい、おかげさまで何とかなりました」
「ああ、そりゃよかった」
席に着き、久々に授業をまじめに受けた、保坂Tが教える化学を
そして時間は過ぎ昼休み
「浅村君、昼休みはKK部に行きますか?」
「ごめん、残念ながらバーバリアンに昼休み呼ばれててるんだ」
「ご、ご武運を……」
ため息を吐きながらも生徒指導室に行く途中、職員室前で保坂Tとばったりと遭遇した
「あら、浅村君、どこかに行くの?」
「バーバリアンの説教を受けにね」
「うぅ、ごめんなさい」
必死に謝る保坂Tは秀にひとつ提案をした
「浅村君、ひとつだけあなたのお願いを聞いてあげます」
「へー、何でもですか」
わざと恐怖を与えるような笑みを浮かべる秀
「ま、まさか先生を…………」
両手を肩にあて、身震いする仕草を見せる
(浅村君はまさか先生の…………)
妄想の世界に入る保坂T
「ちょ、ちょっと浅村君こんなとこで」
「なんでも聞いてくれるんだろ、ぐへへへ」
※あくまでも妄想上です
「浅村君、どこ触ってるのよ」
「大丈夫だよ、ここには誰も来やしないさ」
「あ、ダメ………」
※これ以上は悲惨な妄想なため削除させていただきました
―10分後―
「先生………病院いきますか?」
「ううぅぅぅ、ご、ごめんなさい」
「まあ先生の妄想は置いといて、俺のお願いはただひとつ…………KK部の顧問になってください」
「こ、顧問?」
「確か保坂先生はどの部活動の顧問になっていなかったですよね?」
「うん、だけどKK部って廃部したって聞いたけど」
「してねぇよ!!まだ四日あるよ今日合わせて」
「えーと、後何人入ればいいの?」
「んーと、先生が入ってくれるなら部員が二人だけですね」
「四日で二人か……まあ何とかなりそうでならなさそうな人数だね、まあ私も顧問になってあげるよ」
「マジすか?ありがとうございます先生、じゃあ俺はバーバアンと戦ってきます」
それからバーバリアンに朝のことをみっちり怒られた秀は、5、6時間目を屍のように過ごした