九話 Sドにてその2
「じゃあギガントバーガーとアイスコーヒーで」
「私はハンバーガーだけでいいです」
商品を受け取り、座れる席を探していると
「おい秀、こっち空いてるぜ」
「泉さん、こっちこっち」
「みんな!Sドに来てたんだな」
秀は連の横に、泉は石月の横に座った
「部員と顧問集めの方はどうよ」
「残念ながら変化なし」
「まだ時間はありますからめげずに頑張りましょう」
再び気合いを入れ直した三人は話題を実行委員会に移した
「実行委員会の方はどうなりましたか泉さん」
「今日も相変わらず仕事は多かったけど、浅村君がいたから時間内に終わりました」
「相変わらずって、ほんといい加減にしてほしいですね」
「次からは大丈夫だと思うよ」
「どうしてだ秀?」
あまり気がのる話ではないが、興味津々の四人を見て話すことにした
「っということだけど」
「「…………」」
しばしの沈黙……
そしてSドに響き渡る声
「おい!他の人がこっち見てるだろ!!」
「驚かれずにいられるか!!よくそんなことできたな」
「う〜ん、気づいたら勝手に手が出て暴言をぶちまけてたんだよな」
「お、男の中の男ですね浅村君」
「浅村君………」
頬赤らめる泉、それほど嬉しかったのだろう
それから10分ほどしていい時間になったので、Sドで西脇と護衛という名のアプローチをする連と別れ、駅では泉と別れ、石月と二人っきりになっていた
「それにしても浅村君、凄いですね今日のこと」
「自分でもビックリだよ、あそこまでするとはね」
「あの男にはそれくらいしなきゃダメですよ」
「それは俺も思ってるさ、にしても名前も知らない奴にあんなことするなんて……」
〈恋してんじゃないの?〉
久しぶりの登場のシルフィー
「恋………か………」
意味深な顔をして考える秀だったが
「こ、こ、恋なんかじゃないですよ」
「な、何そんなに焦ってるんだ?」
「絶対に恋なんかじゃありません絶対にです!!」
プイッと顔をそらし秀から視線を外した
「おい石月、何か怒ってないか?」
「何で私が怒るんですか?ふん!!」
(怒ってるじゃん…)
〈これは……面白い〉
―自宅―
自宅に帰った秀はシルフィーに言われたことを考えていた
《恋してんじゃないの》
他人に言われて初めて考える恋という文字、自分と他人では認識が違うものだと考えさせられる
「恋って……何だろう」
〈異性を好きになることじゃないの?〉
シルフィーの言うことは分かる、異性を好きになることが恋、だが好きというのはどういうことなのかが分からない
石月や新藤や西脇のことは好きか嫌いかで言えば好きだ、しかしその好きが恋なのかが分からないのだ
「咲恵、秀、ご飯よー!!」
「「はーい」」
椅子に座ってテーブルの上の料理を食べている時にも恋の疑問が脳裏によぎる
「あのさー二人に質問していい?」
「何よ?」
質問すれば間違いなく何かが起こるのは確実(100%姉)だが覚悟をきめた
「恋って何かな?」
「「……………」」
「あら秀ったら、ふふふ、そういう年頃だもんね、で、誰なの?」
「か、母さん?そういう意味じゃ…………」
「秀!!」
「は、はい!?」
「だーれ?」
声は柔らかい感じがするが、目が間違いなく笑っていない
「あ、いや、今のを忘れてくれ」
一気に飯をかきこんで、部屋に戻ろうと椅子から立ち上がろうとした時、腕がとてつもない力で引っ張られ床で顔面を強打した。
「くっ………痛っっっ」
「ねぇ秀〜、部屋でじっくりと話しようか」
「あ、ちょ、姉さん?わ、服引っ張るな〜」
そのまま秀は姉の部屋までテイクアウトされて行き、姉と母の誤解を解くのには明日の朝までかかった