七話 Sドにて
二人が選んだ店は某ファーストフード店のSドナルド
「うーん、Sドセットのアイスコーヒーで」
「私はハンバーガーだけでいいです」
商品を受け取った二人は向かい合わせに座ったり
「泉さん、それだけで足りるの?」
「うん、私は少食だから」
他愛もない会話をしている時に秀はKK部のことについて話していた
「へー、大変なんだねKK部って」
「そうなんだよ、部員は何とかなるかもしれないけど、顧問と副顧問がキツイかな」
「ふーん、部員にこころあたりでもあるの?」
「うん、男子全員」
「……………」
「黙らないいでよ、KK部に石月が入ったのは言ったよね」
「うん、まあそれだけでもびっくりだけどね」
「だからほっといても誰か入ってくると思う」
「まあ、それはあると思うけど……」
どこか不安げな表情を浮かべる泉、石月で引き込む作戦が嫌なのだろう
しかしそんなことはちゃんと分かっていた
「冗談だよ、石月をそんな風には絶対に使わない、大事な部員だからな」
それを聞いた泉は少し考えながら秀に爆弾を落とした
「浅村君と石月さんって付き合ってるの?」
アイスコーヒーが気管に入る
「ケホっ、ケホっ、そ、そんなわけないだろ、石月とはただ仲がいいだけさ」
「へー、そうなんだ」
「そうなんです、てか食ったら出ようか」
一気にアイスコーヒーを飲みほして二人は店を出た
「泉さんは俺とは逆方向なんだね」
「そうみたいですね、ではここで」
改札口で別れてお互いホームで軽く会釈したあと電車に乗って帰宅した
―自宅―
「ただいま」
「お帰りなさい、ご飯は食べて来たのよね」
「ああ、だから部屋に戻ってるよ」
自分の部屋に戻る途中に石月からの走り込みメールがきたため
部屋に入ってジャージに着替えて母親に一声かけてから家を出て石月の家に行った。
―石月家―
石月の家手前5メートルほどの所で石月以外に見慣れた姿がもう一人あった
「だから、私はもう陸上部に戻るつもりはないよ」
「頼むから考えなおしてくれ、陸上部にはお前が必要なんだよ」
「ごめん……私は夜走ることで満足してるし、記録とかにも興味ないんだ」
そう言って蒼士の横を通って秀の方に向かう
「秀も分かるだろ石月が陸上部にどれだけ重要か分かるだろ」
「そりゃ分かるけど、石月が決めたことに俺が口出す権利がないし、誰にもない」
「ぐっ……それはそうだけど」
「分かったら、今日のところは帰るんだな」
深いため息を吐くところを見たところ、石月を陸上部に連れ戻そうとしたのだろう
「また出直して来る…」
とぼとぼと帰る蒼士を見つつも、軽く体を動かしいつも通りのコースを走り出すが、いつもの足取りよりはまちがいなく遅かった